68話 朝の時間

頭に重さを感じる……またこれか。


それにしても、段々と重くなってきたものだ。


眠りから目覚め、俺が目を開けると……予想通り、ハクが腹の上に乗っていた。


「キャン!」


「はいはい、おはよう」


「ワフッ!」


『お仕事終わり!』とでも言うように、俺のお腹から降りる。

まあ、相変わらず賢い子だこと。


「さて、あの二人はどうし……そうか、ここはいつもの宿じゃないのか」


夕日を見た後、俺はともかくハクとアリアさんは疲れていた。

なので市長が気を利かして、俺達を宿に招待してくれたんだ。

オクトパス退治をしたと言う事で、無料にもしてもらっている。


「いやいや、有難い……が、広すぎやしないか」


何せ、市長が用意した部屋である。

俺の一人部屋だと言うのに、15畳くらいのワンルームの部屋だ。

おかげで、落ち着かなくて寝ずらかった。


「ワフッ!」


「……まあ、お前が気に入ってるならいいか」


ハクが走り回るには丁度良いらしい。

今も走ってるが、昨日の夜も嬉しそうにはしゃいでいた。


「ほら、シャワーを浴びるからきなさい」


「キャン!」


俺の後ろを、とことこと大人しく付いてくる。

その姿に癒されつつ、俺は朝の支度をするのだった。





そして風呂から出て体を乾かし、着替えをすませると……ドアをノックする音が聞こえる。


「タツマ、起きているか?」


「ええ、起きてますよ」


「それでは失礼する」


そういい、アリアさんが部屋に入ってくる。


「アリアさん、おはようございます」


「ああ、おはよう。良く眠れたか?」


「はは、実はあんまり……豪華なのは苦手みたいです」


「ふふ、そのようだな。すまんな、私に合わせて用意されたのだろう」


「いえいえ、ハクが喜んでるから平気ですよ」


すると、ハクがアリアさんの足元に向かう。


「ワフッ!」


「ああ、ハクもおはよう。おっと……きたようだな」


空いてる扉から、カートを押してメイドさんが入ってきた。

昨日の夜、朝食を一緒に取る約束をしていたからだ。

俺達は用意されるままに、テーブルに座って待つ。

そして、メイドさんが下がったのを確認し……朝食をとる。


「いただきます……もぐもぐ……このパン美味いな」


朝食はシンプルにサラダとスープ、それとウインナーとパンというものだ。

この世界においては、割と平均的な朝食らしいが……やはり、海鮮があると違う。

パンには何やら火の通った魚が挟まれていた。


「この肉肉しい魚のステーキはなんだ?」


「ふふ、なんだと思う? ヒントは、昨日タツマが潜った時にいた生き物だ」


「俺が潜った時に……ロケットガツオですか!?」


「うむ、正解だ。割と貴重らしいのだが、特別に我々に提供してくれるそうだ」


なるほど、これはカツオのステーキを挟んでいたのか。

ピリ辛の香辛料とレタスと合い、次々と食べ進めてしまう。


「もぐもぐ……しかし、どうやって獲るのですか? はっきり言って、俺でも難しいですよ」


「それが聞いて驚いた。どうやら奴らは止まれないらしく、岩や船に当たって死ぬことがあるらしい。それをごくたまに見つけ、港で売っているというわけだ」


「あぁー……なるほど」


そういや、カツオは止まれないとか。

ロケットというくらいだし、更にその特徴が強いのかもしれない。


「これが定的的に獲れたら、とても助かるとは言っていたな」


「ふむふむ……少し考えてみますかね」


「ほう? 何か考えがあるのか? 奴らは網やネットを突き抜けるぞ」


「でしょうね。だったら、もっと頑丈なものを用意すれば良いかと」


「ふむ、そう簡単に見つかるとは思わんが……まあ良い、期待して待っているとしよう」


「ええ、多分俺なら可能かと思います」


カツオか……タタキとか、揚げ物にしても美味いんだよなぁ。


そんなことを考えつつ、俺は楽しい朝食の時間を過ごすのだった。

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アラフォーおっさんの異世界スローライフ おとら @MINOKUN

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