第2話 通報一歩手前

 俺は今ゆめちゃんをおんぶし、この子の家まで案内してもらい歩いているところだ。幸い人気は無く通報されることは無さそうで安心している。


「ゆめちゃん、次はどっちかな」

「しょこ、みゅぎ」


「右か、わかった。しっかり捕まっていろよ」


 ゆめちゃんはうい、と言うと首に回していた手の力が強くなった。俺は一刻も早くゆめちゃんを家に届けるべく早歩きで道を進むと、


「にいに、ここ」

「ここか…大きな家だな。表札は…ん?秋篠…どこかで見た名前だな」


 俺はゆめちゃんの案内により門と大きな庭のある家へとたどり着いた。名前を見るとどこかで見た事のあったが思い出せそうにないが今は家の人に事情を話してゆめちゃんをお風呂に入れてあげなくては…


 ゆめちゃんの体調優先でインターホンを鳴らした。しばらくすると、家の扉が開きこちらに歩いてくる女性がいる。どこかで見たことがある気がするが…


 見た目はまぁ世間一般で言うと綺麗で顔も整っている髪は長い金髪にゆめちゃんと同じ蒼の瞳。体つきも悪くなく胸も大きい普通の人が見れば一目ぼれしてしまうような容姿をしているが正直俺は興味がない。


 大きな庭をちんたら歩いてくる女性に早く歩けよ!そう思い苛立ちを感じているとなにやら女性なスマホを片手に近寄ってきた。ん、何をしようと言うのだ?


「あ、あの…誘拐とはそういう感じの…?何が目的ですか、お金ですか?」

「おねぇたん!たやいまーー」


「え?お、おかえり?夢大丈夫?何もされてない?通報した方がいい?」

「あー、通報は勘弁してくれ。少し事情があってな」


 俺は夢ちゃんが川で溺れていたことを目の前の女性に説明すると、女性は深く頭を下げ感謝を述べてきた。危うく通報一歩手前だったようだ。


「えっと私の妹を助けていただきありがとうございます!」

「いえいえ、そんなことより早く夢ちゃんをお風呂に入れて上げて下さい、このままでは風邪を引いてしまいますよ」


「そ、そうですね。あ、えっとあなたも一緒にお風呂使ってもらえれば。妹の命の恩人に風邪を引かれるのも悪いですし…」


 そう言われてはそうだな。夢ちゃんを助けて俺が体調を崩してしまっては夢ちゃんに心配をかけてしまうかもしれない。ここは甘んじて受け入れることにしよう、いや普通に今の上半身裸の状況を他の誰かに見られてもしまえば今度はガチで通報される。


 女性の申し出に応えるべく門を潜り家の中へ、夢ちゃんを降ろし先にお風呂に入ってもらおうとしたのだが、


「にいにもいっちょに…」

「お、俺は…流石に」


 夢ちゃんは降りたはいいものの、玄関で俺のズボンを掴んで離そうとしてくれない、そのままでは夢ちゃんも俺も風邪を引いてしまう。そんな心配をしていると女性はこんなことを言い出した。


「すみませんが、夢もだいぶ懐いていますし一緒に入ってもらう事ってできますか?もちろん変なことはしないでくださいね?したら、即通報しますから」

「あ、あぁ。わかってる」


 鋭い眼光で俺の事を睨みながらも風呂場へと案内してくれた。そして俺と夢ちゃんは脱衣所で服を脱ぎ浴室に入り、椅子に座らせ熱いお湯を夢ちゃんの肩からゆっくりと掛けてあげる。夢ちゃんの体が温まるまで俺は辛抱していると、


「おぉ、あたたまた。ちゅぎぃ、にいにのばん」

「ありがとう、少し待っててくれよ」


 夢ちゃんは十分温まったのか立ち上がり、俺にお湯を譲ってくれるようだ。俺は譲ってくれた椅子に座り肩からお湯をかけ、十分に温まるまで全身に浴びる。そんな俺を夢ちゃんはじっと見つめ、何を思ったのか足の間に座ってきた。


「夢ちゃん?どうしたのかな」

「ゆめよかやだ、あらぅて」


 夢の身体洗ってと言っているのだろうか…まぁ問題ないだろう。俺は夢ちゃんの身体をタオルを使って優しく洗ってあげると嬉しそうに目を細めている。可愛いなぁ。いつかこの子も大人になってしまうのだろうな。きちんと見守ってあげないと…


 そんなことを考えながら髪の毛も洗ってあげた。夢ちゃんを洗い流した後は、俺の番。髪を洗い、身体を洗っていると夢ちゃんが俺の使っているタオルにその小さな手を置いてきた。


「にいに、ゆめあらぅ」

「ん?洗ってくれるのか?ありがとうじゃあ背中を洗ってもらおうかな」


「うい!」


 可愛い返事をした彼女にあわあわなタオルを渡すと、背中に回り弱い力で洗ってくれる。うん、幸せだ…


「おわやよ」


 そんな幸せな時間を堪能していると背中が洗い終わったようだ。夢ちゃんからタオルを貰い正面を洗い再び熱いお湯を浴び、浴室を後にした。


 浴室を出るとバスタオルと着替えが用意されていて俺と夢ちゃんの服は洗濯機を洗われているようだ。夢ちゃんの身体を拭き、俺の身体を拭いて用意されていた服に着替え、傍に置いてあったドライヤーで夢ちゃんの髪を乾かしていく。


 髪がキラキラと光を反射して綺麗な金髪が露になった、ふわふわと髪からはいい匂いがし、ニコッと笑う彼女の顔を見ると夢ちゃんの可愛さをさらに際立たせている。マジ天使だ…


 夢ちゃんの可愛さに惹かれてつつ自分の髪を乾かしていると、脱衣所の扉が突如開きだし先ほどの女性が顔をひょこっと出してきた。


「着替えれた?って…え、もしかして君…河野君?」

「ん?俺の事の知っているのか?」


「うん、髪の毛濡れてて気づかなかったけど。同じクラスの…」

「同じクラスだったのか、ごめん君の名前を知らないんだ、教えてくれるか?」


秋篠あきしの 舞香まいかだけど、クラスメイトの名前も覚えてないって酷くない?」

「申し訳ない、興味ないことはすぐに忘れてしまうんだ。すまないさん」


「舞香です」


 すまないと再び謝り、俺は軽く頭を下げる。彼女の事は心底どうでもいいが夢ちゃんが髪の乾かし終えてからごちうさのときめきポポロン♪の両手を上に上げて回り踊っていた。それを見てとても微笑ましい気持ちなる。


「あぁまいやさん、夢ちゃんも元気みたいだし俺はそろそろお暇させてもらうかな」

「舞香です。そうですね今日のお礼はまた日を改めてさせて下さい。あと、着替えですが明日学校で渡しますね」


「ありがとう、まいやさん」

「舞香です」


 俺は再び頭を下げ、夢ちゃんの家を後にするのだった。

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ロリコン紳士の俺。超絶可愛い美幼女天使を助けたら、学園1の美少女とか言うやつに告白されたんだが? 白メイ @usanomi

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