奴隷の女の子

「あ、あっ、初、めまして」


 やばい。どうしよう。引きこもりで、人と話して無さすぎて、第一声がこんなんになっちゃった。

 しかも、こんな状況で、初めましてって……そもそも、仲良くなる気なんて無いんだから、初めましてなんて、おかしいでしょ。


「と、取り敢えず、その子、下ろして」


 よし、オーク相手なら、普通に喋れる。

 私はそう安心しながら、女の子を担いでるオークに向かって、そう言った。

 すると、私の言う通り、オークが女の子を下ろしてくれた。


「あ、あの……」


 すると、女の子はさっきまでの絶望したような感じではなく、困惑したような感じで、おずおずと何かを言おうとしてきた。


「な、何、者」


 私はその女の子が何かを言う前に、それとなく、この子を大事に思ってる人がいるかを聞こうとしたんだけど、そんなことを言ってしまった。

 何者ってなんだよ! 多分この女の子のセリフだよそれは。

 

 大丈夫。落ち着こう。今のこの子と私、立場はどう考えても私の方が上なんだ。この子はオークがそばにいる限り、私に抵抗なんてできない。


「ど、奴隷……です」


 ……奴隷? 奴隷なの? じゃあ、主人はどこ? 


「主人は?」


 そう思って、私はそう聞いた。

 あ、私の方が立場が上って分かった瞬間、普通に喋れるようになったな。……なんか、これじゃあ私の性格が凄く悪いみたいな感じがするけど、引きこもりの私なんて、そんなもんだよ。


「ま、魔物に襲われて、し、死にました。だ、だから、私は、必死に逃げて、この、洞窟を見つけたんです。それで、少しだけ、休もうと思って、ここに来たんですけど、ゴブリンが居て……」


 主人が死んでる……じゃあ、この子の事は誰も探しに来たりしないってことかな。

 後、ここは外から見たら、やっぱりダンジョンとは思われないんだ。


「そうなんだ。それじゃあ、この辺りに街はあるの?」


 そう思いながら、私はそう聞いた。

 よし、普通に喋れてる! 


「そ、それを言う前に、私を、あなたの奴隷にしてください! じ、自分の立場は、分かってるつもりです! で、でも、私は死にたくないです。役に、立ちます!」


 ……この子、要件が終わったら、私がオークに殺してもらおうとしてること、察したのかな。

 人道的にどうかとは思うけど、私的には、この子が生きてることで得られるメリットとか、別に無いし。……あ、一応、侵入者扱いだから、ダンジョンの中に入れてるだけで、DPは溜まっていくのか。……んー、でも、私、ダンジョンコアを壊されたら終わるし、人がいることによって、ストレス溜まりそうだし、メリットより、デメリットの方が大きいかな。


「わふ! わふわふ!」


 私がどうしようかと考えていると、フィーちゃんがさっきの人形を口にくわえて、走ってやってきた。

 

「フィーちゃん!? な、何してるの?!」

「わふ!」


 私が驚いたようにそう言うと、フィーちゃんは口にくわえていた人形を口から離して、私の足元にスリスリと顔を擦りつけてきた。

 ……可愛い。


「あっ、えっ、い、いやっ」


 私がそうやって、フィーちゃんの事を見ていると、フィーちゃんが持ってきた人形がさっきの女の子の方に飛んでいってたみたいで、そこからは、まるで人形が自我を持っているように女の子の周りを飛んでいた。

 何、あれ。あの人形、アイテムじゃなかったの? それとも、何か、アイテムとしての効果が発動してる? 


 私が状況を理解出来ず、色々と考えていると、急に女の子が倒れた。

 すると、その女の子の中に人形が入っていき、ゆっくりと女の子が起き上がってきた。

 ……いや、普通にホラーなんだけど。あの人形もフランス人形っぽくて、正直、ちょっと怖かったし。


「初めまして、マスター」


 そして、髪の色を金髪に変えながら、何故か体が綺麗になっていき、起き上がってきた女の子は、さっきまでの怯えた様子とは打って変わって、そう言ってきた。

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