黙って僕に甘やかされて

Sigh

エピローグ

初めて彼女の髪に触れた時

彼女は僕の胸の中で、他の男の名前を呼びながら泣いていた。



雪みたいだと思った。


想像よりも遥かに柔らかくて、か弱くて、触れたら消えてしまいそうで。


真夏の夜にただ彼女の泣き声だけがしんと、深く深く僕の胸に刺さった。


その痛みを、僕は今でも思い出すことがある。


思い出そうとしなくても、夢に出てきてしまう。


瞼の裏で消えていく残像を覚えたのは、一度や二度じゃなかった。


香りすら思い出せるようで、本当ずるいよなぁと思いながら、白い朝にひとりでに涙が出てしまう。


僕らの始まりは、4年前の春だった。

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