【脳ある鷹は爪を隠す?】

空川陽樹

【脳ある鷹は爪を隠す?】

私は脳ある鷹である。


よく、爪を隠すと聞くが、私が隠すのは爪だけではない。

翼だ。

しかし、翼と言っても、隠すことはできない。

あまりに大きすぎるからだ。

そのため、厳密には、隠すというより使えないふりをするのだ。

翼を怪我して飛べないよ〜

と言わんばかりに。

するとどうだろう。

みな私の周りに近づいても、警戒心が無いのである。

そこを、隠していた翼と爪で襲うのだ。


と言いつつ実はまだ試したことはないのだが。

なので試そうと考えた。

これが三日前のことだ。

そして今日、飛べないふりをしてから3日が経つが、周りには十分に獲物が集まった。

よし、久しぶりに飛んで捕まえるか。

そして翼をはためかせ、獲物に一直線、

のはずだった。

私は空を落ちていた。

翼を動かしているが、バタバタと動かすだけで飛べない。

今まで見下ろしてきた、子供たちがプールで溺れている様と同じだった。

私は落ちた。

いや、堕ちた。

飛べないフリをしていたが、実はもう既にその能力はなくなっていたのだ。


空は朱に染まっている。

私はその赤い海の中で必死に溺れながら、堕ちていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【脳ある鷹は爪を隠す?】 空川陽樹 @haruki_sorakawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る