夏休み中止のお知らせ
ぶらボー
中止です
とある剣と魔法のファンタジーな世界。
キーンコーンカーンコーン。
サステナブルルン共和国の国立魔法小学校では終業式が終わり、解放されたガキどもが次々と教室から飛び出していく。
「ヒャッハー!」
「海! 駄菓子! 女ァ!」
「ジジイとババアの家でSwi〇chしてやるぜェー!」
そう………今この瞬間から、待ちに待った夏休みが始まるのである。 遊びに飢えた魔法小学校のガキどもは、杖を振り回して火球魔法を連射し、ヨダレを垂らしながら校門へ押し寄せる。
その時である。
「キエエエエアアアアア!!」
奇声とともに晴れているはずの空から紫の稲妻が落ちてくる。稲妻は神の裁きの如く、山をも震わすような轟音を響かせ、大地を切り裂いていった。小学生達はちょっとちびった。
「ワシだ」
稲妻を放った張本人が宙に浮いている。サステナブルルン共和国の大統領、ブリーフ・ブリーフソンである。
「この国の夏休みを……中止する」
突然の宣告。小学生も校門で見張っていた先生もその辺の婆ちゃんもカエルをつついていたサラリーマンも皆、目を見開いて驚く。
「ガキどもは明日からも普通に通学して、先公ども社畜どももお盆返上で普通に業務頑張ってください」
理不尽な言葉に一同、キレる。「クソ大統領」「浮気男」「これだからたけのこは」などと書かれたプラカードを掲げて抗議しまくる。
「うるせえ! ワシの気持ちも知らないで!」
大統領はキレた。
「国のトップって大変なんだからね! ただでさえ休みないし、いざ休日になってもマスコミは押し寄せてくるし、急な災害とかで寝ずの対応だってあるし、いっぱい苦労してもSNSではプロフィールに『普通の共和国民です』って書いてる明らかに普通じゃねえ奴等から罵詈雑言浴びせられるんだからね! 貴様らも夏休みを奪われて苦しんでしまえ!」
「お待ちください。お父様」
ブリーフ大統領の前に女性が立ち塞がる。大統領の娘、ホエール・ブリーフソンである。
「そこまでするぐらいなら……お父様も夏休みを取ればいいのです」
「し、しかし……」
ホエールは右腕を水平に上げた。
「そう夏休みを、いいえ、いっそのことオールシーズン……」
ホエールの右腕が突如光り輝く。
「……私が永遠のバケーションを与えてあげますわァー!!」
ホエールの右腕が爆発して、中から何かが現れる。
「アレは……幕末三大兵器の一つ、アームストロング
恐ろしいことにホエールは自らの右腕をアームストロング砲に改造していたのである。ホエールはアームストロング砲の砲身をあろうことか自らの父に向ける。
「何故だホエール!」
「大統領の娘やるのも結構大変でなァー! このところオメーの浮気やら失言問題でマスコミに追われ続けてしばらく寝てねえんだよォー! どうにかなっちまいそうっていうかどうにかなっちまったぜ! オメーを吹き飛ばして終わりに……」
その時である。
「ヒャッハー!」
「山! クワガタ! 女ァ!」
「ジジイとババアの家で掃除してやるぜェー!」
長話に飽きたガキどもが火球魔法をホエールに向けて一斉に放つ。ホエールは火だるまになり、すぐにアームストロング砲の砲弾に引火。
KABOOOOM!!
ホエールはび〇湖大花火大会の十号玉のような輝きを放ちながら爆散した。二〇二三年のび〇湖大花火大会は八月八日らしいです。気になる方はホームページなどでチェックしてくださいね。
黒コゲの燃えカスと化したホエールを目の前にして、大統領は涙を流した。
「娘がそんなに辛い目にあっていたとは。やはり時には忙しさから解き放たれ、非日常に飛び込んだり、ゆったりとした時の流れの中で過ごすような休日は必要。夏休みを中止しようなどと考えていたワシはなんと愚かだったのだろうか」
大統領は夏祭り中止発言を撤回し、娘のホエールとアームストロング砲の蘇生復活のために教会へと向かっていった。
こうして一悶着あった後、クソガk……魔法小学校の学生達は無事に帰宅し、夏休みを謳歌することになったのである。
社会や環境の変化が激しい現代社会において、心身を擦り減らす生活を送る我々も、一度夏休みの価値を再認識し、有意義に活用する方法を考えてみるべきではないだろうか。例えば花火大会に出かけるなどは結構いいと思います。二〇二三年のび〇湖大花火大会は八月八日らしいです。気になる方はホームページなどでチェックしてくださいね。
おわり
夏休み中止のお知らせ ぶらボー @L3R4V0
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