第4話幼馴染のせいで幸せな気分が

俺はバイトを終え、駐輪場のスペースで自転車の鍵を挿していると声を掛けられた。

「ねぇ、忠野くん。一緒に帰ってくれない?」

「えっ、俺ですか?信用されるほど——」

「細かいことは気にしないのー。同級生だし、素行が悪そうじゃないキミが居たら安心するの。女子を一人で夜道を歩かせるつもりかい、キミは?」

「そんなことは……鈴前さんのお役に立てるかは分かんないですが護ります」

「ふふぅ〜よろしくねぇ!」

鈴前が柔和な笑顔を俺に向け、歩きだす。

俺は彼女の背中を追いかけ、自転車を押しながら彼女の隣を歩く。

「……」

「忠野くんが来てくれて助かったの。最近物騒で、一人で夜道を歩いて帰るなんて怖くてさー……これから、バイトが終わったら一緒に帰ってくれると助かるんだけど、良いかな?」

「俺は構わないですよ……その、迎えに来てくれるような、恋人とかって……居たりしないんですか?」

「居ないよ。今まで、そんな相手居たことないんだよね〜私。幼馴染とかいる、忠野くんって?」

「居ます……お節介をやいてくるウザいのが。鈴前さんは居ますか?」

「居ないなー。幼馴染ってオタクには惹かれるもんがあるじゃん!ふとしたときにドキっとなったりしない、幼馴染に?」

「残念ながら、そんな気分になったことはないです……ああいうのは幻想で、現実は恋愛対象にさえなりませんよ」

「相当にその幼馴染が苦手なんだ、忠野くんは。世の中、残念なことに溢れてるよねー忠野くん」

「ええ、まあ……鈴前さんも色々と抱えてるんですね」

俺と鈴前はそれなりに会話を交わしながら、夜道を進み続けた。


老舗らしい小さな花屋に近付いてきた頃に、彼女に御礼を告げられ、別れることになった。


俺はバイト先の同級生の先輩である鈴前庵が気になり始めた。


帰宅した俺はベッドの上で、自身に向けられた鈴前の柔和な笑顔と可愛らしい笑い声を思い出し、悶えた。

二時間も経てば、翌日になるという時刻にスマホが着信を告げた。

思わず、舌打ちをした。

「ンだよ、こんな時間に!用件があんならさっさと言え!」

『何よー!いつになく不機嫌じゃないたかちゃん。明日の弁当のおかずは何が良い?』

「母さんが作ってくれるからいらねぇって言ってんだろ!何度言やぁ分かんだ、ブスぅっ!」

『たかちゃん、いくら何でもブスは酷いよ。謝って、たかちゃん』

「あぁーあっ!うっせぇなぁ、さっさと寝ろ!」

俺は幼馴染にキレて、通話を切った。

俺は幼馴染と接するとつい荒々しくなってしまう。

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お兄さん、邪魔しないでくださいっ! 木場篤彦 @suu_204kiba

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