まっさらな命をきみに。

“純白に包まれて眠った毒林檎。執着と愛の狭間で揺れる金の長い髪。わたしが愛したのはどちらだろう。”


「毒林檎を愛したんじゃないですか?」

「何でそう思うの?」

「だって、林檎って美味しいじゃないですか。私だったら美味しい方を選びます。」

「……きみは本当に不思議な事を言う。」




“きっとこれが恋。わたしときみの、まっさらな恋。”


「これは、私への告白ですか?」

「……聞かないでよ。恥ずかしいんだから。」






“ 温かくて陽だまりの中にいるわたし。しあわせのかたちをやっと見つけたんだ。”


「ピアス、似合ってますよ、先輩。」

「きみはいつもそうやってわたしを揶揄う。ずるいなあ。」

「そんなこと言わないでください。私は本心しか言いませんよ。」





“きみはいつまでもわたしの天使だ。”


「……これは、どういう意味ですか?」

「わたしに答えを聞くなんて珍しいね。尚更秘密にしておこうかな。」

「……私は天使にはなりませんよ。」





 艶やかで、儚くて、どこか異国の雰囲気を持つきみ。

 綺麗な容姿、楽しそうに笑う顔。

 きみはきみ自身の事が嫌いだって言ってたけどね。

 きみは私の天使なんだよ。


 わたしを愛して、わたしに愛された、ひとつのいのち。


ーー先輩が、好きなんです。


 だから、天使さん。

 いつか、わたしが死んでしまう時が来たら。

 例えそれがどんな残酷な瞬間だとしても、わたしは喜んで受け入れるからさ。

 だから、わたしが死ぬ一秒前に、どうか。









 どうか、わたしのいのちを、もらってくれるかしら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

まっさらな命をきみに。 古都 一澄 @furutoko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ