第5話 反省会!
「うーん……」
頭を抱え、腕を組んで考え込むパーシャルとフィアネス。
「どうしたものか……」
「なかなか妙案が思い浮かびませんね……」
彼らは、真剣な表情でエレナの地位失墜作戦について、頭を悩ませていた。
今は、昨日の食事会の反省会をしているところである。
「エレナ王女とお話されていかがでしたか?」
「いかがでしたか、って聞かれても……。特になにも……」
困ったようにパーシャルは答えた。
「さようですか。ではエレナ王女の反応はどうしたか? パーシャル様に対して、どんな対応でしたか?」
「俺に対して……?」
「えぇ。エレナ王女が貴方のことを、どう思っていらっしゃるのか知りたいので」
そのときパーシャルの脳裏には、食事会の光景が浮かんできた。
(『べっ、別に、会えて嬉しくなんか無いんだからねっ』。『あなたに助けられても嬉しくないんだからっ!』)
エレナに言われたセリフを思い返し、苦い表情になったパーシャル。少ししゅんとしてしまった。
ツンデレを真に受けて、ヘコんでいる。
フィアネスはそれに気づかず、もう一度聞いた。
「パーシャル様の印象で構いません。優しかったとか、そっけなかったとか、何かありませんでしたか?」
その言葉にパーシャルは猛然と話しだした。
「は? エレナ王女が俺にそっけないだなんて、そんなわけ無いだろっ!!! 別にそうだとしても気にしねぇし。 どうでもいいし! だいたいエレナ王女が俺に冷たい対応するはず無いだろっ! 聞くまでもないじゃん! そんな冷たくなんて……ありえない…………そんな…………冷たくなんて…………ありえ…………な……」
だんだん尻すぼみになっていくパーシャルの言葉。
随分とエレナの発言に、ショックを受けているらしい。パーシャルと同じただのツンデレなのに。
しかし彼の胸の内にフィアネスは、まったく気が付かない。
「そうですよね。エレナ王女が人に冷たくするなんてありえませんよね」
「うっ…………」
「誰に対しても優しいと噂になっておりますから。もしも王女に冷たくされる人がいたら、かなり嫌われているんでしょうね」
「………………」
心に大ダメージを負ったパーシャル。全身から生気が失われている。
「まぁ、あくまで仮定の話です。エレナ王女が優しくしないなんて、ありえませんから」
「っ――――――」
おいフィアネス、無自覚に死体蹴りすんな。パーシャル死んだぞ。
「まぁ、それは置いといて、王女のスキャンダルにつながる手がかりは見つかりましたか?」
「――――」
「パーシャル様? あの……パーシャル様、聞いてます? パーシャル様っ?」
「……グ……グリンピース…………キライ。
…………カシューナッツ………フツウ。
…………ピーナッツ…………スキ」
パーシャルが壊れた。うわ言のように、意味不明な言葉をつぶやいている。
なんか最後のは、SPY×FAMI◯Yで聞いたことあるセリフだし。
「パーシャル様ーーーー」
「…………あぁ、すまん。えっと、何だっけ?」
フィアネスの叫び声で、ようやく現実に戻ってきた。
「ですから、エレナ王女の裏の顔につながるもの何かありませんかね?」
「うーん、スキャンダルなんてありそうに無かったなぁ……」
「そうですか」
「あぁ、いつも民のことを考えている様子だったぞ」
「なるほど評判通りというわけですか。いやいや、ですが諦めてはなりません。聖人と噂される人間ほど、裏では腹黒いことをしているものですよ」
「諦めるな」と優しげに諭すフィアネス。まったくもってトンチンカンだ。
放って置いたほうがよっぽどパーシャルのためだぞ。
「よし、そうだな。気を取り直して、エレナ王女の地位を失墜させる作戦を立てるか」
ほら、フィアネスが余計なこと吹き込むから。パーシャルの考えがもっとねじ曲がってしまう。
「ところでお食事会ではエレナ王女とどのようなことを話したのですか?」
「うーんと、あの日は……。殺し屋に襲われてたし、あまり話せなかったな」
「あぁ、殺し屋に」
『なんだ、ただの殺し屋か』といった薄い反応のフィアネス。
慣れとは怖いものである。
「だとしても、まったく話せなかった訳じゃないでしょう?」
「まぁそうだけど…………でも、なんか……話せなかった」
「え? なぜです?」
「うーん、なんか胸が……ドキドキして、うまく言葉が出なくて……」
恥じらい、拗ねたような声がパーシャルの口から漏れた。
「胸がドキドキ……?」
ポカーンとした顔を浮かべていたフィアネス。
『なんでだろう?』と心の底から不思議に思っているようだ。
せっかく恋心に気付くチャンスだったのに!
もういいよ。これで分からないとかどんだけ鈍いんだよ。
そもそもパーシャル、お前が自分の恋心に気づかないのが悪いんだからね?
ほんとに……いつになったらこの茶番は終わるのやら……。
(社会的に)オトシてみせる 春宮まぐろ @dreamday
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