第41章−4 異世界の尋問は楽勝です(4)
こちらの希望はしっかりと伝えておかないと、大変なことになってしまうよね。
あのまま聖女様を野放しにしたら、確実に暴走するよ。
そして、オレは抵抗らしい抵抗もできずに問答無用で襲われるっていう黄金パターンだ。
女神様補正は侮れないからね。
「承知いたしました。勇者様の寛大なご配慮、無駄にはいたしません」
「おまかせください。再教育はラーカス家の総力をもってして徹底的に行います」
「…………」
騎士団長サンの意気込みとセリフがちょっと怖いけど、まあ、あの聖女様には少しばかりお灸が必要だから、さらりと聞き流しておこうね。
「それで、勇者様の『ハラミバラ』に覚醒された件に関しましては……」
そこでいったん口を閉ざすと、宰相サンはガシガシと頭をかく。
ちょっと、その……『ハラミバラ』に覚醒って表現、なんかすごく恥ずかしいからやめて欲しいな。
至高神アナスティミアから異世界召喚特典でもらった『ハラミバラ』っていうスキルだが、黙っていようと思ったんだけど……隠し通すことに失敗して、それもばらしちゃったんだよね。
っていうか、実際に『ハラミバラ』がどういうモノなのか、どれほど価値があるものなのかオレは知らない。なので、判断できなかったんだよ。
あのステータス画面で表示されていた上辺だけの情報では、実際のところ、よくわからないことだらけだったからね。
コソコソ隠れて自分で調べたり、時間をかけてわが身を危険にさらして検証実験するよりも、識者に手っ取り早く教えてもらった方がいいかな……っていうか、宰相サンには隠し通す自信がなかっただけだ。
異世界の謎スキル。
扱いを間違って痛い目にあうか、宰相サンに知られて痛い目にあうか、どっちがマシか、という究極の選択の結果がこれだよ。
「聖女様も『ハラミバラ』って言ってたよね?」
「そうでございます。『ハラミバラ』は、性別関係なく、子を宿すことができ、子を授けることができる、至高神アナスティミア様の寵児でございます」
「迷惑な話だ……」
しまった! 本音が思わず口からでてしまったが、誰もなにも突っ込んでこないよ。
いいの?
そんなのでいいの?
オレもだけど、みんなこの会話に疲れ切っているようだね。
だったら、さっさと終わらせようぜ。
「我々の世界では、純血の出生率が極端に減っており、高確率で子を宿すことができ、子を授けることができる『ハラミバラ』のスキルは最上位のものとして扱われております」
「え? ちょっと待って? 今、なんて言った?」
「はい。『ハラミバラ』のスキルは最上位のものとして扱われております」
「いや、その前の出生率がどうとか?」
オレの質問に「そっちのほうか」という顔をする宰相サン。
「我々はなかなか子が授かりにくい体質でして……」
「いや、ちょっと待って? 宰相サンのところは八人の子どもがいて、騎士団長サンのところは九人の子どもがいるって……」
それのどこが、少子化問題に悩んでいると?
子沢山じゃないか。
それとも、短命種とか、幼児がかかりやすい死病でもあるのかな?
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