第41章−5 異世界の尋問は楽勝です(5)

 オレの混乱を悟った宰相サンが「ああ……」と軽く頷く。


「我々は、王家に近い純血性の高い血族ですので、子作りは義務のようなものです。わたくしには妻が十五人おります。騎士団長はたしか妻が十八……」

「ちがう。八人だ」

「え? それだけ? もっといませんでしたか?」

「それだけだ」

「本当に? 離縁したり、死別したりした者も合わせた数ですよ? 子がなしえなかった妻も含みますよ? 自分の精力を誤魔化そうとか企んでいませんか? 隠したいヒトとかいるんですか?」

「いない。伴侶に関しては、常に清廉潔白で、誠実真摯でありつづけている」

「…………」


 なにやら宰相サンと騎士団長サンが言い争っているが、……たしかに、伴侶の数の多さを考えると、子が少ない。


 そういや、こっちは、多夫多妻が許されているんだった。


 オレが絶句してしまったのを見た宰相サンが軽く首を傾ける。


「勇者様のいらした世界は、多夫多妻ではなかったのですか?」

「地域や国、種族によって違っていたな。権力者は一夫多妻、多夫一妻もあったが……」


 魔獣や一部の魔族などは、多夫多妻とかもあるにはあるが、と心の中でつけたす。やはり、多夫多妻は少数派。レアケースだよ。


「そうなのですね。それでは、さぞかし驚かれたでしょう」


 そうだよ。そうだよ。

 さぞかしびっくりしましたよ。

 今、まさに、リアルタイムでびっくりしてるんだよ!


「至高神アナスティミア様の祝福を受けた者として、『ハラミバラ』の能力を持つものたちは、男女問わず聖女候補として大神殿に召し上げられ、いずれは聖女として女神様に仕えていただく尊い存在です」

「おや? 聖女様はひとりじゃないんだ?」

「はい。聖女様、聖女様候補は複数おられます。力の強さ、女神様の寵愛の多寡によって順位はあるのですが……勇者様なら、間違いなく、至高の存在として聖女の頂点に立たれるかと」


 うーん。

 女神様の寵愛の多寡ねぇ……。けっこう、ムラがあるというか、えこひいきしそうだな。あの本能まっしぐらな肉食女神なら……。


「勇者の次は聖女とか、マジ、そういうのって勘弁してほしいよ……」

「心中お察しします。重ね重ね、申し訳ございません」


 今度は、騎士団長サン、フレドリックくんだけではなく、宰相サンまでもがオレに頭を下げる。


 ということは……宰相サンがオレに滞在を強要しているのもこの『ハラミバラ』ってスキルが影響しているのではないだろうか。


 まったくもって、やっかいなものをアノ女神は……。


「女神様の寵児は、我が王国におきましては、国王よりも上。いわゆる最高位の存在になります」

「え――っ」

「そんなに露骨に嫌そうな顔をされますと……」


 あの聖女様が、王様よりもエライなんて、ちょっと、ダメダメじゃないか……。

 っていうか、オレも王様よりも偉くなるのか?


 そんな仕組みでこの国は大丈夫なのか?


 と思ったのだが、顔色の悪い三人を見ていると、なんだかそれを指摘するのも気の毒に思えてきた。


「聖女様の興味は、よりよき子孫を残すことに特化されておりますので、まあ、政治が乱れたり、浪費に走ったりすることはないのですが」

「え……。まさか、オレも、そうなっちゃうの?」



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