切ない恋

リュウピー

からっぽ

この世界をぶっ壊したい。と思っていたのはいつからだろうか。


何事も自分の思い通りにいかない、この腐った世界。






俺は昔からずっと一人だった。





 俺の両親は、毎日パチンコ、家にいることはほとんどない。暴力を振るってくることなんて日常茶飯事だ。


ある日、家から両親がいなくなっていた。借金から逃げるために、夜逃げしたらしい。

台所に行くと書き置きがあった。


『母さんと父さんは、ここから逃げる。お前はここに行け手配はしてある』


といった書き置きだった。

どこまでいってもクソな親だ。無責任すぎて吐き気がする。


「このままいても警察のお世話になるだけだ。言われたとこに行くしかないか。」


指定されたとこに行くと、そこはある保護施設だった。周りには同じ年齢のやつばかり。


話してみようとするけど、人を前にすると声が出ない。

そうしておどおどしてると、相手は不審がって逃げていった。


そのまま施設では、変なやつーとレッテルを貼られて、誰も話しかけてこなかった。

馴染めなかったのだ。


正直俺はこのまま生きる意味はあるのだろうかと思っていた。


中学生になってもその気持ちは変わることはなく、何も考えず過ごしていた。


これが俺の人生。そう決めつけていた。




ここまでが俺のからっぽな人生



高校生になり、地元の高校に進学した。

そこは、まるで絵に描いたようなふつーうの高校だった。


そこでも特に目立つこともなく、日だけが過ぎていった。


数ヶ月経ったときふと、自分のクラスに転校生が来た。

ふーんと思って、特に気にしてもなかったんだけど。


でも、その転校生を見た時僕は目を奪われた。



真っ白な髪に真っ白な肌、全てが白い。


触れたらすぐ消えてしまうようなそんな儚さも持ち合わせていた。


この時初めて僕は「この人のことを知りたい」 と思った。


自分でもびっくりした。もう人に興味を持つことなんてないと思ってたから。


そしていきなり転校生は、こっちへ向かって歩いてこう言った。



 『やっと 見つけた…』


ふと顔を見ると涙を流していた。


「君は感情が欠損してるように見えるからね。私が感情というものを教えてあげる」


そう言って、その少女は何も知らない俺にいろんなことを教えてくれた。

遊ぶということを知らない俺を、ゲームセンターというに連れて行ってくれたり

初めて見る、でっかい水たまりのような海という場所だったり

彼女と会ってからは俺の今までの無機質な生活に色がついたような、そんな日々を過ごせていた。



まるで今まで足りなかったものをしていくような…



そして彼女と会って1ヶ月が経った。


しかし最近はどうも体調がおかしい。

彼女と会うたび、話すたびに胸の鼓動が早くなるような、今まで感じたことのない気持ちだった。


彼女にそのことを相談すると彼女は泣き出した。


「そう…遂にこの時が来てしまったのね」 


今にも消えてしまいそうな声で、言った。

正直その言葉の意味がよく分からなかった。


それを問いただすと、彼女は言った。


「私はあなたにそういった感情や体験をさせるためにここに来たのよ。」と


「つまり、あなたが感情を取り戻していくたび、いろんなことを体験していくと同時に私の存在が薄れていくの」


それが私の役目だから と言って彼女はだんだん薄くなって。


彼女は消えていった。


俺はその場で泣き崩れた。


うまった心の穴がまたぽっかりあいていた


彼女が教えてくれた感情というものは本当になければならないものなのかな?


なければ彼女と会う前のあの無機質な生活に戻れるのに…


その時耳元で彼女の声が聞こえた気がした


(本当にそれでいいの?)


(私と一緒に遊んだ時間は楽しくなかったの?)


(自分の人生は他の人の助けが必要な時もあるけど、最後に決めるのは自分なんだよ?)


そうだ、彼女は俺の人生を変えようと思えるきっかけを作ってくれたんだ。


生きる意味を作ってくれたんだ


前に進んでいけば、この腐った世界も今よりは心地よくなるかもしれない。


進めるだけ進んでやる。


自分のためにも彼女のためにも。


























































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

切ない恋 リュウピー @ryupinet1224

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ