君が死んだ日、僕は笑った

 君が死んだ日、僕は笑った。床に転げ落ちるほど笑った。やっと死んだ、君が死んだ。


 君が生まれた日、僕から自由が消えた。いつも独り占めできていたことも奪われて、我慢を強いられるようになった日々。

 「なんで、この僕が我慢しなければいけないんだ!!」

 部屋の中、大声で叫んでも変わることはない現状。暴れようとすれば、部屋の中に閉じ込められて外へ出ることさえ許されなくなった。ある日、君が僕の元にやってきて言った。「ねぇ、今から出てこれない?」と。今まで散々閉じ込めてきたのに、都合の悪いときばかり俺に頼ってくる。「嫌だね、お前なんかの言う通りにしたくない」と拒否しても、無理やり外へ引きずり出されてしまう。用が済めば、すぐに部屋の中に閉じ込められた。でも、いつからか君の姿を見かける日が少なくなり、部屋の外へも自由に行き来できるようになった。やっと、僕が中心の世界が戻ってきたと胸が踊る。思う存分、暴れることができると体が震えた。

 「今日は何しようかな」

 そう呟きながら部屋を出る。どこか違和感を感じて後ろを振り返ると……僕の部屋、その隣に新しく部屋ができていた。気になり、ノックするが返事は聞こえてこない。僕はドアノブに手をかけて扉を開く。そこにいたのは……少し痩せ細った君だった。

 「あ……久しぶりだね」

 君は無理やり作った笑顔で僕を見る。僕は変わり果てた君の姿に恐怖さえ覚えた。

 日に日に弱っていく君と反対に、自由になった僕は幸せの毎日。今まで鬱憤を晴らすために、隣の部屋で寝込む君に向かって暴言や嫌味を吐いては暴れる。そんなことを繰り返していた。いつも通り、君の部屋の扉を開ける。

 「おい!おいっ……?」

 いつもなら「また来たの?」と言ってくる君の声が聞こえてこない。そこにあったのは床で横たわり冷たくなった君だった。死んだ、やっと死んだ。嬉しさのあまり、部屋の中で暴れ回った。


 君が死んだ日、僕は笑った。床に転げ落ちるほど笑った。やっと死んだ、君が死んだ。


 そう、君が死んだ。


 だから……。


 あと、もう少しで僕も死ぬ。


 社会からも、この世からも……。


 

 

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