第10話 女神リリーダによる説明(2)

『カズト様をお招きした理由については納得していただけましたか?』


「ええ、まあ」


 完全に納得したというわけではないが、まあそんなものかといったところだろうか。

 どちらにせよ、今更元の世界に戻ることもできないだろうし、腹をくくろう。

 気を引き締めなおしてリリーダ様に質問する。


「それで、先ほどはこの世界を救ってほしいという話でしたが、具体的には何をすればいいんですか?」


『そうですね、最終的な目的は世界樹の再生になります。

 ですが、世界樹をすぐに準備することはできませんのでその準備からお願いすることになりますね』


「世界樹の再生……。

 というか、準備するということはリリーダ様が新しく作るということですか?」


『ええ、そうです。

 再生のために新たに世界樹の苗木を用意することになります。

 そして、この苗木を用意するためには相応の時間と素材となる魔素が必要となります』


「魔素?素材になるというそれを俺に準備しろということですか?」


 魔素。

 クリスティーナとの話にも出てきた気がするな。

 確かこの世界の魔素が乱れて大変だとかなんとか。

 でも、その魔素の乱れを正すために世界樹を再生させるはずなのに、先に魔素を用意しろというのはどうなんだろう。


『確かに魔素そのものを用意してもらえれば助かりますが、現在の技術では難しいでしょう。

 ですので、実際にカズト様に用意してもらうのは魔石になります』


「魔石ですか……。

 ちなみに、その魔石はどうやって用意するのでしょう?

 俺の認識だと、魔石は魔物を倒して手に入れるものだと思うのですが」


『その認識で間違っていません。

 このアラルドの世界でも魔石は魔物から手に入れることになります』


「いや、さすがに魔物を倒して手に入れろといわれても無理だと思うのですが。

 まだ魔物を見たことはありませんが、そう簡単に倒せるようなものではないですよね?」


「それなら私が魔物を倒そう。

 リリーダ様のため、この世界のためであれば、私の力を振るうことにためらいなどない」


 まあ、騎士団長だったというクリスティーナであれば、確かに魔物も倒せるのかもしれないけどさぁ。


「ちなみに、その魔石はどれくらい必要になるのですか?

 あと、クリスティーナが実際にどれくらい強いのかはわかりませんが、武器も道具もない今の状況では厳しいと思うのですが」


 自信満々なクリスティーナには悪いけれど、今の状況だと大したことはできないと思う。

 必要な魔石が少量だというのであれば別だが、さすがに世界を救うことになる世界樹を作り出すのにそういうことはないだろうし。


『もちろん、何の準備もなしに苗木に必要な魔石が揃えられるとは思っていません。

 ですので、そのための機能をそのスマホに用意しています』


「えーっと、それは既にインストールされている“女神セレクト”と“女神マップ”というアプリのことですか?」


『そうです。

 “女神セレクト”を使えば必要な物資を手に入れることができるようになりますし、“女神マップ”ではその索敵機能により魔物の位置を確認して効率的な魔石の収集を行うことが出来ます』


「物資を手に入れる対価は不要なのですか?」


『……いえ、“女神セレクト”については対価として魔石が必要になるのですが』


 ダメじゃねーか!

 いや、交換レートがどうなっているのかわからないからアレだけど、魔石を手に入れるために魔石を使って装備や道具を揃えろというのは結構な酷さだと思うのだが。


『と、とにかく、しばらくは魔石を集めつつ、周囲の環境を整えてください。

 苗木を用意するにも、ただ魔石を用意すればいいというわけではありませんから』


 そう言い置いてリリーダ様の姿が消える。


 いや、まだ説明が足りないんですが?

 今の状況でどうしろというのか。

 まあ、最後に言っていたように魔石を集めて、これからの住居となる拠点を整備しろということなんだろうけど。

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