分かった。認めるよ。
高校一年の、夏休み初日。何かしようと考えてから、私は、今までずっと気になっていた、『ナッカ』の出演映画を見てみようと思った。
きっと、それほどメインの役でもないのだろうけれど。もしかしたら、通行人程度の出演かもしれないけれど。私は、彼の映画を見てみたかった。
一人で見るのはなんとなく勇気が要ったので、私は莉愛を呼んだ。彼女は、疑いもせず、直ぐに来てくれた。
『ナツメ先生、どうしたんですか?』
心の準備も満足にできないまま、私は彼の声を、姿を見た。前まで見続けてきた彼の声とは、画面越しのせいなのか、少し違うように聞こえた。
『先生、今は、待って。』
張り上げた声も、呟くような話し方も、全てが、新人特有の安っぽさなんてなくて、寧ろ大御所の貫禄さえおぼえた。
彼は、今まで見たことがないくらい、キラキラしていた。演技が抜きんでて上手いとか、顔が特別いいとか、そういうことではない。
ただ、やりたいことをやって、やるべきことを全うして、凄く楽しんでいるように見えた。
輝きたいと、願っている人の顔。それが、妙に愛おしくて、そして、彼は本当に、輝かしかった。
もう、彼は輝きの端を掴んでいる。そう理解すると、自然と、涙が落ちた。
自己肯定感の欠片もない私の顔見知りが、ここでは自信に溢れているように見えて、居場所を彼が見つけたんだと理解した。
輝こうとする彼に、たった一言、言いたくなってしまった。
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