第16話隆の弁護士論
隆は20代のころから70歳過ぎまで月イチのペースで区役所のボランティアの無料法律相談会には必ず顔を出していた。
「オレはカネのために仕事をしたことなどない」が口癖で。
実際、仕事の八割は手弁当で赤字のボランティアの人助け。残りの二割でほかの弁護士が投げ出したような難しい事件を勝って黒字にしていた。
豪志が、
「法律の勉強をするためにはどうしたら良いか」と訊くと、隆は、
「まずは「法律概論(ほうりつがいろん)」を読め」と言った。
「弁護士は2000年までメディアでの広告宣伝が法律で禁止されていた。現在でもまともな弁護士はテレビ広告なんか出さない。これは弁護士業界の一種の不文律なのだ。だからテレビで宣伝しているのは「過払い金返還請求」だとか「B型肝炎の補償金請求」だとか。ロクなのがいないだろう」
「医者も弁護士も9割はヤブだ。1割もいない真っ当な弁護士を探すことが大事なのだが、一般的にはこのような業界事情はよく知られていない」
山本弁護士にもずいぶん話を聞いたが、
「昔は弁護士といえば神田だったんだ。法律事務所がずらっと軒を連ねてた。いまではみんな麻布や六本木に行ってしまったけどな。歴史の本質を知る弁護士たちはまだ神田にこだわっている者も多い」
「 元検事の弁護士なんて刑事事件しかできないからクライアントは全部ヤクザ。これ弁護士業界小話 」
神田弁護士物語 ponzi @ponzi
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