夢恋

@narotaro

夢恋

ある時、夢の中で恋をした。

暑い夏の蝉の鳴く頃、

クーラーが作り出した空気に包まれながら兄の横で寝ていた時。僕は恋をした。あ、兄にでは無いよ?




僕は何かの旅行中だったと思う。

もしかしたら修学旅行中だったのかもしれない。一年生に修学旅行はないけど、夢だから仕方ない。僕が恋をした人は何か優しいものに包まれていた。背が低く、150cmくらいで2年生の証である緑のネクタイがその人のイメージに合ってないような気がしてアンバランスだった。

僕にとっては可愛いと思う顔で、鈴のような声で笑ったと思う。夢の中で声なんて分からないけれど、何故かそう思わせてしまうようなとびっきりの笑顔だった。

まるで太陽に咲く向日葵のような明るさだった。

まず僕はメモを渡された。韓国語だったから分からなかったけれど、頬を赤らめて渡されたからとてもドキドキした事を覚えている。どうやらその女の子は英語と韓国語が出来るらしかった。

手紙の内容はバイトの上司さんが教えてくれたけれど正確には覚えてない。

けれど、日にちと時間、そしてお金が書いてあった事は覚えている。そのお金が一学生がポンと出せるお金じゃ無かった。

そこで恐らくお嬢様なんだろうと思った。

とりあえず会うことにして、外出した。場面が飛んで、不思議な樹海の奥の古い遺跡のような場所。

そこには大量の金貨や宝石があったことは覚えている。でもどんな宝石よりも横にいた女の子の方が何倍も綺麗に見えた。

僕はこの時、この子は優しい子なんだと思ったのだ。何故かは分からない。

彼女は虫が嫌いだったようで縦なら1mはあるのでは無いかと思わせるカブトムシをビックリした形相で見ていた。

とっさにでた韓国語が分からないけれどとても慌てていて面白かった。

彼女が話す英語に僕は英語や日本語で答えた。彼女は日本語は聞き取れるらしいが話すことは出来ないらしい。

2人が笑顔で話している時、夢は終わった。

夢だと気が付いたのは起きた余韻に浸っていた時だった。

15歳の少年の、もう二度と見ることすら出来ない女の子との恋だった。恋は儚く消えた。

人の夢とかいて儚いと読むなら僕の夢は儚い恋だったということだろう。

あの子と話したことも鈴のようだったであろう声も小さな背も可愛い顔も。全てが夢だった。

人の夢はその人の理想だと聞いたことがある。僕の理想はその女の子なのか、それともその世界の雰囲気なのか、あるいは…

僕には分からない。

ただ1つ言えることは、これは夢であって叶う恋では無いということだ。

先日彼女から別れを切り出され、夢を見失い、理想を求め、葛藤した少年の、淡い甘い夢であった。

もう一度会いたいと願ってももう会えないだろう。



夢なのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢恋 @narotaro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ