作中に登場する人物のほとんどが、自分がロボットではないことを証明することにやっきになっている。そして、彼らの目当ては賞金である。賞金欲しさに、学園に紛れ込んだAIを探しているのだ。
そんなマジョリティーから距離を置いた「私」にカメラを持たせたことが、この作品の最大の美点だと思った。
マジョリティーに属すれば、楽に息ができるし、たいてい人間はそちら側だ。しかし、この作家は、そんな閉鎖的な集合体の外にいる。それは辛い生き方にはなるが、きっとそこからしか文学は生まれない。
結末に、衝撃的な出来事が起きるが、真相が判明したあとの登場人物たちの行動を見て、なんとなく嫌な気持ちになった。彼らは、自分がロボットではないことを証明することと、自分が人間であることを証明することを、同じだと思っているように感じた。しかし、この二つは、違うと思う。
登場人物の中の「私」だけが、人間であることの証明について考えようとしているのではと感じられ、それがもっとも人間らしく感じ、それがよかったと思う。