第12話 女神セレクト -ショップ-

 魔石のチャージ結果についてしばらく考えていたが、考えていても仕方ないと思考を切り替える。

 まだ、1ptの価値がものすごく高い可能性も残っているのだ。

 悩むのはそれを確認してからでも遅くないだろう。



「じゃあ、次はショップの方を確認するか」


 クリスティーナにも伝わるようにそう口にして、画面を操作する。

 ショップのボタンをタップして表示された画面には、タブによってカテゴリが切り替わるタイプの商品リストが表示されていた。



「世界樹の種が1千億pt!?」


 何気なしにリストの上部から確認しようとすると、いきなり衝撃的な情報が目に入った。

 いやいやいや、それは無理だろう。

 5等級の魔石で10ptなのだから、1千億ptには100億のゴブリンを狩る必要があるのだが?

 地球の人口が70億だか80億だかだったはずだ。

 その地球の人口よりも多い数を狩れというのはさすがに無茶だろう。

 少なくとも、俺とクリスティーナの2人に任せるような作業量ではない。


「いや、世界樹の苗木として必要になるのは3千億ptのようだな」


 そう言って画面を示すクリスティーナの釣られて確認すると、確かに種以外に土壌と生育環境として各1千億ptという記載があった。


「いやいやいや、なおさら無理なんだが!?」


「落ち着け、カズト。

 リリーダ様が用意されている以上、達成不可能というはずはない。

 必ず、何か方法があるはずだ」


「……方法か」


 クリスティーナの言葉を聞いて考える。

 どうすれば、この不可能と思えるポイントを稼ぐことが出来るのかを。


 すぐに思いつく方法としては、単純に人海戦術をとるというものだろう。

 仮に10人集めれば、当たり前だが、1人あたりのノルマは300億ptになる。

 まあ、10人程度であれば誤差かもしれないが、それが百人、千人、1万人と増えていけば、ある程度の効果は望めるだろう。

 まあ、1万人いても、1人あたりのノルマが3千万ptもあるのだが。


 後は集める魔石の質を高める方法か。

 ゴブリンの魔石は5級らしいから、それ以上の等級の魔石を用意すれば、それだけチャージできるポイントも増えるだろう。

 等級が上がるごとに10倍になるのであれば、1級の魔石は1万ptとなるはず。

 まあ、そんな等級の魔石を大量の集めることが出来るのかという問題はあるが、それを基準に考えると数は3千万個で足りることになる。


 人海戦術で1万人の人員を用意すれば、1人あたりのノルマは1級の魔石が3千個ということになるな。



 ……いや、やっぱり無理だろ。

 1級の魔物というものを見たことはないが、どう考えてもそんな数がいるとは思えない。

 というか、それだけの数がいたら人類は滅んでいるのではないだろうか。



「ちなみに、1級の魔石を持つ魔物にはどういう奴がいるんだ?」


「そうだな、1級となるとドラゴンや魔の森などの領域の主が該当するだろうな」


 はい、無理ー。

 どう考えても、ドラゴンや領域の主がそんなにゴロゴロといるはずがない。

 というか、領域の主がゴロゴロといたら、それは主とは呼べないだろう。


「悪いが、俺にはコレだけのポイントを稼ぐ方法が思いつかないんだが、何か思いついたりするか?」


「そうだな。

 国に帰ることが出来れば、国や各ギルドに保管されている魔石である程度の量はまかなえるとは思うが……。

 さすがに、この地で私たちだけでとなると思いつかんな」


 ああ、なるほど。

 確かに国などの組織になれば魔石もある程度は確保しているか。

 それこそ1級の魔石なんかもそれなりに確保していそうだ。


 でも、クリスティーナはそんな国から追放されているんだよなぁ。

 仮に、国に帰ることができたとして、そんな彼女からの要請が通るのだろうか?

 女神であるリリーダ様の神託だと伝えれば大丈夫だと思いたいが、その巫女という立場にあったはずのクリスティーナの現状がコレなのだから期待薄かもしれない。


「とりあえず、他の項目も確認してみないか。

 何か、魔石を稼ぐための道具があるかもしれない」


 しばらく考え込んでいると、クリスティーナからそんな提案をされる。

 確かに、初っ端からありえないポイントを見せられたせいで、確認がまったく進んでいない。

 ここは、リリーダ様を信じて、他のカテゴリも確認するべきだろう。






「……特にこれといったものはなかったな」


「……そうだな」


 一通りの確認を終え、2人して力なくつぶやく。

 残念ながら、クリスティーナをもってしても、先ほど確認した内容については擁護できないらしい。


 いやまあ、別にリストの内容がおかしかったというわけではないんだが、いかんせん魔石を稼ぐための何かがなかったのが痛い。

 この地で生活していく以上、確かに食糧や武器が必要になるのはわかるんだが、だからといって、それだけでどうにかしろというのは無茶が過ぎるだろう。



「……ひとまず、まともな武器くらいは交換しておくか?」


 いつまでも落ち込んでいるわけにも行かないので、現実的な提案をしてみる。

 クリスティーナが持っているのは、俺に突きつけたナイフと手製の槍のみ。

 そんな粗末な装備でゴブリンなどの魔物を倒しているのは凄いとは思うが、今後のことを考えるのであればある程度の装備の充実は必要だろう。


「そうだな、すまないが頼む」


「気にするな。

 元はといえば、クリスティーナが稼いだ魔石なんだから」


 そう言って、目の前に残っている魔石をチャージしていくことにした。

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