第4話 母と子
「本当にこれでよかったのだね?」
ガルガーリンがセラフとケルヴィに問う。彼はリタのことを心配していた。いくら娘をほっとけないと思っても、相手は悪魔だ。死亡率は高すぎる。
セラフはガルガーリンがいる方へ振り返る。
「リタ・ランベールの自分の子供を想う気持ちはとても強い。あの声、あの感情。彼女は本気だったのです。
次にケルヴィが言った。
「ガルガーリン。
ケルヴィは右の拳に力を入れた。
「あいつなら、必ずやり遂げられるさ。」
「ほ、本当にジャンヌ・ダルクなんだ。メルカバー…?シュプ…ってか、天使とか悪魔とか、死後の世界って本当にあるんだね。それと、キュリオは確か、ゲームセンターの前で悪魔に襲われたのよね!?」
ジャンヌ、リタ、そして騎士天使たちの四人はキュリオが悪魔に襲われたというゲームセンターに走って向かっていた。ジャンヌは向かっている途中に、自身がジャンヌ・ダルクであること、メルカバー、天使や悪魔のことなどをリタに話した。
「はい。急ぎましょう!あ、あの、私がジャンヌ・ダルクだったこととか、メルカバー、悪魔、天使のことはあまり他の人に言わないでもらえませんか?その…他の人たちは信じないかもしれないっていうか…」
「言わない言わない!大丈夫だよ!ってか…」
「え?」
「貴方たち、怪しまれない?」
リタは騎士天使たちに話しかけた。鎧を着た剣を背中に装う者たちが街中を走っている光景はかなり不思議だろう。彼女は少し気になっていた。
「あぁ、ご安心を。我々天使は他の人に見えていませんから。」
「ジャンヌちゃんは?」
「見えてます。」
「え!?」
リタは苦笑し、ジャンヌは驚きと共に恥ずかしさを感じた。周りの人は皆、重い鎧を着たジャンヌを不思議そうに見ていた。
「み、見えなくすることって…」
「可能でございます。」
「お願いします!」
しばらく走っているうちに、ゲームセンターの前についた。ゲームセンターの入り口前には、謎の黒い靄のような物が浮いていた。
「あれは…!?」
「悪魔がいる証拠ですね。ジャンヌ・ダルク様。お持ちのシュプリームでそれを切り裂いてください。」
「は、はい!」
ジャンヌはシュプリームを引き抜き、縦に大きく振り落とした。すると、靄は人並みの大きさになり、さらには謎の穴が開いた。
「この中に悪魔がいます。リタ・ランベール様。ここからはどうかお気をつけて。」
「わかったわ天使様。」
リタにそう忠告した騎士天使の一人の視線がジャンヌに向いた。
「ジャンヌ・ダルク様。グレモリーを除いて、現代に降り立ってからの初めての悪魔との戦いになるでしょう。何かあれば援護いたしますが、メルカバーとなった貴女は人々を守る為にも、なるべく一人で戦うことを推奨します。覚悟は決めましたか?」
ジャンヌは深呼吸をして、騎士天使の問いに答える。
「はい!」
「危ない!」
その声が聞こえた直後、キュリオはとある森の中に立っていたことに気づく。彼女は気づいていないが、背後には倒れた木々、そしてそれに押しつぶされたボロボロの車があった。車内の窓には赤いシミがついていた。そして、前方には謎の人影が立っていた。
「夢…?」
キュリオはボソッとそう呟く。人影はだんだんキュリオがいる方へと近づく。
「誰なの?」
人影はくすくすと笑い始める。
「君、今、幸せですか?」
「え?」
「聞こえなかったでしょうか?君は今幸せかと聞いています。」
「すごく幸せだよ!ゲームは楽しいし、それに昨日、ジャンヌさんって人が来て、それからそれから、お母さんと映画とかアニメを見たり…」
「お母さんですか?貴女は、お母さんのことをどう思っています?」
「自慢のお母さ…」
その時、人影は大きくなり、キュリオの顔をまじまじと見つめる。
「死ぬ前に、貴女のお母さんのことについて教えてあげましょう。」
キュリオは恐怖した。人影からは赤い目がギラギラと光り、奇妙な瞳は彼女を写していた。そして、人影の姿は、人狼へと変貌した。
「あの女は、貴女の母親ではございません!!」
人狼が叫んだ瞬間、キュリオに鋭利な爪で斬りかかろうとした。その時、何者かが人狼に蹴りを繰り出した。
「グハァ!!」
「え…?」
それと同時に、森の中は謎の青い空間へと変貌した。そして彼女の視界にリタが映る。
「キュリオ!」
リタはキュリオを抱き抱え、ジャンヌと人狼から離れた。しかし、リタを狙うように現れた黒い物体が近づいていた。
「っ!?」
その黒い物体は、騎士天使たちに防がれた。黒い物体を放った正体は不適な笑みを浮かべたグレモリーだった。
「お母さん…?何が起こってるの?」
「話すと長くなる、かな。とりあえず、ここから…」
「させません!」
人狼が恐ろしいほどのスピードでキュリオとリタに近づき、爪をぎらつかせ、切り掛かる。だが、ジャンヌに先を越され、斬撃はシュプリームによって弾き返された。
「マクスウェル!ジャンヌ・ダルクは私がなんとかしようと思うんだけどー!彼女を悪魔化させたいから!」
「餌が先です!!あぁ気が散るっ!!貴女は少し戻ってくれませんか!!?どちらも私が片付けておきますから!!」
「わかったわかった。でもジャンヌは殺さないでよぉ!」
すると、グレモリーはギガスを取り出し、開く。彼女の背後に黒い穴が現れた。
「なっ!?」
「また後でねぇジャンヌ・ダルクゥ!次会う時は貴女が悪魔になってるかも!キャハハハハ!!」
グレモリーは高笑いをしながらその穴の中に入り、姿を消した。ジャンヌは光技を使用するが、その穴は消えた。
「どこを見ているのですか!?」
背後から襲い来るマクスウェル。刺突。回避。そしてシュプリームによる斬撃をジャンヌは繰り出す。マクスウェルはそれを間一髪で避けた。そして強烈な踏み込みを見せ、長い爪でジャンヌの左腕を切り裂いた。
「くっ!!」
彼女は痛みの反動でシュプリームを落とす。急いで拾おうとするが、マクスウェルにシュプリームを蹴り飛ばされ、更に背中に蹴りを繰り出され、地面に叩きつけられた。
「利き手に傷を負えば、その剣はもう使えまい。」
その瞬間、マクスウェルに向けて二つの光線が放たれた。マクスウェルはそれを回避した。リタの護衛に付いていた騎士天使たちが援護射撃を繰り出していた。
「大人しくしてもらいましょう…!!」
その時だった。マクスウェルの首がほのかに光ると、突如マクスウェルの体はバラバラになり、爪、腕、脚はキュリオ、リタ、騎士天使たちを囲み、首と胴体はジャンヌへ近づき、左腕に噛み付き、彼女ごと浮遊する。
「がっ!!」
「ジャンヌさん!!」
騎士天使たちが援護しようとするが、マクスウェルの爪による斬撃が行手を阻む。
「愚かな騎士天使の方々、そして人間のお二方。ジャンヌ・ダルクを殺されたくなければじっとしてもらいましょう。例え一歩でも動けばこのオルレアンの少女を殺す。」
「何をする気だ…?」
マクスウェルはニヤリと笑う。ジャンヌの腕の血が口から滴り、その顔の気味の悪さが増した。
「キュリオと言いましたねぇ。私が見せた幻覚はどうでしたか?」
「幻…覚?」
「あぁ失礼。」
マクスウェルの掌が大きく開くと、そこには“赤い斑点”のような紋章が書かれていた。
「成功する確率は低いですが、私はこの手を使って相手に幻覚を見せること、そして対象に見せた幻覚、そして記憶を映像として再現ができます。夢に似たフィクションを作ることも、実際に経験した出来事も見せることができます。さぁここで問題です!!私が君に見せたのは、
本物か偽物か、さぁどっち?」
キュリオは混乱していた。この空間、ジャンヌ、騎士天使たち、そして、目の前にいる悪魔。意味不明な状況に混乱しつつも、マクスウェルの質問に答えた。
「に、偽物?」
それを聞くと、マクスウェルの顔は更にニヤつく。
「フフフフフフフ。では、その答えは…」
マクスウェルの右肩に書かれた顔のような紋章が光る。その光は平行四辺形の形になり、スクリーンのようになっていた。
「っ!?」
リタは何かを察した。
「やめて…!お願い…!」
「お母さん?」
スクリーン状に映し出されたのは、一台の車が山道を走っている映像だった。何もおかしいところはない。だが、ここから異変は起こり始めた。走行中の車の付近に大きな落石が落ちた。車は思わず大きく右に曲がる。その車はガードレールを飛び越え、数百メートルもある山道から落下した。
「っ!?」
映像は移り変わり、倒れた木々に潰された車が映し出されていた。映像は数秒ほど経つと、その車に何者かが近づき、スマホを取り出して電話をする様子が映る。その人物に、キュリオとジャンヌは見覚えがあった。キュリオはボソッと呟く。
「写ってる人って…お母さん…?」
間違いない。髪型は違うが、その人物は確実にリタだった。次に映像が変わると、病院のベッドで少女が寝ている様子が映し出された。その横には、医者と話しているリタが写っている。おそらくだが、今寝ている少女はキュリオだ。数秒後、起きたキュリオにリタが話しかける場面に変わり、そしてリタの声が聞こえた。
「忘れちゃった、かな。私は、貴女のお母さん。」
その瞬間に映像は消えた。キュリオはリタを見る。彼女の顔は真っ青になっていた。
「リタさんは、キュリオちゃんの親じゃない…!?」
マクスウェルはジャンヌは振り落とし、彼のバラバラになった体は元通りになった。
「キュリオ・ランベール。君は両親と山へ出かけた時に、落石が落ち、運転席にいた父親はパニックになった。そして、ガードレールを越えて、君の両親は死んだ。だが奇跡的に君だけが生き残った。同じく山登りに出かけていたリタ・ランベールが君がいた車を見つけ、病院、警察に連絡し、キュリオは搬送された。生き残ったのはいいものの、彼女は事故の衝撃か、記憶喪失になってしまった。リタ・ランベールはキュリオを悲しませないために、自身を母親と名乗った。」
淡々と喋る口をマクスウェルは止めた瞬間、自身の両手を分解し、その手は恐ろしいスピードでキュリオとリタを引き離して自身の顔面までに近づける。
「キュリオ!!」
マクスウェルはキュリオに両手の赤い斑点を見せた。その瞬間、キュリオはバタンとその場に倒れ込んだ。彼女の呼吸は荒くなり、何かに怯えているようにブルブルと震え、苦しそうな声を上げる。
「何をしたの…!?」
「少しキツめの悪夢を見させています。彼女の両親の様々な死に方を見せています。自殺、焼死、圧死、溺死…」
その瞬間、リタはキュリオに急いで駆け寄り、彼女を悪夢から目覚めさせようとする。
「キュリオ!!お願い!起きて!ねぇ!!」
キュリオは中々目覚めない。リタの目から涙が溢れてくる。
「私は貴女を悲しませたくない…!もうあの時みたいに…貴女の本当のお父さんとお母さんが死んだ時のような辛い目に遭わせたくないの…!」
リタはキュリオの母親ではない。だが、両親を失ったキュリオを幸せにしたいという思いから、彼女らは母と子として共に暮らしていた。
きっとキュリオは夢から覚めた頃には、母親と嘘をついた自身を忌み嫌うだろう。
しかし、リタはそれでも良かった。何故ならキュリオが生きているだけで嬉しい。
このままキュリオが助かるなら、今目の前で自身を爪で引き裂こうとしている悪魔に何をされようと構わないと。リタはそう決心すると、キュリオの頬の手を優しく添えた。
「ごめんね…キュリオ…。」
マクスウェルはニヤリと笑い、リタに向けて爪を振り下ろした。
『カンッ』
ジャンヌはそれを阻止した。自身がマクスウェルに噛まれた腕で。
「こいつ…!?」
「ジャンヌちゃん!」
ジャンヌはマクスウェルの腹部に蹴りを入れた。
「かはっ!!?」
マクスウェルは怯みながらも体をまた分解させた。
(この女がさっき落とした剣を奪うとしますか!)
マクスウェルは分解された手で先ほど落ちたシュプリームを奪おうとする。しかし、
「これを探してるの?」
その時、マクスウェルの胸に鋭い痛みが走る。ふとジャンヌを見ると、彼女は利き手ではない右手でシュプリームを持ち、マクスウェルの胸に突き刺していた。
「このぉ…!!」
マクスウェルは一度ジャンヌから離れた。分解された体を元に戻して。
(まさかこの女、私が口から振り落とした時、その隙に剣を拾っていたのか…!利き手ではない右手に剣を持ち、マントで隠していたのか!?)
ジャンヌは左手にシュプリームを持ち替え、構えた。
「リタさん。きっとキュリオちゃんは、貴女のことを嫌ってなんかいません。むしろキュリオちゃんは、貴女のことが大好きなんです。」
リタは泣きながらも、ジャンヌに声をかける。
「無理しないで…。ひどい傷だから…。」
ジャンヌはシュプリームをマクスウェルに向けた。彼女はリタに微笑んで見せた。
「無理なんてしてませんよ。それに、私はみんなを守るのが仕事ですから!」
その時、キュリオが何かを喋ろうと口を動かす。ジャンヌは微かに彼女の言ったことを聞き取った。
「たす…けて…!」
ジャンヌはそれを聞いた瞬間、強烈な踏み込みを見せ、マクスウェル目掛けて斬撃を繰り出そうとする。
マクスウェルは体を分解させ、攻撃を躱し、バラバラになった体を利用してジャンヌに連撃を打ち込む。
跳躍し、弾き返しながらマクスウェルからの攻撃を躱す。
前方からマクスウェルにの両手が現れた。幻覚を見せる気だ。
「眠りなさ…」
刹那、ジャンヌのシュプリームが光り輝き、両手を切り裂いた瞬間、周囲に三日月状の光が現れ、マクスウェルの体をズタズタに引き裂いた。
「ぐあぁぁぁぁぁ!!!」
(これは…!?もしかして…)
シュプリームは誰かに何かを託されて強くなる。リタから託されたキュリオを助けて欲しいという思い、その思いが力となったのだ。
マクスウェルは自身の体を元に戻す。踏み込むが、先ほどの攻撃により、彼の体には限界が来ていた。
「うああああああああああっっ!!!」
マクスウェルは咆哮し、ジャンヌに飛びかかった。
「死になさいぃ!!
「もう貴方にはあの二人に指一本触れさせない!!」
長く刃物のような爪とシュプリームが交差し続ける斬撃の繰り出し合い。だがシュプリームの速さは異常だ。爪による斬撃より先にマクスウェルの体が傷ついていく。そして、
『ガキンッッ』
金属音のような音が空間中にこだました。マクスウェルの両手の爪は砕けて折れてしまった。
「っ!?」
(今だ!!)
ジャンヌはマクスウェルの胸部に斬撃を入れ、そして光技を使用し、球状の光を放った。
「グフォォ!!!」
マクスウェルは衝撃により吹っ飛ぶ。ジャンヌはそれを逃さずにマクスウェルに近づいた。
「ジャンヌ・ダルク…!!貴方は一体…何者…なんだ…!!!」
「私は、メルカバーだ。」
刹那、マクスウェルの体は、シュプリームによって真っ二つになった。
「か…かぁ…あ…あぁ…」
真っ二つになった体はジリジリと消えていく。やがて体が完全に消えると、黒い球体が浮かび上がり、それは空へと飛んでいった。
「ん…」
キュリオの体が少し動いた。マクスウェルを撃破したのが原因か、目を覚ます事ができた。
「キュリオ!」
「キュリオちゃん!」
彼女は深呼吸をし、リタを見つめる。
「あの、さっきの狼男が言ってたけど、お母さんはその、本当のお母さんじゃないんだよね…。」
それを聞くと、リタは暗い表情をした。
「ご、ごめんね…。」
その時、キュリオはリタにがばっと抱きついた。
「え?」
「ごめんじゃないよ!私にいろんなことを教えてくれた!一緒にゲームをしたり、アニメを見たり、映画を見たりした!どんな時でも一緒にいてくれた!どんな時でもそばにいてくれたよね?」
隠れた前髪からキュリオの片目が映る。その瞳は綺麗に輝いていた。まるで母親に甘える子供のように。
「本当のお母さんじゃなくてもさ、私、これからもずっと一緒にいたい。だから、これからも、お母さんって呼んでいいかな?」
リタの涙はポロポロと落ちる。ジャンヌの目も少し涙目になっていた。
「いいよ…!ありがとう…!」
リタはキュリオを抱き返した。護衛に付いていた騎士天使の二人がジャンヌに歩み寄る。
「見事でした。傷は大丈夫ですか?」
「まだ痛むけど、でも動けるようにはなってます。それと…」
ジャンヌは再び、キュリオとリタのいる方へ振り返る。
「久しぶりにこの世に来たから、人間の愛というのが改めて素晴らしいって思いました。」
彼女らの光景を、グレモリーは隠れて見ていた。
「マクスウェルは結局失敗しちゃたんだぁ。ま、今日は諦めよ。」
グレモリーは去り際にジャンヌに向けてニヤリと笑う。
「ジャンヌ・ダルク…♪また会いに来るわね♪」
「ジャンヌ・ダルクだったんだ!?ねぇ!本物の天使様はどんな感じなの!?神様は会ったことあるの?」
あれからジャンヌはリタ同様にキュリオに様々なことを話した。騎士天使たちはジャンヌの傷を治療し、天界へと帰っていった。
「神様は会ったことないけど、でも天使様は私を鍛えてくれた。みんないい人たちだよ。」
「ところでジャンヌちゃん、この後どうするの?天国っていうか、天界に帰るの?」
「そう…ですね。」
その時、ジャンヌの手の鎧から彼女を呼ぶ声が聞こえる。声からしておそらくセラフだ。
「セラフさん!」
「ジャンヌ・ダルク。聞きましたよ。悪魔を倒したようですね。」
「はい。その、シュプリームの能力も少し扱えるようになったと思ってます。」
「騎士天使たちから聞きました。メルカバーとしての役割に恥じぬ行動です。どうしますか?このまま天界に帰りますか?」
セラフがそう言った途端、キュリオが近づいてきた。
「もう帰っちゃうの!?私もっとジャンヌさんといたいよぉ!」
「ごめんね。キュリオちゃん。私は…」
セラフは笑みを浮かべた。
「どうするかは貴女次第ですよ。天界に帰ってきてもよし。あるいは、ランテール家の新しい家族として暮らしても。」
「え!?」
キュリオは嬉しそうな表情を浮かべた。
「し、しかし!」
「構いませんよ。その鎧、一様下界と天界を行き来できるようになっているので。」
ジャンヌは少し黙り込んだ後、
「リタさん。」
同じくその場にいたリタに声をかけるジャンヌ。
「こんな私ですが…」
「そんな硬くならなくても!私は全然大丈夫!家族が増えるっていうのも悪くないから!」
ジャンヌは微笑み、セラフにこう言った。
「また天界には帰ってきますので、しばらくは下界に暮らすことにします。それでも大丈夫でしょうか?」
「構いません。貴女の生活に幸運を。」
セラフの声はそこで途切れた。
こうして、ジャンヌ・ダルクは現代のフランスに暮らすことにした。悪魔からフランスを守る戦いはまだ続く。
一方その頃、アメリカ、シアトルの上空にて、一人の天使が悪魔と戦っていた。オールバックに青い肌、目に稲妻のような紋章が描かれたその天使は、剣先が奇妙な形をした巨大な大剣を振るっていた。
「シャアア!!」
悪魔が天使に襲いかかる。刹那、大剣の剣先から青い電気のようなものがバチバチと音を立てながら刃を覆う。
天使は大剣を振るい、悪魔の体を一刀両断した。
「メルカバーになったジャンヌ・ダルクが悪魔と戦ったという話を聞いた。」
天使は消えてゆく悪魔の死体を見つめた後、ニヤリと笑う。
「優秀な奴なのか?上位天使様、四大天使様と同じく、完璧なのか?」
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