夏土用
アズマ60
夏土用
社宅の敷地内に、メゾネット型のアパートメントが三棟並んでいる。
埃の溜まった出窓から隣のB棟が見える。可愛い大きさの可愛い建物だ。外見も間取りも何もかもがここと同じ、幾何学的にも美しい相似の姿。可愛い。可愛い真夏の風景だ。蝉の声が響いている。
社宅はいい。
明るくて治安が良い。
だがここには夫婦を単位にした核家族しか入居できない。一家離散で即退去だ、そういう規則なのだから仕方がない。この美しい社宅には平和で明るく暖かな家族がふさわしい。
皆月は荷物をまとめた。
今日、彼は元妻よりも一足早く社宅を出る。
引っ越し荷物は、新婚旅行で使ったきり沈黙していたキャリーバッグひとつと、頑丈なダンボール箱よっつで済んだ。それでもまだ多い。中年男たるもの荷物なんてくたびれたボストンバッグひとつで充分なのだ、本当は。余計な荷物は脂肪と同じ、白髪と同じ、古いパソコンたちと同じだ。
あなたはどうしていくつもノートパソコンを持っているの、と何度も元妻に文句を言われた。君が同じ成分の美容液を何種類も買ってるのと同じだよと皆月は答えてきたが、それは上手い喩えになっていなかった。皆月にとってのラップトップたちは女の化粧品というよりも、猟師が養う猟犬たちの意味合いに近い。
猟犬たちは秘密の狩猟が得意だ。
たとえばA棟の1号室、経理課の山口係長とその奥さんには悩みがある。十二歳になった息子の反抗期が酷く、両親と口をきいてくれない。家庭内暴力もなく成績も優秀、だが何が気にくわないのか物を言わない。業務連絡はすべて通信アプリの短文だ。舅や姑のアドバイスは根性論の的外れで学校の担任も役に立たない。悩み抜いた夫婦は民間の機関に相談をして、来週が第一回目の親子カウンセリングだ。そのメールのやりとりを皆月はすべて把握している。一方、C棟の営業課後藤くんは同期の同僚木村くんの奥さんと二度まぐわった。浮気でも本気でもなく、玄関先で立ったまま行った挨拶代わりの交尾で、まったく後腐れがない。躰の相性が悪かったのかすぐに自然消滅してしまい、ふたりのやりとりを盗聴していた皆月は憤慨している。もっと泥沼になってほしい。世界中すべてが自分のように不幸になってもらわねば困る。今となっては何の面白みもない盗聴記録も皆月の古いパソコンに蓄積されている。
この可愛い集合住宅に住んでいるご家庭の誰もがみんな少しずつ悲惨なのに、どうして自分たちだけがこんな目に遭うのだろう。
皆月は口を尖らせ立ち上がった。
──この社宅を離れれば、隣人たちの秘密を盗んで蒐集する悪趣味も終わりだ。
元妻はリビングの床に食器を広げている。
これをすべて梱包するのは大変だろう。家事の道具はぜんぶ譲るよなんて言わなければよかった。皆月は少しだけ後悔したが、元妻が退去の苦労を負うのは当然なのだと自分の心に吐き捨てた。
「ぼく、もう出るけど。あんたどうする」
散らかった皿を股越しながら、元妻の顔を見ないように早口で話しかける。
元妻はわざとらしく溜息をついて額に手を当てた。
「あたしはまだぜんぜん荷造りできてないよ。昼から引っ越し屋が見積りに来るけん、梱包も全部お任せのコースでお願いしてみる。掃除して引き揚げてから鍵を返すよ。それでいい?」
「うん。それでいい」
「ベッドもテーブルも家電も全部、ほんとにあたしが貰っていいんだよね?」
「ぼくは新しい部屋が決まるまでいったん実家に戻るし、家具を持ち帰っても置く場所がない」
「それじゃ車は……」
「車はぼくのものだって言ったろ」
「でもヤックンが言ってたの、車の名義はあなただけど夫婦のお金で買って共有してたんだからあたしにも権利が」
「ベッドも家電も譲るって言ってるのに車まで欲しいのか。物乞いかよ。あんたの新しいカレピッピは貧乏くせえな、あんたたちを両親にして生まれるお子さんはバカでド底辺のクソガキ決定だ」
「侮辱しないで。彼と再婚したら今度こそ暖かくて幸せで笑いの絶えない家庭を作ってみせる、それにあなたにはちゃんと相場以上の高い高い慰謝料を払ったんだからもう構わないで」
元妻の声がいきなり高くなる。
「ていうかほんっとに性格悪くて最低なクズ男だよね、悪魔はあなたのほうだよ!」
妙にいい声だった。
パイプオルガンでドミソの和音を叩いたような、何層にも重なって揺らぐメゾソプラノの美声だった。元妻のどこに惚れていたのかと質問されたら、皆月は彼女の声だと答える。今も変わりはない。
「ねえちょっと今からぼくの荷物を搬出するのにここ通るから道あけて」
「お皿やお鍋を股越さないでよ、お行儀が悪い」
元妻の些細な言葉ひとつに皆月の小宇宙は爆発しそうになる。
お行儀が悪いって何なんだ、旦那を捨てた女が何処の異世界のお行儀を語ってるんだ。皆月が彼女を睨むと、彼女もまた皆月を睨んでいた。そしてぼそりと聞こえるように呟く。
「……不妊男のくせに。あなたの精子が使い物にならないって最初からわかっていたら、あたしぜったい結婚しなかった。騙された」
皆月は聞こえないふりをした。
「仕事でも家でもいつもいつもパソコンばかりやってるから電磁波で精子をやられちゃってるのよ」
たとえそのとおりだったとしてもそれが何だというのか。
皆月は奥歯を噛みしめ心で言い返す。
──死ねよクソ女。
ただ、貰うべき額はきっちり領収したので、多少は水に流してやらねばなるまいかなと皆月は迷う。きっと元妻と間男ヤックソ野郎にとっては、この先数年の人生設計に関わる厳しい負債となったはずだ。
負債?
いや、そうではないだろう。
まさか何の文句もなくふたりともがそれぞれきっちりと一括で慰謝料を納めてくれるとは思わなかった。きっと値切ってくるだろうと踏んで、皆月は弁護士を雇い戦闘準備に入っていた。
予期された戦争は起こらなかった。
不倫の二人はそれだけ本気で愛し合っていたのだ。
つまり優しい誰かが多額の慰謝料を肩代わりするほど応援していたのだ、元妻と間男の純愛を。
「……ほんと、どうしようもねえわ」
小石を噛みしめる気分で呻いて、荷物の搬出作業に移った。
駐車場から車を動かして玄関のすぐ前に停める。敷き詰められた石畳の上だ。普段なら隣人が抗議に飛び出してくるところだが、今日に限ってそれはない。隣の若夫婦は資材課とシステム課の職場結婚で、昨日から海外挙式旅行に出掛けている。皆月もシステム課の一員としてふたりに餞別を渡した。
西から熱風が吹き抜けた。
座席三列に七人詰め込めるという黒いワゴン車は、霊柩車に似ている。
こどもができたときのためにこうゆうくるまを買わなきゃいけないんだよォと元妻が言った。元妻はとてもとてもこどもを欲しがっていた。今にして思えばこどもができなくてよかった、だが車は譲ってやらないと皆月は決めていた。
スライドドアを開けて上半身を押し込み、無理な姿勢で後部座席をすべて倒す。意外すぎるほどすんなりとフラットになった。大人が充分に昼寝できるスペースだ。キャリーバッグとダンボール箱を運び入れて、まだまだ余裕がある。
荷物の隙間は心の虚無だ。
何か別の荷物をみっしり詰めたいものだと考えながら頭を動かした拍子に、ドアの縁で頭を打った。
「いでえ」
側頭部を抑えながら背筋を伸ばして首を回すと、視界の端には彼と同じ年頃の中年男がいた。
住人ではない。
左手に握ったスマホを右手で拙く操作しながら社宅の敷地に入り、ひとつずつの棟を眺めている。
このファッキンホットな休日の午前に、ネクタイを締めたワイシャツ姿で脱いだ上着を腕に掛け、剥き出しの小さなスマホを握りしめている。手提げ袋は東京銘菓の土産だろう。この暑さのせいで紙袋が哀れにくたびれている。
出発前に和菓子屋で羊羹を買って長距離を移動したのだろう、おそらく飛行機でも新幹線でもなく長距離バスで。
目が合った。
視線が絡んだ。
中年男は躊躇なく皆月に近づいて、ほんの二メートルの距離で立ち止まる。シャツの脇の下が汗で濡れていた。出掛ける前にはきちんと整えたのであろう白髪まじりの髪も、生え際に汗が浮かんでいる。
「こんにちは。あのう、あのうお尋ねしますが、NK社さんの社宅の、C棟はここですかね? スマホのナビアプリじゃわからなくて」
「はあ」
皆月はこの男に心当たりがある。
*
「C棟ならここですよ。そして皆月をお訪ねならぼくですが」
正解を先回りして驚かせたかった。
「あ、」
声を漏らして中年男はたしかに驚いた。
だが皆月が期待したほどの驚愕ではなかった。
「な、何となく、そ、そんな気がしました。お引っ越しの準備をなさっているように見えましたから。と、とと突然に押しかけて申し訳ありません。山際と申します、あの、名刺、名刺を作って持ってきました」
男は山際と名乗って深く頭を下げ、さらに三歩近寄り、脱いだ上着の内ポケットをさぐっている。
「名刺は結構です」
「もっと、もっと早くお詫びに駆けつけなければと思っていたのですが。──この度は愚弟が、お、奥様にとんでもないことを」
「彼女はもうぼくの奥さんではありませんし、弟さんとの件もすでに金で決着がついていますから。こちらこそいきなり弁護士を挟んで脅迫まがいの交渉をしたりして、ご心配をおかけしてしまいました。大人げなかったと反省してします」
「とんでもないです。わ、悪いのは弟ですから。これつまらないものですが」
そう言って東京銘菓の紙袋を差し出す。
老舗の高級羊羹、お詫びの定番だ。
こんなものをぶらさげてわざわざ長旅するなんて馬鹿げている。このブランド和菓子だって今時は田舎のデパートで買えるのに。
「わざわざすみません。いただきます」
受け取ってみるとずっしり重かった。これをバツイチのメタボ男がひとりでどうやって食べろというのだろう。皆月はちょっと笑ってしまう。
「こんなにご立派な羊羹をいただくなんていつぶりだろう」
「どうしても、あれの兄としていちどお目にかかってお詫びしなければと」
皆月の軽やかな態度と対照的に、相手は腰を直角に折り曲げ背中も汗だくだ。
細身のくせによく汗をかいている。よほどの不健康、もしくは異常すぎるほどの健康体。
さらに緊張しているのか足が震えている。
「暑いでしょ山際さん。立ち話も何ですから場所を変えませんか。せっかくお越しいただいたのですが生憎と今は家にお迎えできる状態ではないし、どこか落ち着いた涼しいところで昼メシでも食べながら」
皆月はなるべく丁寧に、不審な誤解を与えないよう細心の注意を払って山際を車の助手席に誘った。山際はきちんと上着を着直し震えながら乗り込んできた。だから皆月は彼の無防備に感心し敬意をもった。
「山際さん、うなぎ、お好きですか。少し行ったところに店があるんですよ」
「えっ」
「ほら、ちょうど夏土用の週末ですから」
「うなぎは、あのう、すきです」
「この近所では有名なとこなんです。美味いですよ」
車を動かした途端にエアコンから暴風が吹いてくる。
山際がくしゃみした。
「エアコン寒くないですか」
「いえ、いえ大丈夫です。涼しくて気持ちいいです」
ちっとも大丈夫ではないだろう。汗でずぶ濡れのまま強い冷風に当たると風邪をひく。風量を下げた。この男にはなるべく親切に接したかった。
国道沿いのうなぎ料理屋は駐車場に空きがなく、しかも店外まで長蛇の列だ。
休日、昼時、しかも土用だ。仕方がない。
「残念ですがまたの機会にしましょう」
皆月はアクセルを踏んで通過すると車線を変更した。
人間は嘘をつく。人間は裏切る。
皆月はとうにそれを知っていた。
皆月は、少年時代に酷い目にあった。
学校にいくのがしんどかったので、しばらくのあいだ登校をやめた。
総務省のまとめによれば彼のような悩める少年は当時から山ほどいた。けれどひとりずつの心にそっと寄り添う優しいシステムはなかった。自分のことは自分で何とかするしかなく、皆月も再び現実社会に戻るしかなかった。
だから皆月は人間を信用していない。
そのはずなのに、忘れかけた頃に再び降ってくるのが災厄だ。
元妻の浮気が発覚したのは、念願の社宅に引っ越して半年後のことだった。
入居してすぐに妻は社宅暮らしの専業主婦グループに入った。連中は月に何度か社宅女子会と称して集まり、持ち寄った食材でランチや菓子をつくって食べて紅茶を飲む。妻はその会合で、調理や味付けの基礎がなってないと指摘され大恥をかいたという。
悔しいからクッキングスクールに通いたい、と言い出したのがことのはじまりだ。
もちろん皆月は賛成した。昼クラスだと社宅の奥様方にスクール通いがバレるので夜間クラスにこっそり通うことにしたと言われたときも、半年間で妻が料理上手になるのならばと許した。
そうして毎週月曜日と木曜日、妻は夕方に家を出て深夜近くに帰宅するようになった。たかが料理教室にそれほど時間がかかるのかと尋ねれば、クラスの後に皆でカフェバーに寄っているという。このつきあいに混ざらなければ仲間はずれにされてしまうのだという。
やがて週に二度の夜が三度になり、休日には朝から晩まで家を空けるようになった。
そこでA棟に住んでいる課長夫人から「あなたの奥さんマズいことになってますよ」と耳打ちされ、興信所に調査を依頼するとあっという間にすべてが明らかになった。
不倫だ。
相手は隣町の国立大学に勤務する事務員の男、名前は山際、つまりヤックン。
妻とはクッキングスクールで知り合ってお互いに一目惚れしたらしい。
恋に理由はない。
だがセックスには理由がある。
証拠をまとめてから彼女を問いつめると、元はといえばあなたのDVが原因なのよと罵られた。
いったい何がDVだったのかとさらに訊けば、「すべてにおいて愛情表現が足りない」「美容マッサージ器セットを買ったら怒って勝手にクーリングオフした」「生活費以外のお金を渡してくれなくなった」「社宅のババアたちからイジメられているのに助けてくれない」そして「あなたが不妊男だなんて知らなかった」、だから自分は鬱になったと早口でまくし立てた。
あなたと離婚してヤックンと再婚して子供を産むから慰謝料をちょうだい、と彼女は言った。
いやいや慰謝料をもらうのはぼくのほうだろうと皆月が諭すと、目を丸くして、慰謝料っていうのは夫婦が離婚するときに妻が夫からもらう退職金のことでしょ?と言った。
その瞬間、すべてがアウトだと皆月は覚悟した。
もともと人間を信用していないはずだった。妻もその例外にはなれなかった。なって欲しいと願っていたが報われなかった。そもそもの話、盗聴とハッキングが趣味なのにどうして妻の裏切りに気づかなかったのか。本当は気づきたくないから彼女のプライバシーに手を触れなかったのかもしれない。その時点で皆月は判断を誤っていた。
元妻はそういう女だが、ヤックンはごく普通の独身男だ。
興信所の報告では、孤独で冴えないアラサー男だという。アラサーとはいえ皆月よりも十歳以上も若く元妻と同じ年代だ。頼りがいのある年上男がタイプだとさんざ言ってくれた元妻だが、結局、最後は自分と同世代の男を選ぶのだ。皆月は地味に派手に傷ついた。
そんな若さに溢れたヤックンは東京で育った。幼い頃に両親を相次いで亡くしたらしい。
そして年の離れた兄がいる。
「すみません山際さん。ぼくはいいトシしてあまり舌が肥えてなくて、こんなときにお客さんをお連れできるちゃんとした料理屋を知らないんです。うなぎ屋が混んでいたので、後はファミレスぐらいしか思いつかない」
「ファ、あ、はい、ファミレスで大丈夫です、と、いうか私もグルメには疎くて」
話を合わせてくれているのならいい人だ。だがお世辞ではなく山際の本心なのかもしれない。
興信所がくれた書類の一部分を皆月は思い返した。
〝妻の不倫相手には東京で独居している兄がいる〟
〝二十五年前に大学を中退して親の財産を食い潰している無職の兄が〟
もちろん山際はそこまで調査されているなんて知りもしないだろう。
皆月は右折車線に入った。
大通りを曲がればファミレスの看板が見えてくる。
「ぼく、こういう店のカレーが好きなんです」
「あ、じゃ、私もそれにします。わからないから」
「メニューをみて決めましょうよ。ハンバーグなんかもありますよ」
「で、ですね、し、失礼、ふぁぐぢ」
山際がまたくしゃみをした。
両手で握りしめたラルフローレンのハンカチを口に当てる様子が、厳しくしつけられた幼児のようでなぜか愛くるしい。
*
ドリアを頼んだ山際は、ドリンクバー一杯目のコーラを一気に飲み干した。
「ああ、美味い。喉の渇きがとまる」
まるでビールのような味わいっぷりだ。
皆月はビーフカレーを頼んだ。ドリンクバーではアイスコーヒーをグラスに注いだがまだ口をつけていない。
「コーラのおかわりを注いできたらどうですか」
「そうですね」
グラスを手に立ち上がりかけた山際だが、視線を揺らせてすぐに座り直した。
「やっぱり、もうすこし後にします、お客さんがいますから」
ドリンクバーのカウンターには大学生風の若い男女がいて、きゃっきゃとはしゃぎながらジュースを選んでいた。
「そうですね」
皆月はアイスコーヒーを口に含む。
ミルクとシロップを丸ごと投入したので甘く薄く切ない味がした。特に意味もなくストローでかき混ぜ、何となく山際を眺める。山際は何度も振り向いてドリンクバーを気にしている。あの男女がテーブルに戻った瞬間を狙っているのだろう。
新品のワイシャツ、新品のネクタイ、新品のスーツ。
五十近い中年のくせにスーツが似合っていないのは、誰かに見立ててもらったのではなくすべてネット通販で揃えたからだろう。
まず服と靴を買って、ひとりで引きこもっていた部屋を出る。どれだけ勇気が要る一歩だったろう。町を歩いて繁華街に出て、ネットで予約しておいた理髪店に入る。白髪を短く整えて百貨店に入り、地下の奥座に直行して老舗和菓子店の売り子に声をかける。とりあえずいちばん高い羊羹を化粧箱に詰めてもらう。重い紙袋をぶら下げて、何度も今日のことを想定しつつネカフェで夜まで過ごし、遅い時間に出発する長距離バスに乗る。飛行機や新幹線を選ばなかったのは駅や空港の人混みが怖いからだ。
何度も挫けそうになっただろう。嘔吐しそうになっただろう。
それでも山際は部屋を出てきた。こんな遠い場所まで冒険してきた。
しかもそれは自分の為ではなく、クズ弟の不倫のせいで不幸にしてしまった男にただ一言詫びるために。
「あ、あの、皆月さん」
気づけば山際が何度も呼んでいる。
「ドリンクバー、空いたのでちょっと行ってきます。貴重品を置いていきますから、あの、」
「ええどうぞ。お荷物はぼくが見ていますから」
山際が立ち上がってぎこちなく歩いて行く。その背中を見送って皆月は頬杖をついた。
細い背中が、中学時代の自分に重なって見えた。
そういえばと思い出す。皆月もそうだった。閉じこもっていた部屋から久しぶりに外に出て最初に行ったのは理髪店、そしてファミリーレストランだった。連れ出してくれたのは誰だったろう、たしか同じクラスの少年だった。
命の恩人と呼んでもいい人間なのに、もう顔も名前も思い出せない。
ただその少年がファミレスのビーフカレーを食べながら笑って言った言葉だけは覚えている。「皆月くんもさ、家でゲームばかりやってるんだったら、スパイ映画に出てくるような天才エンジニアになればいいのに」……
天才エンジニアにはなれなかったが、趣味で近隣家の盗聴をたしなむ程度の技術は身についた。だがタイミング悪くIT起業の大波に乗り損ね、平凡なサラリーマンになった。埋もれる才能を見いだされることもなく人生の半分以上が過ぎ、妻も寝取られた。どうしようもない半生だ。闘争も革命も何もない半生だった。
「遅くなりました」
二杯目はコーラではなくウーロン茶にしてみました、と山際は言った。
同時に料理が届いた。
皆月のビーフカレーはいつもの味だった。あの日あのとき命の恩人と一緒に食べて笑ったあのビーフカレーと同じ味だった。
山際はドリアを一口食べて「甘くて美味しいですね」と言った。続けて二口食べてから、スプーンを皿に置く。
そして皆月に向き合った。
「改めて心よりお詫びします。弟がご迷惑をお掛けいたしました」
いったい何度目のお詫びだ。
皆月も食べかけのスプーンを置いた。
「何度も申し上げましたとおりもうすべて終わったことです。あなたの弟さんはとうに成人した三十男で、ぼくの妻だった女も自分で責任がとれる年齢だ。調停沙汰にもならず大人同士の話し合いで決着がつきました。こうしてお兄さんが東京からはるばるご挨拶にみえて誠意もいただきました。ぼくも独身から心機一転やり直そうと思っています。社宅からは追い出されますが、とりあえず実家に避難して改めて身の置き所を考えるつもりですからご心配なく」
「ありがたいお言葉です。そう言っていただければ私も少しだけ気が楽になります」
「これから弟さんのところに向かうのでしょう? ぼくの車でよろしければお近くまで送りますよ、どうせ実家に向かう途中ですし」
「いえ、弟とは絶縁しましたから会いません。今夜のバスで東京に戻ります」
ふと皆月は気づいた。
山際の声はもう震えていない。
真摯な態度だ。真摯な男だ。ならば自分も真摯に対応しなければならない。皆月は息を吸う。
「しばらくは絶交という形で弟さんにお灸を据えてもいいかと思いますが、彼らにこどもが出来たときには祝福してやってください。妻は、じゃねえや、元妻はとてもこどもを欲しがっていましたし、あれ自身が幼い頃から親と良い関係を築けなくて、いま話題の毒親ってやつですかね、とにかく今の彼女は実家とも疎遠なんです。彼らにとっていざというときに頼れる親族がいないというのは心細いでしょうから」
「そうですね。実はうちも早くに両親も亡くしてまして」
「ええ、だそうですね」
「弟に聞きましたか」
「いいえ。失礼ながら、興信所に元妻の浮気調査を依頼したときにあなたがたご兄弟についても調べてもらいました」
「それは──そうですね、そういう調査は当然のことです。あなたが要求した慰謝料はあまりにも高額でしたから、あらかじめ弟の身近に全額肩代わりできる人間がいることをご承知なのだと思っていました」
山際はそう言ったきり、再びドリアを食べ始めた。
急に降ってきた沈黙のなかで皆月は視線を動かした。とりあえず彼もカレーライスを口に運ぶ。急に内蔵の奥がぞくぞくしてきたのは香辛料のせいではない。自分がなぜ緊張しているのかがわからない。否、逆に、どうしてこの瞬間まで緊張していなかったのかがわからない。
少し考えてすぐに答えがわかった。
山際が居心地よく扱ってくれていたからだ。相手を気遣っていたのは皆月ではなく山際のほうで、そして沈黙を破ったのもやはり彼だった。
「皆月さん。実は私もあなたを調査しましたよ」
瞬間、やられた、と皆月は思った。
「……そうですか」
ふたりほぼ同時に食べ終えて、それぞれの皿を脇に置いた。皆月はカレー味の唾を飲みこむ。野球の表から裏になる瞬間に似た奇妙な感覚で、喉が強ばっていた。
山際が柔らかく語りかける。
「あなたは東京の大学にいらしたのですね。かなり優秀な成績をおさめて大学院を卒業なさった。それから留学を希望していましたが叶わず、そこそこ名の通った外資系のグループ子会社にエンジニアとして入社した。そこに十五年勤めて退職し、地元に戻って再就職した。退職後の安寧まで保証された順風満帆の大手企業を捨てて生まれ故郷に戻ってきた理由は、ご実家の親御さんの心配と、それから」
「恥ずかしいからもう言わないでください。元妻とネットで知り合ってぼくが勝手にのぼせてしまったからですよ」
山際の言葉を遮って皆月が白状する。吐息の速度で一気に喋った。
情けない話だ。みっともない話だ。
「ぼくは誰とでも良いから結婚したくてたまらなかった。理由は会社の社宅に入りたかったからです。たまたま出会い系で知り合った彼女と電話で会話したらその声がとても可愛かった。この女と社宅で暮らすためなら何でもできると思ったんです。美しい女を手に入れて、可愛い社宅に住んで、そしたら自分が幸せになれるような気がした」
「幸せでしたか」
「もちろんぼくは幸せでした。けれど彼女はそうではなかった。ぼくの傲慢のせいで彼女の戸籍に傷をつけてしまい可哀相なことをしてしまいました、未婚のままあなたの弟さんと出会わせてあげたかったな」
皆月はしみじみとそう語った。
ところが、そこではじめて山際は派手に笑った。
声が高くならないように堪え、頬を赤らめ、それでも抑えきれずにくわっと失笑した。
皆月は瞬目して顔を上げる。
目の前の気弱な白髪男がいきなり猟奇的な連続殺人犯の本性を現した。そんなミステリ映画のワンシーンのようだった。
「──すみません。何やらずいぶんと笑いのツボに入ったようですが、ぼく、何か変なことを言いましたか」
「いえ、」
山際はまだ笑っている。
「調査のとおり、そして私の想像していた通りだ。皆月さん、あなたね、すごくいい。そういうところ、いいですよ」
笑いながらの声はなぜか暖かく、柔らかい。
だから皆月はますます混乱する。その混乱を顔に出さないように苦労した。山際の言葉の真意を理解する努力は放棄した。訳のわからない男が訳のわからないことを言っている。四半世紀も引き籠もっている異常者の戯言だ。もしかすると、こうした厭味のひとつで奪われた慰謝料に相当する復讐をしているのかもしれない。地味な報復だ。だがいい、許そう、どうせ一期一会の関係だ。適当にあしらってこのファミレスを出て車を十分走らせれば高速バス乗り場にも連絡しているJR駅前だ。そこで別れる。それておしまいだ。深い会話をする必要はない。
ところがその思考も見抜かれていた。
「はは、皆月さん、あなた早くこの店を出て私を駅前で捨ててしまおうと考えているでしょう」
図星だった。
大正解だった。
「あなたはね、何処までも自分のことしか考えていない。傲慢だ。自分本位だ。いつでも自分の生存と保護だけを第一に考えて、心がぐらついたら我慢せずに荷物を捨てる。それがたとえどれだけ愛した女であっても関係ない。あなたは自分の不幸を予知したら全力で回避することに躊躇がない。だからあなたは自分の為にならないものには執着がない。あなたは誰の為にも生きられない。実家も会社も友人も恋愛もあなたを削らない。これ以上は私が言う必要もないでしょう。あなたが私の弟に法外な慰謝料をふっかけてきたとき、何て面白いと思いました。そして、すごくいいな、と」
皆月は思わず立ち上がった。
憤怒に似たものが頭の中でぐつぐつと煮えている。
けれどなぜかそれは厭な感覚ではなかった。とすれば憤怒ではないのだ。何だろう。言葉で表現できない。四十年以上生きて、名称を知らない感情に戸惑っている。
「……えっと、コーヒー、おかわり、入れてきます」
「どうぞ。すぐに戻ってくださいね、私のお話はまだまだ続きますから」
「なんだか怖いな」
ようやく冗談めかして本音が言えた。皆月はアイスコーヒーのグラスを手に三歩進み、弾みをつけて、ドリンクバーに向かった。
グラスの氷を交換して再びアイスコーヒーを注ぐ。その間に心を鎮めたかったが、どこから何を考えてどうすればいいのかさっぱりわからない。山際は冷静に皆月の中身を言い当てた。皆月はグラスに溜まったコーヒーの泥水色を眺める。おまえに何がわかるんだと思ったし、どうして何もかも知っているのだろうとも思った。不安でもあり、生まれて初めての安堵も感じた。その安堵とは何だ。
「コーヒーを入れたいんですけど、もういいですか?」
ドリンクバーのマシンを塞いでいたので、背後に立っていた男性に文句を言われた。皆月は無言で男性を睨み返してからグラスを手に背を向ける。露骨な舌打ちが聞こえた。
席に戻ってさらに驚いた。
山際の形態が変化していた。変身といってもいい。スーツの上着を脱いで腕をまくり、ネクタイをだらしなく緩めている。手ぐしで頭をかき混ぜたのかくしゃくしゃの癖毛が現れ、それが白髪に似合っていた。たったのそれだけ、服装をくつろげただけで印象が若返り、溌剌としている。
どこかでみたような気がする。
それはスパイ映画で主人公のためにコンピュータを駆使し秘密兵器を開発する天才エンジニアのようでもあったし、学生時代に起業して巨万の富を築いたIT長者のようでもあった。これが山際の普段の姿で、本性なのだ。同類だ。皆月は今頃になってようやく気づいた。
山際は同類なのだ。
「いきなり変身しましたね」
「すみません。警戒されないようにあなたに親近感を持っていただく工夫をしていたのですが、もうその必要はないでしょう。擬態は疲れました。……ああ、コーヒーどうぞ」
勧められるまでもない。遠慮なんかするものか。皆月は二杯目のアイスコーヒーにもミルクとシロップをたっぷり入れ、余裕をもってかき混ぜる。
「ぼくが調査を依頼した興信所の報告では、山際さんはひとりきりで長いこと引き籠もっている社会不適応者とのことでしたが」
「社会的には死んでおいたほうが楽ですからね。つまり犯罪者なんですよ」
「本当の悪人はそんなふうに自己紹介しないでしょう」
「ふふ。それもそうだ」
山際の声は軽やかで弾んでいる。含み笑いが魅力的だった。そしてバイタリティのある声だ。さっきとはまるで違う。野望に満ちた凜々しく賢い声だ。
元妻の声を初めて聞いたとき、この声が好きだと山際は思った。この女を手に入れたら自分は幸せになれると直感した。
なぜなのか、今、それに近いときめきを山際の声に感じている。
「私は大学を中退してからずっと自宅で仕事をしています。幼かった弟を育てなければなりませんでしたしね。はじめは親の遺産を動かしていましたが、コンピュータの扱いを覚えてからは危ない橋も渡るようになりました。ざっくばらんに申し上げれば優秀な泥棒たちと一緒に盗みをしているわけです。私の〝会社〟をご存知ですか」
そう言って山際は、声には出さず唇の動きだけで組織名を名乗った。アルファベットの全文字をを無作為に並べただけの長い名だ。たしかに皆月も耳にしたことがある。何処でその名を聞いたのかと白状したなら皆月自身も警察に捕まる、混沌の亜空間だ。だから彼は表情を動かさなかった。その沈黙で意図は伝わる。
だがそれは、かつて日いずる国の若きハッカーたちが電脳世界を席巻していた頃に怖れられていた組織の名だ。今では優秀な人材は他所に流れ、人知れず解散したとも言われている。
「最近はもう宗教の違う連中に市場を奪われてしまいましたがね、私は今くらいの規模が身の丈に合って動きやすいと思っているんですよ。いつか逮捕されるか殺されるかのふたつにひとつですがこの道で長年やってきて世界各国に知り合いも増えました。あなたにさしあげたお土産の羊羹屋と同じ、安心と信頼の老舗というわけです。それでもあえて言わせて貰えれば、昔は良い時代だった──戦闘が楽しかったな。なかでも迎撃され窮地に追い込まれた仕事は忘れられません。もう十年近く昔のことになりますが、外資系のZ社は子会社のくせに〝城壁〟が固くて本当に苦労しました。慌てて詳しく調べてみれば天才社員が趣味であの防御壁と迎撃砲を作り上げたのだとか」
皆月は失笑した。
胸が弾んだ。
「趣味なわけがないでしょう。すべてを押しつけられて半年間不眠不休でやったあと入院しましたよ、胃腸に穴が開いて血塗れで。挙げ句ハッカーに攻撃されてもう散々だ。退院後は窓際に左遷されました。新入社員や定年前の中高年社員を集めてパソコン講習の先生をやるだけの簡単な業務を延々と。転職を理由に退職の意向を伝えたときには上司も『ようやく決めたか』と笑っていましたよ」
「あなたは優秀なエンジニアだ、その年齢だが訓練をすればまだ充分にやれる」
「何を」
「私の相方を」
さらりと言ってくれた。
皆月は照れた。
困惑よりも先に胸がきゅんとした。なぜか嬉しかった。これもまた大人げない感情だと皆月は思った。大都会の繁華街でいきなりイケメンに声をかけられ君可愛いねモデルに興味ありませんかとスカウトされた少女の気分だ。そういう場合、本当にファッションモデルとして大成する少女はほんのひと握りだ。残りは薄暗いオフィスに連れ去られ、騙され、女衒に売られる。その先は地獄だ。
皆月の表情を味わい尽くしてから山際は続けた。
「実は、我々はあなたの会社を一年前から調査しています。あなたがたの親会社が入札した大規模港湾工事に関する情報を欲しがっている方がいるもので」
「はあ、そうですか」
「そこで私は、かつて遭遇したあのシステムをアップデートしたプログラムを発見しました。運命だと思いました。すぐに、かつて私をぎりぎりまで悩ませ追い込んだ者の仕業だとわかりました。この広い広い銀河の片隅で再びまた巡り会えた。地方支社から本社親組織のシステムに手を入れて社外秘データをまるごと盗み見ては悦に入るというあなたの邪悪な変態趣味のおかげで、また出会えた。私が捜し出したわけではないんですよ、あなたが自分から私の前に現れた。私があなたを引き寄せたのではなく、あなたが私を引き寄せた」
そうだった。
そうだった。
もちろんだ。そのとおりだ。
皆月も待っていた。いつか自分をここから連れ出してくれる誰かを待っていた。閉じこもっていた子供部屋から連れ出してくれたあの少年の再来を待ち望んでいた。元妻はそうではなかった。そうであればよかったのに。けれどそれも今は許そう。こうしてようやく見つけて貰えたのだ。
「健全な少年を犯罪組織に引き込むとき、まずはどういう手段をとるかご存知ですか」
山際が問うた。
皆月は頬をゆるませる。
「優しく接して心を開き、必要な存在なんだと思い込ませ、社会と訣別させ、やがて町の駄菓子屋に連れて行き万引きをさせる。仲間になるための割礼儀式だ」
「ですよね」
山際はあっけなく頷き、脱ぎ捨てていたスーツの懐から薄い封筒を取り出した。皆月の目の前にそっと置く。
「あなたの〝儀式〟を用意してあります。一週間さしあげますから、私の弟が勤務している大学のシステムに侵入して、医学部不正入試の実態を暴きマスコミに流してください。学長が記者会見で頭を下げた瞬間がゴールです。よろしいか」
封筒の中身は察しがついていた。元妻の不倫相手ヤックンが職場で使っているIDだろう。その名と身分証をつかって内部告発という形をとればマスコミは信用する。そして情報漏洩の濡れ衣を着せられたヤックンは仕事を失う。だがいいじゃないか、失業したって家に帰れば愛する女が慰めてくれる。
簡単な作業だった。おそらく駄菓子屋でチョコレートひとつ盗むよりも簡単にすむ作業だった。だから皆月もまたあっけなく了承した。
「よろしいですよ」
封筒を受け取る。
「山際さん、ひとつだけ、いいですか」
「聞きましょう」
「イエスかノーかで答えてください。ぼくを手に入れるために、ぼくの妻だった女に弟さんをけしかけたのですか」
「逆に、あなたが私ならどうしますか。十年近く胸の中で恋焦がれていた男と偶然に再会したら。その男に妻がいたとしたら?」
言うまでもない。
すぐに引っ越し荷物を片付けて〝儀式〟にかからねば、と考えたところで皆月はふと気づいた。
キャリーバッグとダンボールよっつ、荷物はすべて車に積んでいるのだ。
これからコンビニで封筒と便箋を買い、郵便局の時間外窓口から書留で退職届を送る。溜まりに溜まった有休を消費すればもう二度と出勤する必要もない。退職手続きはすべてメールと郵送で頼むと言い置いて後は何処にでも行ける。
素晴らしいなと思い描き、それでも皆月は山際を信用していない。銀河の隅の太陽系の隅の地球の隅の日本の隅の街の隅のファミレスの隅で、こんなふうに向かい合っている自分たちの表情が滑稽だ。山際が先に笑い、続いて皆月も笑う。そしてふたりで席を立ち、それぞれの会計を済ませて外に出た。
いきなり暑い。
ふと見れば瀕死の蝉が駐車場のアスファルトでもがいている。
山際がにやりと笑ってそれを踏んだ。蝉はぎゃあと啼いて絶命した。皆月は咄嗟に何かを言いかけ、飲み込み、死骸を見て見ぬふりをした。夏土用の陽炎が揺れている。
了
初出:2018年発行同人誌「涅槃にはまだ早い」(絶版)
夏土用 アズマ60 @under60
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます