第42章−1 異世界のハラミとバラは美味しくないです(1)

 宰相サンは難しい言葉で誤魔化してるけど、結局のところは、エッチなことしか考えなくなってしまうってことだろ? そうだろ?


 ちょっと、そんなオレが今までコツコツと長い歳月をかけて築いてきた厳格な魔王様のイメージはどうなってしまうのさ!


「勇者様は、異世界の方ですからね……。覚醒されたら、今後どのようになられるのかは、よくわかりませんが」

「ちょ、ちょっと、ソレ、逆にすごく、怖いんだけど」


 と言いながら、思わず隣に座るフレドリックくんに身を寄せちゃったりする。

 と、「ゴホン、ゴホン」と宰相サンが咳払いをした。


「勇者様は……ずいぶんと、フレドリック様をお気に召されたようでございますね?」

「は…………?」


 オレが不思議そうに首を傾けると、宰相サンは「無自覚ですか」と呟き、すごく気の毒なモノを見るような目で、オレを眺めてきたよ。

 ちょっと……失礼じゃないか!


「第一位がエルドリア・リュールシュタイン王太子殿下。第二位は勇者様の専属騎士であるフレドリック・ラーカス元王太子殿下。第三位は聖女ライトナル様」


 厳かな声で、宰相サンはなにやら順位を述べはじめる。なんのランキングだろうか。


「第五位は小姓のリニーラルト・ラグナークスだ」

「フレディア騎士団長! それは余計な情報です!」


 すごい形相で宰相サンに睨まれ、騎士団長サンは軽く肩をすくめる。

 このふたり、なんだかんだいって、すごく仲がいいみたいだね。


「この順位は、わが王国内において、適齢期を迎え、かつ伴侶を持たぬ者の中で……という範囲になりますが、能力、容姿、家柄を総合的にみた順位づけとなります」

「ふ――ん」


 そうなんだ。


 ドリアが一番なんだ。

 やっぱり、身分ってのは評価ポイントが高いんだね。


 さらに、驚きなのは、フレドリックくんもすごいヒトだった……ということ。壁になるのがすごく上手な、ただの護衛騎士ではなかったということだね。


 っていうか、リニー少年も適齢期って……ちょっと乱暴なのでは? まあ、お貴族様の婚姻は、おぎゃーって産まれたときに相手が決まってしまう場合もあるからねぇ……。


 オレはちらりと隣に座っているフレドリックくんを見上げるが、オレの顔が動くと同時に、ものすごい速さでそっぽを向かれてしまった……。


 聖女様はまあ……なんといっていいのか。まあ、聖女様だからね。聖女枠もあなどれない。


 第四位はオレが知らないヒトだから教えてくれなかったのだろうけど、五位にリニー少年が食い込んでいるのには驚いたよ。


 やっぱり、優秀な子だったんだ。

 ヒトはみかけで判断しちゃいけないっていうことを、宰相サンは言いたいのだろうか?


「いやいや、勇者様。なにが『ふ――ん』ですか! そんな他人事では困ります」

「なにが困るんだ?」


 オレの返事に宰相サンは口をあんぐりと開けたが、騎士団長サンに肩を叩かれ、あきらめたかのように口を閉じる。


「……『ハラミバラ』の能力に開花された方々は、婚姻に関して、一切の障害がなくなります」

「は? それって、どういう意味?」

「生まれ、性別、貧富、身分……。通常であれば、婚姻の障害となる条件ですが、『ハラミバラ』が望めば、婚姻が成立します。いかなる者も断ることはできません」

「……相手の同意は?」

「不要でございます。関係ありません。『ハラミバラ』が強く望めば、叶うことでございます。過去、平民出身の『ハラミバラ』だった青年が、婚約者が既に決まっていた王太子殿下を伴侶に選んだ事例が、何件もございます。よりどりみどりなのです」

「……なるほど」


 略奪婚か。事例の詳細に少し気になる部分があるけど、まあ、事例だし、スルーしておこうかな。

 それにしても『ハラミバラ』のワガママで強制的にケッコンさせられるって、異世界ってやっぱり怖い世界だな……。

 オレがいた世界って、平和だったんだなあってつくづく思うよ。




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お読みいただきありがとうございます。

久々の更新となりました。


ということで、なりふりかまわず宣伝を。


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異世界オークションへようこそ〜優秀なオークションスタッフたちは数々の難題と災難に立ち向かう〜

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