コミュ障な赤ずきんと親切な狼

神城愛菜&電風波春

コミュ障な赤ずきんと親切な狼

むかしむかしある村に小さな女の子が居ました

お気に入りの赤い頭巾をつけたいたので赤ずきんと呼ばれていました。

しかし赤ずきんは

「えっと……お母さ…ん……その…」

コミュ障だった。

いや、これでは語弊があるかもしれない。

ただ単純に人見知りが激しいのだ。

そして彼女は自分の気持ちを素直に言葉にして伝えることが苦手だ。

だから友達も出来ず、いつも1人で遊んでいた。

そんな彼女だったがおばあさまには懐いていたようで

よく家に来てお菓子を食べたりしていたらしい。

そんなある日の事だった。

赤ずきんがおあばさまの家に向かう途中の森で狼とあった

赤ずきんは怖がっていたが狼はとても親切だった。

「お嬢さん、この森は危ないですから、早く出たほうがいいですよ。」

「えっと……あの……」

「?」

「こっ……ここどこですか?」

そう、赤ずきんは方向音痴でもあった。

狼は少し呆れながらも丁寧に教えてくれた

「なるほど……ありがとうございます。私ったら道を覚えられなくて……」

「いえいえ、大丈夫ですよ」「あっそうだ!これ良かったら食べてください!」

そう言って彼女はカバンの中からクッキーを取り出した。

「これは……良いんですか?こんなものまで貰ってしまって」

「はい!それじゃ私はこれで失礼しますね」

赤ずきんはペコリとお辞儀をしてその場を去った

そして、おばあさまの家に言ってその話を伝えた。

「あらそうなの?そりゃあすごい」

「あ…おばあさま…。」

「あ、そろそろ時間だねぇ、お母さんも心配してると思うよ。」

「い…行ってきます」

そうして彼女は出発した 森の中に入ってしばらく歩いていると狼が現れた。

「あ、さ、先程は…その…助けて…頂いて……あり……がとうございました……」

「いえいえ、それより気をつけてくださいね。最近は特に物騒なようですから。」

「は、はい!」

「それと……もしよろしかったら今度一緒にお茶でもどうですか?」

「え!?わ、私なんかで良ければぜひ!!」

(まさか異性の方から誘われるとは思わなかった)

「ふふ、楽しみですね。ではまた会いましょう」

そう言って狼は去っていった。その後無事に家にたどり着いた赤ずきんはお母さまに伝えた。

するとお母さまはとても喜んだ。

「まぁ!それは本当かい?」

「う……うん」

「あんた本当に優しい子だねぇ……今日はご馳走だよ!!お父さんにも伝えておくれ」

「わかった」

そうして赤ずきんは家族みんなで楽しく過ごした後眠りについた。

次の日

赤ずきんは再びおばあさまに会いに行った。昨日の事を話すためだ。

そして森の途中で誰かに口元を押さえられて意識を失った

目が覚めるとそこは知らない部屋で赤ずきんはベッドに横たわっていた。

「ここは……一体……」

すると狼が来て

「目が覚めたんですね、良かった…」

「あ……わ、私は、いったい…」

「森の中で倒れたんですよ。覚えていませんか?」

「……」

「やはりまだ無理はしない方が……」

「あ、あなたが…私を……その…助けて…くれたん…です…か…?」

「えぇ、そうですよ。」

「そ、そうなんです…ね……あ、ありがとう…ござい…ます……」

「いえいえ、困っている人は放って置けませんから。」

「す……すみません……」

「それで、その……私の家で休んで行かれますか?」

「いっ……いえ……そこまで迷惑はかけられません……ので……」

「そうですか……残念です……」

それから数日が経ち 狼の家の前で赤ずきんは狼に別れの挨拶をしていた。

「あの……今まで色々とありがとう……ござい……まし……た……」

「あらもう行くのかい?もう少しゆっくりして行きなさいよ。」

「いえ……これ以上長居するわけにはいきませんので……」

「そうかい、それなら仕方ないね」

「はい……本当に……ありがとう……ございます……」

「こちらこそありがとうね。赤ずきんちゃん。」

「はい……それでは……さようなら……」

そうして赤ずきんは歩き出した

しかし狼はその背中を見て何かを思い出したように声を出した。

「あっ……!そうだ……!あの……これを……」

そう言って狼が取り出したのはクッキーだった。

「これは……?」

「こないだのお礼ですよ。ほんの気持ち程度なので……あまり期待しないで下さい……」

「え……そんな……受け取れませ……ん……」

「受け取ってくれると嬉しいのですが……」

「……わかり……ました……」

「良かった……!ありがとうございます!」

「いえ……では……私はこれで失礼します……」

「はい!道中お気をつけて!」

こうして狼の家を出た赤ずきんだったが、森に入った瞬間またもや道がわからなくなった。

「あれ……?ここどこだろう……」

「……!……さん!……赤ずきん……さん!」

遠くの方から誰かの声が聞こえてくる。

「……!……きてくださーい!」

その声は次第に大きくなっていく。

「赤ずきんさん!!」

「え!?」

目を開けるとそこには見知った顔があった。

「あ……オオカミ……さん……」

「やっと起きましたね……良かった……」

「え……?どうして……ここに……」

「たまたま通りかかった時に倒れている貴方を見つけましてね。急いで家まで運びました。」

「そっ……そうなんですね……ごめんなさ……い……」

「いえいえ、大丈夫ですよ。それより体調はいかがですか?」

「は……はい……だいぶ良くなりました……ご心配をお掛けしました……」

「それはよかったです。では私はこの辺で……」

そう言って立ち去ろうとした時 赤ずきんは無意識に彼の手を掴んだ。「!?ど、どうかされましたか?」

「あ……えっと……その……」

(なにやってるんだろ私……)

(いきなり手を掴まれるとは思ってなかったぞ……。どうしたのかしら?)

「あの……少しだけお話ししませんか……?」

「はい?いいですけど……」

「ではそちらに座ってください。今お茶を入れますので。」

「あ……ありがとう……ございます……」

そうして2人でテーブルに座り話を始めた。

「それでお話というのは?」

「あ……その……私……1人暮らしで……毎日寂しくて……だからあなたとお話ができて楽しかったというかなんと言うか……えっと……」

「つまり私と友達になりたいと?」

「はい……」

「ふむ、そういうことでしたら喜んで。」

「え……良いんですか……?」

「はい、もちろんです。」

「ありがとう……ございます……」

「いえ、こちらこそ。」

そうして2人は仲良くなった。

そして時は流れ ある日の朝 2人が朝食を食べていた時のこと

「そういえば最近森に美味しいきのこが生えているのを知っていますか?」

「いえ……知りませんでした……」

「そうですか。それなら是非食べてみて下さい。とても美味しいですよ。」

「はぁ……」

「まぁ、無理にとは言えませんが。」

「いえ……せっかくなので……いただきます……」

「そうですか。では早速取りに行ってくるので、留守番お願いしますね。」

そう言い残し彼は出ていった。

しばらくするとバンッ!!!大きな銃声が鳴り響いた。

音を聞いた赤ずきんは慌てて外に出た。

そこには、無惨にも血を流し倒れている狼の姿があった。

「あ……ああ……」

赤ずきんはその場で泣き崩れた。

「うぅ……ぐすっ……どうして……私……何も出来なかった……助けられなかった……もう誰も失いたく無かったのに……」

その時赤ずきんは決意した。

「……許さない」

それからしばらくして 赤ずきんは狼の家を後にして、森の中にある小さな小屋に向かった。

「よし……着いた……」

ガチャリ ドアを開け中に入ると そこには猟銃を持った男が立っていた。

「ん?誰だお前?」

「…………」

赤ずきんは手に持ったナイフで男を突き刺した。

ドサッ

「はぁ……はぁ……」

赤ずきんは息を切らしながら男の体を漁り、目当てのものを見つけた。

「あった……」

赤ずきんが手に入れたもの

それは狼を撃った弾丸だった。

「これで……また一緒に暮らせる……!」

そうして赤ずきんは微笑み、その弾丸を猟銃にいれて、それを頭に向けて構えた。

「狼さん……今行くよ……」

そう呟き引き金を引いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

コミュ障な赤ずきんと親切な狼 神城愛菜&電風波春 @kamisiro_denhuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る