第13話 魔石の交換レートと期限
「ん?」
魔石をスマホの上に乗せるという作業を繰り返していると、画面に違和感を覚えた。
何がおかしいのだろうと確認すると、どうやらポイントの増加量がおかしい。
「なあ、クリスティーナ。
ここにある魔石は本当に5級と等級外の魔石だけなのか?
気のせいじゃなければ、1個で数百pt増加した魔石があったんだが」
魔石をチャージする手を止め、隣で優先して交換する物を考えてもらっているクリスティーナに確認する。
「間違いなく、ここにある魔石は5級と等級外の魔石だけだ。
ただ、魔石が含有する魔素量については、同じ等級でもある程度の幅はあるからな。
その影響でチャージされるポイントが変化したのかもしれない」
「いや、でも10倍以上増えているんだぞ?
さすがにブレ幅が大き過ぎないか?」
「あぁ、カズトは知らないんだったな。
魔石の等級は1つ上がるごとに魔素量がおおよそ100倍になると言われている。
だから、魔石の魔素量を元にポイントを産出しているのであれば、数十倍のブレはおかしくはないだろう」
「えっ、そんなにも幅があるのか!?」
さすがにそれは聞いていないぞ。
てっきり、5級が10ptで等級外が1ptだったから、10倍刻みで増えていくものだと思っていたのに。
だが、そうなるとさっき計算した魔石の個数に関しても色々と変わってきそうだな。
5級が10ptだから、4級は1千pt、3級が10万ptで2級が1千万pt、1級が10億ptになるのか。
つまり、1級の魔石が300個あれば世界樹の苗木と交換できるということだ。
さっきの計算から考えると、かなり現実的になった気がする。
「1級の魔石が300個となると、多少は現実味が出てきた気がするな」
「一応、1級の上に特級という等級もあるがな。
その特級の魔石で考えるのであれば、3個で交換できることになる」
「おぉ!?
ん?でも、特級の魔石を持っている魔物ってどんな奴になるんだ?」
3個という数に思わず声が出る。
だが、すぐに1級より上ということは、ドラゴンよりも上だということに思い至る。
「いわゆる古代種と呼ばれるドラゴンや、1級の魔物の変異種などがそれに当たるな。
はっきり言って天災以外の何ものでもない。
かつてのアンセラル王国では討伐したという記録があったそうだが、今の人類では討伐するためにどれだけの犠牲が出るか想像も出来んよ。
サグラスランド王国にも1級の魔石は保管されていたが、特級の魔石は保管されていなかったはずだしな」
「なら無理か……。
ちなみに、1級の魔石ならある程度は数が揃えられるのか?」
「いや、1級の魔石もそう簡単に手に入るものではない。
大国と呼ばれるサグラスランド王国の王城にも10個も保管されていなかったはずだからな。
他国や各ギルドの主要支部、大手の商会などでも1級の魔石を持っている可能性はあるが、その全てをかき集めてもおそらく300個には届かないだろう」
そう甘くないか……。
世界の危機だと訴えたところで、今ある1級の魔石をかき集めるのは無理そうだな。
いくつかの国や組織は協力してくれるかもしれないが、大半は相手にされないだろう。
「そうなると、等級の低い魔石を集めるしかないのか」
「そうなるだろうな。
そもそも、1級はもちろん、2級の魔物すらそう簡単に討伐できるものではないからな。
倒せる倒せない以前に見つけ出すことが難しいものも多いし」
魔石の交換レートで多少希望が見えたかと思ったが、厳しい状況はそこまで変わらないらしい。
「だが、数を集めるとなると、相応の期間が必要になるんじゃないか?
そりゃ、等級の低い魔石であれば相応の数が出回っているんだろうが、等級が低ければそれだけ数も必要になるからな」
「確かにそうだな。
一般に出回っているのは5級、4級が主で、3級が少量といったところだ。
それらであれば、金さえあれば市場から集めることも出来るだろうが、それだけでは到底目標まで届かないだろうな」
「そういえば、リリーダ様からは世界が危ないとは聞いたが、具体的な期限については聞いていない気がするな。
世界樹の苗木を準備するためにも相応の時間が必要みたいなことも言っていたし、さすがに年単位の猶予はあると思いたいが……」
そう口にすると、“ピロン”という音が鳴り、スマホにメールが届いた。
『期限について』
そんな件名が付いたメールには、たった今俺が口にした疑問に関する答えが書かれていた。
どうやら、リリーダ様が想定する期限は30年らしい。
理想を言えば10年と書かれていたが、30年程度までなら世界に致命的な影響が出る前に問題を解決できるとのことだ。
で、諸々の犠牲を出すことを許容するのであれば、リミットが50年まで延びるらしい。
文面から察するに相当な被害や影響が出るみたいなので、できるだけ早く、少なくとも30年以内には世界樹の苗木を植えて欲しいみたいだが。
「期限は30年か」
「そのようだな」
一緒にスマホを覗き込んでいたクリスティーナが返してくる。
「で、具体的な期限がわかったわけだが、これは達成できる数字なのか?」
「リリーダ様の求めなのだ。
当然、30年という期限内に達成するさ」
いや、そんな狂信者的回答が欲しいわけじゃないんだが。
そんなことを考えていると、クリスティーナが口元をふっと緩め、付け加える。
「心配するな、これは充分に実現可能な期限だ。
確かに、この地にいる私たち2人だけでは厳しいだろうが、30年という時間があるのだ。
この地から脱出し、人のいる地へとたどり着いて協力者を得れば、余裕を持って達成できるだろう」
脱出か。
この地が流刑地だということを考えれば、それも簡単なことではないのだろうが……。
それでも、やる気に満ちた表情のクリスティーナを見ていると、どうにかなるのではないかと思えた。
―――
ひとまず、ここまでで導入となる第1章は終了になります。
また、毎日更新も終了となり、以降は不定期での更新となります。
流れ着いた異世界で世界樹を再生する話(仮題) はぐれうさぎ @stray_rabbit
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