第18話 弱さと恐怖と過ち
家から………部屋から一歩も出たくなかった。
「
お母さんの声が聞こえた。きっとこれは、粟垣さんを虐めていた呪いだ。私はこうあるべきではないんだ………全部あいつが悪いんだ。
「………一之瀬………。」
その名は私にとって恐怖と憎悪の象徴であった。あの日、粟垣さんに反抗された日。あのあと私は帰ろうとした。そこで出くわしたのが一之瀬だった。
思いどおりになら無くて少し腹が立っていた私に煽るように彼女は言った。『今までのことは証拠として撮っている。』と。その時は少し焦っただけだった。だけど………あいつは狂ってた。思い出したくもないのにこびりついて離れない。あの痛みを、屈辱を一生涯忘れることはない………だと言うのに、仕返しも出来ないのは私が完全に怖じ気づいているからだ。
あいつの要求を飲んだ私が馬鹿だった。あいつの要求………それは『これから私とつるむこと。』だった。それだけならよかった。あんな浮いた奴でもつるむだけで裁かれないのならそれでいいと思った。だけどそれを飲んだとたん、あいつは私をトイレの個室に連れ込んだ。曰く、今までの懺悔をさせると………首根っこを捕まれ、口に指を入れられた。抵抗しようにもどうにも出来なかった。声など出ない。そのまま私は………吐いた。最初あったのは怒りだけだった。それに任せてあいつの顔を睨んだ。
目の焦点は合っておらず、ぼんやりと笑っていた。喉から、乾いた笑い声を上げながら………また私に襲いかかった。その時にようやく理解した。私はこいつを相手にするべきではなかったと。そして連鎖的に理解する。私はこいつとつるむことになるのかと………こいつの今回の行動を晒したとしてもあの証拠がある以上、不利になるのは私だった。こいつはただの不思議ではない………狡猾で………自分より弱いものを求めている、本当の怪物であるとその時に悟ったのだ。
その一瞬で心が折れた………もう二度と、こいつの顔は見たくないと………。
「あぁ………出来ることなら殺してやりたい。」
何て呟くが、ただの強がりだ。今の私は外に出ることさえ、誰かの声を聞くことさえ恐ろしく感じてしまう。笑い声が………怖い。
そうだ、あのときの私は間違っていた。このクラスを纏めていると勘違いしていた。みんなが私に合わせてくれているだけなのに。だと言うのに、キャラに縛られ己の弱さを隠すために傲った結果がこれだ。
あいつだけは………許せない。私を孤独に突き落としたあいつだけは。
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