鎧袖一触

どれだけ今迄いままでの暮らしがぬる生活だったのか、

それが露見ろけんする発言だ、

今時いまどき若者わかもの……

私もこの悪徒あくと逹と比べても年齢の差は無いのだが。

考えている間にもう一人の悪徒に文隆殿は蹴り飛ばされ、畳にひたいこすり付けながら転び伏せる。

「フン……、フフ。」

悪徒達は皆一様みないちように鼻で笑いながら、文隆殿につばを吐きかけ、

囲む様に浅間殿に近寄って来る。


「老い耄れ《おいぼれ》と男にぁようはねぇからよ」


一人が言うと続いてもう一人が


手間てまわずらわせずに、さっさとねい」


つづけてさらにもう一人が、


「転がってるえらそうな野郎もよ、

何が狼藉ろうぜきがどうたらこうたら、とよ。

阿呆あほうなんじゃねえの?

全員始末したら褒美ほうびもなにも、

全部俺らのもんじゃね?

男は身ぐるみいで、女郎屋じょろうやに売れば、

まぁ、二束三文にそくさんもんよかマシだろうよ……」


お喋りの最中さなか、悪徒の一人が飛び上がり___

最後にしゃべっていた悪徒もだが一瞬浮いたかに見えて、今は悶絶もんぜつしている。


悪徒に一片の同情も無いが、哀れみは向けんでも無い、

浅間殿が悪徒の股下またしたを勢いよくり上げて、

玄翁げんおう殿が水月みぞおち肘鉄ひじてつ渾身こんしんの一撃で叩き込み、

とどめに浅間殿が押し出す様にかかとで水平に蹴り飛ばしたのだ_____。


見ていて気持ちのいい連携技と快音が館内に響き渡る。


「この、ジジイにクソアマ!、舐めたマネしくさるんじゃねぇぞ!クソ野郎」


まぁ、もありなん。……、

浅間殿と玄翁殿の殺気が痛くて目の遣り場に困る、

恐ろしくて左に居る二人の方を向けない、

でも、貴方も当然手伝えと雰囲気で感じる二人の視線が激痛の如く痛い。


「大の男が薄汚うすよごれた痩犬やせいぬのようにキャンキャンとまぁ、

やかましいわねぇ。

美的欠片びてきかけらも見受けられないひどい有様___。

人間落ちるところまで落ちると目の当てようも無いからどうしようもできない、

莫迦につける薬は無いとはこう云う事を言うのね」


余程よほどはらにえかねたのか多弁たべんに語る、

まだ続く……、怖くて止めるのも恐ろしく思える。


だが私とは裏腹に悪徒達は逆に静まりはしたが

あからさまに逆上している、

全員が全員で浅間殿を囲む様に集まりにらみつけて時を待つ。


「良かったわね、莫迦ばかにつける薬にはらないけど、

私の知識の足しには成りそうね。

生きている内にほんのわずかでも世の中に貢献こうけんできたのよ

せながらワンと鳴いて喜びなさいな。

足蹴あしげにしてあげるから_____。」


七人の徒党は花弁が閉じるように浅間殿を襲いにかかる、

だが、ひとり・ふたり、と側面へと跳ね飛ばされる_________。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る