第4話 10 YEARS AFTER
成人式の日から10年がたった頃、同窓会の案内が来ていた。
ただ、そのころには俺も結婚していたし過程もあって忙しかったので不参加に○を付けて返信してそのことはすぐ頭から消し去っていた。
結婚相手は広田ではなく大人になってから趣味を通じて知り合った子で、尻に敷かれながら日々を慌ただしく過ごしていた。
イチガキ含めて今でもやり取りの続いている友達の中でも同窓会に参加した奴はいて、その後の広田の事を少しだけ斬った。広田は×がもう一つ増えて、女手一つで仕事に家事に育児と頑張っているらしい。同窓会に俺が来ていない事を残念がっていて、イチガキを通じて俺に連絡先を寄越してきた。
そのメモを受け取った後、何日か考えた後で俺はそれをシュレッダーにさした。広田の連絡先は紙の束の中に消えて、もう知る由もない。
今の俺はあの頃の続きでは無くて、自分の家庭がある大人になった。だからそれに手いっぱいで、過去の事は過去にしていかないと毎日に押しつぶされてしまうから。
広田がどんなつもりで、何の糸があって俺に連絡先をわたしてきたのかもわからないままだが、それでいいと思った。今の俺にはこの家の中の妻子で手いっぱいだから。
だから広田との甘酸っぱい記憶は甘酸っぱい記憶のままにして、思い出のアルバムに閉じることにする。
大人になるというのは哀しい事、なんてどこかできいたセリフを思いながら、俺を呼ぶ子供の声に返事をするのだった。
あの時、君に恋していた。 サドガワイツキ @sadogawa_ituki
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