第11話 女神セレクト -チャージ-

「さて、これからどうしようか」


 リリーダ様が逃げるように通話を終わらせてしまったので、2人してしばらく呆然としてしまった。

 だが、いつまでもそうしているわけにもいかないので、ひとまず今後のことをクリスティーナと話し合うことにする。


「……そうだな。

 リリーダ様から神託を賜った以上、それを果たすために全力を尽くす必要があるだろう。

 であれば、魔石を集めることになるだろうな」


 若干、クリスティーナの言動が狂信者のそれに思えなくもないが、一時的なものだと信じよう。

 というか、俺としてはその神託を果たすための準備やその他諸々のことについて確認したかったのだが。

 何となくこのままクリスティーナのお世話になる流れになっているが、彼女がどういう風に過ごしていたのか知らないのだから。


「ひとまず、魔石を集めるという最終的な目標については一旦置いておこう。

 さすがに今日明日で簡単に達成できるようなことではないだろうし、色々と準備が必要になるだろうしな。

 とりあえず、その準備を進めるためにも、今までクリスティーナがここでどんな風に過ごしていたかを教えてくれ」


「……恥ずかしい話だが、はっきり言ってただただ無為に過ごしていただけだった。

 リリーダ様に祈りをささげる以外は、狩りをしてその日の糧を得ることくらいしかしていなかったよ」


 先ほどまでの気合に満ちた口調から一転して、落ち込んだような口調で答えが返ってくる。

 まあ、クリスティーナがいつからこの場所にいるのかはわからないが、流刑地への追放ということになればそういう生活になるのも仕方ないだろう。

 むしろ、狩りをして生きようとしていただけでも偉いと言えるかもしれない。


「狩りでは何を狩っていたんだ?

 魔石を手に入れられる魔物を狩ることもあったのか?」


「ああ、魔物を狩ることもあったぞ。

 森の奥に入ることはなかったから、ゴブリンやホーンラビットといったような小物ばかりだったが」


「そいつらの魔石は取っていたりするのか?」


「あるぞ。

 放置したままにして、その魔石を他の魔物に食べられても困るからな。

 取ってくるから、少し待っていろ」


 そう言って、クリスティーナは洞穴へと向かっていった。

 先ほど確認したときは何もないと思ったが、もしかしたら入り口から見えない場所に保管していたのかもしれない。



「ほら、コレだ」


 しばらくすると、クリスティーナが獣の皮で包んだ魔石を手に戻ってきた。


「コレが魔石か」


 地面に置かれた魔石の1つを手にとって眺めてみる。

 赤茶けたような、微妙ににごった色をした半透明の小石程度の球体だ。

 色や大きさが違う魔石があることから、魔物の種類によって得られる魔石も違ってくるのかもしれない。


「とりあえず、確認してみたいんだが、構わないか?」


「ああ、やってくれ」


 俺がスマホを手に問い掛けると、こちらの意図を察したクリスティーナがあっさりと了承した。

 なので、さっそくリリーダ様が用意してくれたというアプリの力を確認することにしよう。



 スマホを操作し、“女神セレクト”というアプリを立ち上げる。

 音もなく起動した画面には、ショップとチャージというボタンが表示されていた。


「先にチャージしてみるか」


 画面上部に表示されているポイント欄が0ptとなっていることから、現状、このアプリで使用できるポイント――魔素はないのだろう。

 どちらが先でも構わない気はするが、今の手持ちがどの程度のポイントなのかを把握しておいた方がショップで必要な物を選ぶときに参考になるだろうしな。

 そんなことを考え、隣から覗き込むように画面を見ているクリスティーナを余所にチャージのボタンをタップする。


「……魔石を置けばいいのか?」


 表示が変わった画面を見てつぶやく。

 画面には中央に円形の魔法陣のようなものが表示されているだけで、他には上部のポイント欄と下部の戻るボタンしかない。

 アプリのUIとしてどうなのかとも思うが、別にリリーダ様もこんなアプリを作るのが本職というわけでもないだろうし、多くを求めるわけにもいかないだろう。

 そんな風に1人で納得し、手にしていた魔石をスマホの画面上に置く。


 すると、画面から光が放たれ、次の瞬間には画面上に置いた魔石が消えていた。



「今のでチャージされたのか」


 そう口にしながら画面上部を確認すると、ポイント欄の表示が0ptから10ptに変化していた。


「なあ、クリスティーナ、今の魔石はどの程度のものなんだ?

 イマイチ、ここにある魔石の価値がわからないんだが」


「うん?

 そうだな、今の魔石はゴブリンから取れたものだな。

 等級としては5級の魔石になる。

 今、ここにある魔石は5級か等級外の魔石だから、はっきりいって価値は低いな」


「5級と等級外か……。

 ちなみに、等級外の魔石はどれなんだ?」


 そう質問すると、クリスティーナが等級外の魔石を手渡してくれる。

 礼を言って受け取り、今度はその魔石をチャージしてみた。


 結果、ポイントは11ptとなった。



「等級外は1ptか……」


 何となく予想できた結果ではあるが、あまりうれしい結果ではない。

 まあ、ここは0ptではなかったことを感謝するべきかもしれないが。


 目の前にある魔石は、ざっと100個近く。

 で、先ほど渡された等級外の魔石は、最初の魔石と比べるとサイズが小さかった。

 なので、サイズで等級が変わると考えるのであれば、おそらく等級外の魔石が3、4割含まれているように見える。


 そう考えると、全てチャージした場合のポイントは700pt前後だろう。

 コレが多いのか少ないのかはまだわからないが、クリスティーナが価値が低いといっている以上、おそらくは大したポイントではないのだろうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る