第12話(終)

 彼女は、すでに夢のなかにいた。夜勤ではないらしい。


「今日も任務?」


「そう。任務こそが俺の全て」


 あれから、結局。よく分からないまま別れた。夢の中は繋がっているので、こうやって夢で会っている。


「しにかけてるときしか夢見ないんじゃないの?」


「しにかけているというか、単純につかれてる。面倒な任務が多い」


「そっか。感情要る?」


「要る」


 彼女から、感情を分けてもらう。ゲームの回復ポイントみたいな感じ。


「いつも助かります」


「あまり無理はしないように。ホスピスに運ばれてきたらわたしがびっくりしますので」


「はい」


 この関係が、いちばん安定するのかもしれない。ときどき、夢で会う程度の間柄。


「じゃ」


「えっもう行くの」


「夢そんなに見ないんだよなぁ」


「待ってよ。さすがにもう少しここにいてよ。わたしまだ数時間寝てるって。夜勤でもないし」


「まぁ、いいですけど。任務自体は終わらせてきたから」


 彼女と会うのは楽しい。それは、夢のなかにいた頃からずっと変わらない。


 終

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

わるい夢 春嵐 @aiot3110

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る