この空の下で
「この広い空の
私はこの言葉を忘れることはないだろう。遠く離れた、あの日から毎日のように思い出す。笑い合っていた幼き日々を……、夢を語り合った青春の日々を……。
夢を見つけて走り続ける彼の姿はとても輝いていた。そんな姿が私の背中をそっと押してくれた。
いつからだろうか……。決められたレールの上を歩き続けることが自分の人生だと思っていた。親の言うことを聞いていれば幸せになれるのだと。でも、それは違った。期待に応えようと頑張るたびに……幸せとは程遠くなり、私の隣で楽しそうに夢を語る彼に羨望する日々ばかりが過ぎていく。
面白みもない人生の途中、子供と大人の狭間で生きる青春時代。彼が初めて私に夢を語った。
「俺は世界を見てみたい。だからパイロットを目指して勉強しているんだ。この小さな島国で何も知らずに生きるのは嫌なんだ。もっと人生を楽しみたい!」
輝く瞳に照らされて、私の心に光がさす。私も彼のように自分の為に生きてみたいと。親の反対を無視して、幼い頃からの夢を目指すことに決めた。幼い頃からの夢……、それは女優になること。初めてドラマを見た時、テレビの中で動く女優に目を奪われた。私もテレビの中で輝きたいと、そう思った。何度も女優になりたいと言おうと頑張った。でも、両親には逆らえない。私の両親は厳しい人だった。夢を語ることを嫌い、安定した道を行けと何度も言われ続けた。その度に女優になりたいという夢を心の奥にしまい込んで、必死に笑顔を作った。そんな日々とはもうお別れ。私は私の道を行く。私が輝ける未来を創るために。
もちろん、決められたレールから外れた日々は大変だけど……それ以上に幸せだった。少しずつ増えていくテレビ出演。主役を貰えた時は涙を流した。そんな私が私の道を歩む中、彼もパイロットになった。そして、彼は「もう会えなくなる」と言った。寂しくなる気持ちを押し殺して「大丈夫。頑張ってね!」と無理やりに作った笑顔。そんな私の気持ちを見透かして彼は空を見ながら笑顔で言った、あの言葉を。
きっと今でも空を飛び、彼は世界を見ているだろう。
そんな彼にいつか言いたい。
「私達を繋ぐ空の下で、私も夢を叶えたよ!」
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