呪いの人形

「初めまして、マスター」


 そして、髪の色を金髪に変えながら、起き上がってきた女の子は、さっきまでの怯えた様子とは打って変わって、そう言ってきた。


「??? え、いや……私の、アイテム……人形は?」

「はい、私です」

「???」


 やばい。私の頭が残念だからなのか、全然分からない。

 どういうこと? この子は人間……じゃなかったとしても、人形では無いよね?

 

「どういうこと?」

「えっと、私は、呪いの人形だったんです。効果は投げられた際、一番近い生物から肉体を奪うことです」


 ……いや、え? めちゃくちゃすました顔でめちゃくちゃ怖いこと言ってない? あの人形を手に入れた時、もし私が適当に放り投げてたら、フィーちゃんとかに効果が発動してたかもしれないってこと? ……ちゃんと投げずにベッドの下に仕舞っててよかったぁ。


「……一応聞いとくんだけど、それ、私にも発動してた可能性あるの?」

「いえ、人形の状態だからって、自我がなかった訳では無いんですよ。だから、大丈夫ですよ」


 あ、そうなんだ。良かった。

 と言うか、あの人形の状態から、自我があったから、私のことマスターなんて言ってたんだ。

 だって、もしあの時自我がなかったんだとしたら、あの人形投げたのフィーちゃんだもん。フィーちゃんがマスターになっちゃってたよ。


「取り敢えず、分かったよ。ただ、マスターって言うのはやめて」


 この人形が信用出来るかは置いといて、少なくとも、さっきの奴隷よりはよっぽど信用出来ると思うから、信じてみようかな。……だって、この子、私が出したアイテムだもんね。私が出したアイテムさえ信用出来なかったら、私が出したフィーちゃん達も信用出来なくなっちゃうし、信用するしかないよね。


「では、なんとお呼びすれば?」

「殊晴でいいよ」

「殊晴様……」


 いや、そんな噛み締めるように言うような名前でもない……ことも無いかな。親が……親が、つけてくれた、名前だし。


「すぅーふぅ」


 また嫌な記憶が蘇りそうになった私は、深呼吸をして、一旦、忘れて、さっきの続きを考えた。

 この子にとっては、そんな噛み締めるように言うような名前じゃないでしょ。

 まぁ、いいや。そんなことより、その子あの子この子じゃ呼びにくいから、この子も名前だよ、名前。


「そして私の名――」

「それで、あなたの名前は? 無いなら私がつけるけど」

「ありません! なので殊晴様がつけてください!」

「あれ、今なにか言おうと――」

「してません」


 よく分かんないけど、何も言おうとしてないならいいや。

 まぁ、それはいいとして、やっぱり、名前無かったな。……そりゃアイテムだったもんね。……どうしようなぁ、名前。私、いい名前付けられる気がしないんだけど。フィーちゃんの時は、正直奇跡だったよ。


 取り敢えず、またフィーちゃんの時みたいに考えるか。

 ……えっと、呪いの人形、奴隷、女の子、ゴブリン、オーク……全部可愛くないなぁ。……この子、見た目あの奴隷の女の子の体だけど、可愛いし、可愛い名前つけてあげたいんだけど、どうしよう。

 人形、マリオネット? マリネ、とか? いや、それならマリーの方がいい、かな。


「じゃあ、今日からあなたはマリーね」

「マリー……はい! 大事にさせていただきます!」

「気に入ってくれたなら良かった。これからよろしくね、マリー」

「はい!」

「わふ!」

「うん。フィーちゃんも仲良くしようね」


 なんか、引きこもる仲間が増えたけど、なるようになるでしょ。

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クラス転移〜引きこもりの私だけダンジョンマスターとして転移した。もしかしてもう学校に行かない罪悪感を感じなくていい?〜 シャルねる @neru3656

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