第19話 六花の部屋にて その2

 嗚呼………恋しい。


「女々しい。」


「心読まないで!?」


 当然のように陽は私の部屋にいる。そして当然のように心を読む。


「いや、だってこう………オーラが出てたから。幸せなんだなって。」


「て、言うかなんで私の部屋に?」


「いや、暇だったし。」


「自分の部屋でゲームでもしてればいいのに………。」


「我が姉の恋煩いを見ていた方が面白いものでして。」


「私をエンタメにするな!ドラマちゃうぞ!」


「いやぁ露骨すぎるもんだから面白くて。」


「はぁ………そんな面白いもんでもないでしょ。」


「いいや、面白いよ。姉貴、恋煩いの呟き~ポエムエディション~。」


「何そのタイトルみたいなの………。」


「最早、僕の中では観察日記みたいになってるよ。」


「は?」


「だって家の中で最近独り言多いからさ。」


「そんなに?」


「ふとしたとき、『はぁ、会いたいなぁ。』とか『あぁあ、休日かぁ………。』とか―――――。」


「わかった!わかったからもうやめて!!本当に無理!」


「………夏休みの自由研究に―――――。」


「馬鹿!」


「冗談だよ。」


「やったら家族の縁切ってやる………。」


「はいはい。それで、蓮兄ちゃんとはどうなの?」


 それを改めて言われて、一瞬固まる。


「あぁ、それなりにいいならよかった。前みたいに拗れられても困るから。」


「ちょ、私がめんどくさいみたいな言い方やめてよ。」


「いやめんどくさかったよ?」


「………マジ?」


「ひとつの失恋であそこまで変貌するのは面倒くさいよ。」


「………申し訳ね。」


 と、正論をかまされた訳だが………何だかんだ連れ添ってくれたのも陽だからぐうの音もでない。


「まぁ、いいけどさ。今度はちゃんと落とすんだよ?」


 動揺する………その言葉でやっぱり蓮が好きなんだと自覚させられる。


「………うん。」


 と、そう小さく呟いた。


「やっぱり女々しい。今までのがある分特に。」


「ごめんって。」


「責めてる訳じゃないし。」


「優しいね、陽はさ。」


「優しい訳じゃないよ。この先がどうなるか単純に気になるだけ。」


「傍観者気分か………。」


 とまあ、そんな会話を交わす。何だかんだ陽と言う存在は私にとって偉大なものであり、無くてはならないなと………そう思わされた。


「じゃあ、いい知らせを期待してるよ。」


「お前は私の何なんだ………。」


 まぁ、好き勝手やる部分もあるけど………うん、まぁいいか。


「あ、そうだ。連絡先は?」


「あぁ………あ………。」


 無いじゃん。私、何してんの?


「え、姉貴………。」


 やめて、その『うわー…。』みたいな目をやめて………。

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負けヒロインの幼馴染みと再会したら、闇堕ちして氷の女王になってた。 烏の人 @kyoutikutou

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