待ちあわせ
蒼汰朗
移り香
今この瞬間に鯨が吠える
地球の裏側を回り、
光の無い
人とすれ違う時の風ではなく
トラックの遺すガソリン臭さをもう一度
今この瞬間に、
落陽に
帚星と
靡き、
ビー玉の発する
手足を
今この瞬間に幽霊が笑う
誰もが手を握り、幼さの鎧を纏い、
羞恥湧く
人と分かち合う時の風ではなく
自ら孤絶を求め壊れ傷つけるような
下位互換の声量で喚き散らす
祖母が微睡み
あの追懐を
今この瞬間に、
渇望に壊死する眼底
徒桜が舞い、
幾千年に紛れ憂い、喪われる片時雨
月灯りが反照する畦道を、静謐と
綺羅星が
虚心に
今この瞬間に廃寺が朽ちる
遥かに
二藍に交じり合う懐郷の
果てしなく
あの最後の言の葉をもう一度
今この瞬間に、
風花を
晩夏に
何故だろう
此処はもう懐かしくない
図書室の
君が通り過ぎる
歩幅が小さい
振り返った
微笑んで──そっと今消えた
待ちあわせ 蒼汰朗 @str1014
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます