episode Ⅻ 仲間
「テシリス! メルタ! キスム! いつもの作戦で行くよ!」
「任せて下さい! パワーブースト! プロテクト!」
「へっへっへ、勝ちましょうアンソニーさん! スピードブースト!」
「ライフリジェネーション! フェニックスの連携は絶対に崩せないよ!」
3人が一斉に支援魔術(サポートスペル)を使いやがった。
確か、味方に対して支援出来るのってプリーストだけだったよな。
っつう事は……。
「プリーストが3人いるって事か!?」
{アンソニー←攻撃力100%アップ 60秒}
{アンソニー←防御力100%アップ 60秒}
{アンソニー←行動力100%アップ 60秒}
{アンソニー←HP持続回復 付与 75秒}
{ゲイル←攻撃力100%アップ 60秒}
{ゲイル←防御力100%アップ 60秒}
{ゲイル←行動力100%アップ 60秒}
{ゲイル←HP持続回復 付与 75秒}
どっかで見た奴だと思ってたら、ジャッジメントのログを見てやっともう1人が誰か分かったぜ。
あの時にアンソニーにヘコヘコついて回ってた金魚のフンか。
プリースト3のセイバーが2……P3S2って感じのフォーメーションだな。
なるほどな。攻めてくる奴が少なくなる代わりにプリーストのサポートを手厚く受けられるって訳か。
なら先に倒さなきゃなんねぇのは、アンソニーじゃなくプリースト達からだな。
プリースト自体は攻撃の手段は一切持たねぇ。だからセイバーが守ってやらねぇとダメなんだ。
「ゲイル、君は裏切り者のリッシュを頼むよ。いくら低脳な君でもリッシュを倒す事ぐらい造作もないだろうからね。この試合が終わったらスタメンを考えてもいいよ」
「ほ、ほんとっすか!? へへへ! リッシュなんてどうにでもなりますよ! あんなビビり!」
まずはプリーストからだ。
俺は先手を取ってクイックフェザーで素早く空に飛び上がってから、縮地でプリーストの懐に入り込んだ。
「甘いよゼン!!」
バキィィ!!
{ゼン←1HIT 127ダメージ}
側面からいきなり攻撃して来やがった。ちっ……読まれてたか。
エンゲージでやった時より遥かにパワーアップしてやがる……あの野郎の強化(バフ)を何とかしねぇと……。
「ほら、君の相手は僕だろう?」
手に魔力を集めてやがるなと思ったら、細い剣を出して素早く俺の心臓目掛けて突いて来た。こいつフォースエッジが使えんのか……。
辛うじて後ろに飛び退いてかわしたが、アンソニーは更に踏み込んで来やがったんだ。
グシュッ!
「あぐぅ!」
心臓に刺さっちまった。俺の体からアーディルが2つ飛び出て、それを吸収するアンソニー。
{ゼン←1HIT 233ダメージ}
「まずは2つ。ふっふっふ。余りにも君の回避が遅かったからついつい刺してしまったよ」
ウィザードじゃなかったら、今ので死んでたな。
そう言えばこのリージョン内じゃどんな攻撃を食らっても死ぬ事はねぇってゼノスが言ってたな。血も出ねぇしな。
くそ……あのバフでステータスが底上げされちまってるじゃねぇか。パワー、スピード、防御面も遥かにパワーアップしてやがる。
俺1人じゃ、どう考えても突破出来ねぇ……。
そんな時、俺はディックの言葉を思い出したんだ。ウィザード・バトルは仲間との連携が大事なんだと。
俺1人じゃどうにも出来ねぇが、リッシュやユシアと連携すればやれるってのか……?
「ほらどうしたのゼン! フェニックスの連携を崩せるかな? 出来ないよね! だって君、1人だし。くっくっく、友達も1人もいない落ちこぼれだもんね!」
片手を俺に向けてフウザを放って来た。
今更だがこいつは風属性を得意とするタイプなんだな。
ズバババババババババババババババババッ!!
「なに!? ……うあがぁぁあああ!?」
{ゼン←176HIT 367ダメージ}
何だ今の速さは……。もしかして攻撃速度のバフはスペルにも影響すんのか。
「君の思ってる通り、プリーストを先に倒せば勝機はあるかも知らないけど、近寄る事が出来るかな。君1人で……ふっふっふ」
ズバババババババババババババババババッ!!
ちくしょう……奴の言う通りこれじゃ近寄る事も出来ねぇ。
フウザの連射速度、威力でシールドを張ってもすぐに割れちまうし……。
「ポアラマ!」
ヒュン!
{ゼン←HP243回復}
レリスの奴、リッシュを見ながらあんな遠くから俺に治癒術を使って来たのか。
あっちはゲイルが2人を追いかけてやがんな……。
見る限り、リッシュはビビってまともに戦えそうもねぇ。
ウィザードは知恵で制する。
そうだ知恵だ。考えろ。
俺1人じゃ乗り越えられねぇんだ……。
あいつらと連携を取って、奴らに勝つ。
ピカァァァァァァァァァァァン!!
なに?
何だ今の感覚……一瞬だけイメージが……何かが閃きそうだ。
それは自然に俺の頭に浮かんで来た。
スキルツリーを開くと、新しいスキルの実が生っている。
なんでスキルツリーを開いたのか、わかんねぇけど自然な流れだった。
{ゼン←霊神ヴァルガント召喚 習得(-3200Ct)}
霊神……入隊試験の時にゼノスもフェンリルっつう奴を召喚してたな。じゃあ俺も召喚出来るようになったって事か。
「そう……か! 分かったぞ、打破出来る道が!」
霊神は属性を司る神だ。ゼノスが召喚したフェンリルは土属性だった。俺が今から呼び出すヴァルガントは…………雷属性だ。
雷属性の飛竜、それが霊神ヴァルガント。
「き、君……な、なんだそのスキルツリーは……」
「特別らしいぜ? 俺のスキルツリーはよ。そんで今やっとてめぇをぶっ潰せる策を思いついたんだよ」
「手も足も出ない君が、僕をぶっ潰せるだって? あーはっはっは! 笑っちゃうよ!」
「さあ、いつまで笑ってられるかな?」
俺はここで初めてリンクを展開してユシアと繋ぐ。
これはウィザードの基本中の基本、だからリッシュとユシアは既にリンクしてる状態になってたんだ。
《ゼンさん?》
《ユシア、リッシュ、1回しか言わねぇからよく聞けよ》
《う、うん……なに……》
《俺は今から霊神を召喚して、アンソニーに突っ込ませる。多分、プリーストどもはアンソニーの面倒を見るだろうから、俺がそっち行ってゲイルのクソ野郎の相手してやる。ユシア、マナを生んでくれ。召喚には俺のマナを全部消費しちまうと思うんだ》
《分かりました! なるべく多くマナ生成致します!》
《れ、れれ霊神って、ままま魔導士クラスのせ、セセセイバーでも扱いがむむむ難しいってい、言われてるき、きき危険なスペルだって、きき聞いた事あるよ……だ、だ、だだ大丈夫なの!?》
《心配すんな。俺は無敵だ》
《な……!?》
《リッシュ、てめぇ確か風属性が得意だって言ってたよな? 俺が召喚したらゲイルの野郎も一瞬こっちに気を取られるだろうから、その隙にスペル使って素早くプリーストの所まで行って、アンソニーにかけまくってやがるスペルを阻止して欲しいんだ》
《え、えぇ〜!? そ、そんな事で、でででき出来るかな……》
《出来なきゃこの試合は負ける。俺は負けたくねぇ。俺達はチームだ。自分でも口にしてるのが不思議で気持ち悪ぃが、連携は大事だっつう事は分かってる》
《そうですね! ウィザード・バトルは仲間とどれだけ連携を取って戦えるかで勝敗が決まると言っても過言ではないでしょう! わたくしはゼンさんの作戦を信じます!》
《わ、わわ分かったよ……。ぼ、僕もし、し信じる……!》
俺の中で、何かが変わろうとしているのを感じる。
仲間なんて必要ねぇなんて思ってた俺が、自ら仲間に頼ろうとしてるなんてよ。
「よし!」
俺は、いや…………。
荒くれウィザード!〜妹想いの喧嘩最強の不良がウィザードと言う魔法バトルで仲間と共に世界一になる。なんせ俺のスキルツリーは♾️だからよ!〜 またたび299 @sion24st
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