暗転

理由は明解めいかいにして簡単かんたん______。

楠国重が徒党ととう背後はいごからつかみ、壁へと打ち捨てたからだ。

浅間殿は襲いかかる一人を背負せおい込むように投げ捨て、

自身の背後にいる悪徒あくとめがけてぶつける、


玄翁げんおう殿も徒党の背後から忍び寄り頸椎けいついを正確に打撃し、

最小限の動作だけで国重と浅間殿が一人を打ち捨てるに三人は失神させている、

現状を表現するなら、国重が一人を打ち捨て、

浅間殿が一人を投げ、

背後の一人を捲込まきこみ計二人を不能ふのうにし___、

玄翁殿は三人を失神させて合計六人までが打ち伏せる有り様だ_____。


残るは一人、

「ば……、化物、」

精気せいきせた弱声よわりごえののしりながら

悪徒は出せる全力で出口へとかけ出すが、

浅間殿が放つりで尾骶骨びていこつ強打きょうだし___

悪徒は廊下へと放り投げられる形で大きくあわっている。


事情を知らない人が見たら死屍累々ししるいるいの山と例えられるであろう光景こうけい眼下がんかに広がり、私はこう思う。


「どうしたものだろう、どこから手を付けたらよいものやら・・・」


つい、そうつぶやいてしまう光景こうけいだ…。

こうなったからには、私も……

無関係とは言えないか___。


一息ひといき入れて気を引きなおし決意を固め浅間殿と向き合いげる。


「文隆殿の不注意とは言え、

事がここまで広がってしまった以上は道隆殿に申し開きをしなくてはなりません。

どうか道中どうちゅう随伴づいはんさせていただきたい」


一瞬いっしゅんでは有るが浅間殿の顔から血の気が引いてあおざめていく_____


どれだけ道隆殿をけているのか___

最愛なれど、最愛さいあいなればこそ今は会いたく無いのであろうが、

事ここにいたっては会わずにはいられない、


故に浅間殿は電光石火でんこうせっかの如く

脱兎だっとの如く、踏み出した___


……………逃げた!?


とっさの出来事できごと対処たいしょできず見逃みのがしたが

流石さすが年長者ねんちょうしゃ

玄翁殿は予想していたのであろうか

浅間殿の水月すいげつ(みぞおち)に一撃を入れ失神しっしんさせている。


今度は私のきもが冷えた…

これが経験の違い、人生の積み重ねてきた年季ねんきの違い……なのだろうか。

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月夜の空 つきみ庵 @mochiduki_enshu

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