第3話友人、そして怪訝な貌
「あー、ちょちょ通らせてー。よぉ、りっちゃん」
教室の前方の扉付近で数人が群れて戯れているのをある男子が手刀を切りながら進んで、私が寛ぐ席に歩み寄りながら声を掛けてきた。
「東堂くん、よっす!友人らにハブられたー?」
普段通りに片手を挙げかえし、明るく返した私。
「相変わらずひでぇこと言うなー。その友人らのうちに、りっちゃんも入ってんだぞぅ〜。体育祭やるじゃん、なんの種目に出るん?」
「ナイショっ!そんなことよりさ〜今週の日曜空いてるぅ?あそこのテニスコートで
「ケチくせぇなー。テニスって……バイトのシフト入ってたんじゃ。まあ、おれに拒否なんて出来ねぇですからね。しっかし急に言わないでよー、りっちゃん。二人だけすか?誰か誘うんで?」
東堂が首を左右に振りながら両手を挙げて降参するような仕草をしながら、時代劇に出てくるような子分らしさを出した言葉を投げる。
「リカちも呼びたい……んー。でもなー……そうだね、うん金曜にはどうなったか言うから。誘えるテニスが上手い
低い唸り声を漏らしながら思案して、決めることが出来ずに詳細は追って告げることにした私は満面の笑みで応えた。
「ハハハ、相変わらずだな、りっちゃんは」
東堂が苦笑してからあきれたため息を漏らした。
「ストレス溜め込むのは身体によくないし。身体動かしたいんだ、今ねっ!」
私は椅子の背もたれに身体を預けながら両手を天井に伸ばした後、両手を下ろし左眼で彼にウィンクを飛ばす。
「やれやれ、ストレス解消だからと巻き込まれる俺の身にも……はぁ」
彼が何度目かのため息を漏らし、
「……」
「……?」
「じゃあ、教室戻るわ。放課後にまた」
「あ、うん……」
片手を挙げて教室を出ていく東堂清孝の背中が遠のいていくの見届けていたら、小さな背中だっけと首を傾げてしまった。
怪訝な貌をしていたようで、教室に戻ってきた前の席の藍澤が声を掛けてきた。
「どうしたの?大丈夫?」
「えっ?私は大丈夫、だけど……」
「ならいいけど」
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