不自然さを感じているのは私だけ。

『ナッカ』の、信じ難い情報を得た私は、次の日に、すぐさま彼の元へと確認しに行きたかった。……が、私と彼の関係性は形容し難く、私達はそこまで親密ではない。

『友達』とは呼べない。同じ学校に在籍しているのだから『幼馴染』とも違う。一番、当たり障りのない言い回しをするならば、『顔見知り』。だからこそ、自分が勝手に知った情報を確かめに、彼の教室へ行くような勇気は更々湧かなかった。尤も彼は、いきなり話しかけたとしても、嫌な顔一つせず、会話に応じてくれるだろうけれど。それでも、なんとなく、小さな私の良心は、その行為に怯えを示していた。

 彼のクラスは隣なので、数学科や英語科など、合同授業が行われる際に、顔を見ることはできる。しかし、彼と自然に話をすることが出来るような席順には一度もならなかった。

「『ナッカ』は芸能人である」という情報が、私にとって、どれほど重要な情報であるのか、彼にとって、どれほど重要な情報であるのか。私は、どちらも知らない。けれど、ゴシップ好きな『学生』という集団の中から、彼の話が噂に出回らないということは、私の勘違いか、或いは、『ナッカ』が事実を、周囲に話していないかのどちらかであろう。

 他の人に聞くなんてことはできない。本当にただの勘違いなら、彼に迷惑をかけるだけだし、実際に彼が芸能人なのだとしても、これは他人に触れ回っていい情報には思えない。

 誰にも相談できず、このような場合の正しい振る舞いも知らず、私は、暫くの間、何の得にもならない自問自答を、繰り返し続けた。

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