「手紙が大嫌いだった」
ことり
さよならよりも
ランドセルのくろ色が昔から大嫌いだった。特にあなたのランドセルが嫌いで仕方なかった。私が諦めざるを得なかったものがそこにあったから。
だからあなたが嫌い。真っ白にくろを輝かせて登校してくるあなたなんて殺してしまえば良かった。
高校のスクールバッグの黒色はもっと大嫌いだった。キーホルダーの付いたあの子のなんて特に。私が好きだった黒はこんな色じゃなかったから。
だから通学路が嫌い。諦めと虚しさと反骨心と命令形だけが詰まったあんなバッグなんて歩道橋の真ん中に捨ててしまえばよかった。
社会の教科書の黒い太文字が嫌いだった。あなたの付箋が沢山ついたあれなんて大嫌い。ボロボロで汚いくせに綺麗だなんて卑怯だ。私の笑い声が哀れで情けなく震えちゃうから、負けてしまうから、どうかあの本は燃やしておいて。
バスの待ち時間に年表を読み込んでいたあなたは、厳しかった第1志望に通った。頑張れなかった私が諦めて第2志望に受かった。なんてこととっくに分かってるのに。
どうやら私本当は全部わかってたみたい。
私はくろ色が好きで、
でもそれを背負うための勇気はなくて。
黒色が大嫌いで、
でもそれを変えるだけの努力をしてなくて。
あなたが大嫌いでどうにか私を見てもらいたくて、やっぱりあなたが大好きで振り向いてなんか欲しくなかった、それだけのことだったみたい。
でも何を言おうと私がどうしようとあなたは、私みたいなエキストラがこんなこと考えてるなんて一生知らずに生きていくんでしょうね。
悔しいから精々この手紙読んで
好きなことして、たまには失敗して 、それて
あんたはちゃんと幸せになりなよ。
「手紙が大嫌いだった」 ことり @kotori-minato
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