第3話 白刀
「え?」
剣鞘が俺の手から滑り落ちた。
白く輝く銀色の剣が見えた。
『おうおうおう、ついに抜いちまったか』
男は動揺している、俺がこの動揺が何を表すか理解ができる。
勝てる
「すまないな、簡単には渡せない」
『だろうな、じゃあ死ね。呪術!紅!」
すると途端に周りのさっきまで一面草原の景色だったのに、火が辺りを囲んだ。
『こいつに触れれば火傷どこじゃ済まないな、即死だ』
「そんな危ないの使うなよ」
『大丈夫、俺は効かないんだぁ』
ちっ、狂ってやがる。こいつに勝つにはもうこの剣しか無い。
俺が剣を構えると、男はいよいよ俺に踏み込んできた。
『はっ!死にやがれぇ、呪術!抜魂!』
その瞬間、男の右手に黒い覇気のようなものが宿ったのが見えた。
あれ……ちょっと待てよ、
足が動かないっ!
恐れのせいか、足がプルプルと震え、全くと言っていいほど動かなくなった。
にもかかわらず男は俺に迫ってくる。
俺なのか?ここで戦わなかったら、いつ向き合うんだ?
倒れている彼女を見て、男に対する怒りを思い出す。
(こいつのせいで、彼女が、彼女の命が奪われたというなら)
俺は自分を奮わせて、脚に力を入れる。
『くたばれやっ!』
「ふっ!」
男は俺の体にその右手で触ろうとする。
空気を削ぐようにかすった男の右手は、俺に当たることなく、俺は後ろにバックステップした。
「っと」
『まだまだっ!』
男は次々とその黒い覇気を宿した右手で俺に攻撃を仕掛けるも、俺はなんとか避けまくる。
俺がひと通り避けると男の左足のつま先から、黒い炎のようなものが顔めがけて飛んでくる。
咄嗟に守った右腕に当たってしまった。
(なんだこれ!?痛すぎだろ、あとめっちゃ熱いし!)
当たった皮膚は赤く爛れていて、まるで火傷でも負ったような、そして針を刺されるような半端ない痛みが絶えど襲う。
『あーあ、当たっちまったか』
「これくらいの傷、大したことないね」
患部を押さえながら強がりを言う俺と、それを嘲り笑う男。
そして、男は火でエンチャントされた剣を何もない空間から取り出した。
『俺の得意呪術は炎だが、こうやって自在に操ることができる、剣に纏わせたり、火の球にして遊んだり……こうやってなっ!』
男はそう言うと、火球を俺に投げてきた、
すかさず俺は剣で庇う。
『まあ今からが本当の戦いだ、覚悟はいいか?少年?』
「ああ」
男は炎を纏わせた剣で俺に刺そうとしてくるが、俺は剣で防ぐ。
そう簡単には死なない。
『流石だ。ちなみにその剣、どこから持ってきた?』
「誰が話すかよっ」
攻撃をバックステップで交わし、足先に力を込め、やや体勢を低めに剣を構える。
(くそっ、剣の振り方なんてちっともわかんねえよ!)
最もそれらしく構えたところで俺が戦い慣れていないことがバレルのは時間の問題だろう。
『そうか、ところで少年、お前は今どこを向いている?』
「!?」
さきほどまで奴の方向を確実に向いていたはず、しかし、今向いているのは奴とは正反対の方向。
『どうした、こないのか?』
男は俺を挑発するようにそういうと、少しづつ俺との距離をを詰めてくる。
(足がっ、動かない!?)
とりあえず剣を、剣を、剣を…?
世界最強の魔剣を持つ最弱勇者〜魔剣の奪い合いが起こるので必死に守ってます 水無月のん @nonkundes
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