ほんとに、最悪

「……ん」


 ダンジョンだ。

 もう、夢じゃないことは分かってるけどさ。一応ね。

 

 ともかく、警報が鳴らなかったってことは、あのゴブリン達は下に下がってこなかったってことか。

 どれくらい、時間が経ったのかはダンジョンだから、全然分からないけど、取り敢えず、DP確認かな。

 確か寝た時がDP350だったから、どれだけ増えてるだろ。


 そう思って、私はDPを確認するために、ベッドから降りて、ダンジョンコアを触った。

 

 :DP620


 これは……増えてる。うん。増えてはいるんだけど、多いのか、少ないのか、私がどれくらい寝てたか分からないし、分かんないや。

 まぁ、寝る前よりは余裕が出来たし、DP100でガチャ……いや、DP1000、貯めて引こうかな。DP100だと、またオークとかが出てきそうだし、フィーちゃんみたいな子犬はもうフィーちゃんだけで充分だし。……もちろんDPを0にするのは怖いから、DP1500くらいを目標に頑張ろう。……頑張るって言っても、私はここで引きこもるだけだけど。


 今後の目標を考えながら、一応確認しておこうと思って、私はダンジョンの一回層の映像を映した。

 すると、ゴブリンがなんか、人間? の女の子を連れ込んでた。

 何、あの子。歳的には、私より2個下の15歳くらいだと思うんだけど、まぁ、これはあの子が人間だった時の話か。一応、この世界に色々な種族がいることは分かってるから。

 ……んー、見た感じ、服、脱がされそうになってるよね? それを必死に泣きそうな顔で抵抗してる。……どうしようかな。

 なんで私がこんなに冷静なのかは分からないけど、何のメリットもなく、助けようとは思えなかった。だって、私はダンジョンマスターで、人間……だけじゃなく、魔族とかからも殺される存在の、言うならば、第3陣営なんだから。

 今更だけど、私はこのコアを壊されたら、死ぬ。いくらあの女の子が弱かったとしても、私も弱いし、コアを壊すくらいは出来そうだから、助けるメリットが本当にない……ことも無いのかな。もしあの子が立場のある子だった場合、いや、立場がなかったとしても、あの子を大事に思う存在がいた場合、ここにあの子の足取りを追って、誰かが来るかもしれない。


 はぁ、最悪。なんでここに来るかな。……仕方ない。助けるか。この近くに街があるのかとか、知りたいし。……あ、でも、私と出会ったら、こごダンジョンで、しかもここにはダンジョンマスターがいるってバレるのか。……じゃあ、帰せないじゃん。……ほんとに、最悪。……引きこもりだし、学校とか行ってないから、頭も良くないんだよ。

 私は憂鬱な気分になりながら、取り敢えず、あのゴブリンからは女の子を助けることを決めて、二階層にいるオークに向かって、一回層にいるゴブリンを殺して、女の子を連れてくるように命令した。


 そしてしばらくすると、映し出していた一回層の映像にオーク2体が現れた。

 女の子は、服を脱がされるどころか、もう服を破かれていて、オーク2体を目にすると、抵抗する気が失せたのか、目から涙を流していた。

 ……まぁ、私はこの女の子の味方って訳じゃないから、そこで絶望するのは間違ってはないかな。

 そう思っていると、オークの内1体が、ピコピコとピコピコハンマーを振り回しながら、ゴブリンを叩きつけ、壁に吹き飛ばし、ゴブリンの体をぐちゃぐちゃにしていた。


 ……なんか、ピコピコハンマーのせいで、ギャグアニメを見てる気分になって、こんなゴブリンがぐちゃぐちゃのグロ映像を見ても、なんにも思わないんだけど。

 ……あ、でも、女の子はさらに絶望したような顔になってるな。

 私がそんなことを思ってると、もう1体の何も持ってないオークの方も、ゴブリンを蹴り飛ばしたりして、直ぐにゴブリンが全滅した。

 すると、ゴブリンの死体はまるで何も無かったかのように、消えていた。


 DP1370

 

 あ、めちゃくちゃ増えてる。……さっき見た時が、DP620だったから、ゴブリン一匹DP150ってところか。

 そうやって私がゴブリン1匹分のDPを計算していると、ピコピコハンマーを持ってない方のオークが女の子を片手で持ち上げた。

 女の子の顔は見えないけど、深く絶望してるのは分かる。

 私はこのままじゃ女の子が壊れちゃって、情報を聞き出せないと思って、一回層に転移した。

 オークが2匹もいるし、大丈夫だと思って。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る