第2話 ギガス

(っ!?)

ジャンヌは目を覚ました。自分はベッドで寝ていたようだ。

「起きたのだね。」

ジャンヌの横には、ガルガーリンとド・ミニオがいた。

「ここはどこですか?」

「医療室なのです。貴女、悪魔と戦ってボロボロだったのですよ?もう傷は痛みませんか?」

「そう…ですね。ありがとうございます。」

「お礼はセラフさんに言ってくださいなのです。彼がジャンヌさんの傷を治したのです。」

その時、ドアが開いた。中に入ってきたのは、セラフとケルヴィだった。

「ジャンヌ・ダルク。聞いたぞ。“光技”(こうぎ)を使えるようになったとなぁ!」

「ケルヴィさん…!はい!ありがとうございます。それに、セラフさんも、私の傷を治してくれてありがとうございます!」

セラフは頷いた。

「とんでもありません。貴女が悪魔と互角に戦えたこと、そして光技の使用に成功したこと。貴女の成長に賞賛します。」

そう言ったセラフは、笑みを浮かべた。その時、ジャンヌは何かを思い出した。

「そういえば、悪魔と戦っている時に声が聞こえたんです。“貴女には我らがついている”って。私に話しかけるように。」

「ほう。それは“神の声”という現象ですね。」

「神の声?」

「はい。稀に騎士天使(アークエンジェル)にも起こる現象です。その声を聞いた者は“奇跡”を起こすとのこと。ジャンヌ・ダルク。貴女はその声を聞いて、光技を使えるようになったのかもしれません。」

「そうですか。」

その時、ドアをノックする音が聞こえた。

「入っていいぞ。」

ケルヴィがそう言うと、ドアが開いた。しかし、“誰もいなかった”。

「何だ?」

その時だった。

「うぐっ!!」

ジャンヌの胸から“黒い光”が溢れ出した。

「これは…!?」

「何が起こっているのだね!?」

その黒い光は、ジャンヌを包んでいった。それと同時に、女性の声でケラケラと笑う声が聞こえてくる。

「その声は…!」

セラフはジャンヌが寝ていたベッドを見る。その側には、ジャンヌが戦った“グレモリー”が不気味な笑みを浮かべながら立っていた。

「こんにちわぁ!あはははははは!!」

「テメェ!!何しに来やがった!?」

「えっとねぇ私、ジャンヌ・ダルクと“仲良くなりたい気持ち”がすっごく残ってるんだ!だからぁ、思ったんだ!


“悪魔になっちゃえ”ってね。」


『っ!?』

「人間の魂を“悪魔化する力”!私もついに手に入れたわ!!」

グレモリーの禍々しい手から煙が出てきた。その煙から出てきたのは、“悪魔の絵が描かれた聖書”だった。

「それは!?」

その聖書は、上位天使四人衆も知っていた。

「“禁聖書ギガス”なのです…!悪魔にしか使用できない“人間の魂を悪魔化させる力を持つ聖書”…!」

ケルヴィは舌打ちする。

「テメェ、そこまで手を出すとはな。」

グレモリーは愉快に笑った。

「あはははははは!!さぁ!ジャンヌ・ダルク!生まれ変わりなさい!!メルカバーではなく、悪魔として!!」

そう言うと、グレモリーは姿を消した。

「待て!!どこへ行くのだね!!」

ガルガーリンは声を荒げてグレモリーを追おうとしたが、何かに気づき、後ろを振り返った。

「なっ!?」

「ジャンヌ…ダルク…!?」

ジャンヌを覆っていた黒い煙は爆散した。そして、ジャンヌの姿は、“とても禍々しかった”。赤い肌に赤く鋭い爪、ドス黒い三本の角、髪も赤く変色していた。そこにいたのは、オルレアンの少女ではなかった。そう。ギガスの力によって、“悪魔と化してしまったのだ。”

「そんな…!?」

「ちくしょう…!遅かったか…!!」

ジャンヌはセラフを睨みつけた。セラフの表情は、相変わらず無表情だった。その時、

「グアあああああああああああああ!!!」

ジャンヌがセラフに飛びかかった。セラフは何一つ表情を変えず、ただ突っ立っていた。ジャンヌの赤い爪が彼に当たる直前、

「危ない!」

ド・ミニオが助けに行こうとする。だが、それよりも早く駆けつけた者がいた。ガキンッという音が響く。ジャンヌの鋭い爪を防いだのは、“ケルヴィ”だった。

「悪いが、この部屋で暴れてもらっては困るな。」

ケルヴィはジャンヌに向けて掌を突き出す。すると、そこから謎の光が“爆発”した。彼は“光技”(こうぎ)を使ったのだ。ジャンヌは吹き飛ばされ、壁を突き抜けた。彼女は外に放り出された。

「ぐぐぐぐぐぐぐぐぐ…」

ジャンヌは唸り、爪をギリギリと鳴らす。

「ガルガーリン。ド・ミニオ。お前は騎士天使を何人か連れて来てくれ。俺とセラフでジャンヌ・ダルクをなんとかする。」

ガルガーリンとド・ミニオは頷き、そのまま騎士天使を呼びに向こうへ行った。その時、

「グアアああああああ!!!」

ジャンヌがケルヴィに襲いかかった。だが、ケルヴィが攻撃を受け止める。

「ギィぃぃぃぃぃぃ!!!」

ジャンヌは一度、ケルヴィから離れた。そして、勢い良く両手を突き出し、そこから“光線”を放った。だが、セラフがケルヴィの前に現れ、手のひらを突き出す。突然、“シールド”に似た光が出現し、光線を防いだ。

「ケルヴィ。今のうちに。」

「あぁ。わかった。」

ケルヴィは猛スピードでジャンヌの頭上に向かった。ケルヴィは右手を挙げると、そこに光が集まり、やがて巨大な球体になった。

「っ!?」

ジャンヌは背後にいたケルヴィに気づくが、もう遅かった。

「悪いが、我慢してくれ。」

ケルヴィは球体をジャンヌに向かって放り投げた。球体はジャンヌに命中し、爆発した。

「グアあああああああああああああああああああ!!!」

ジャンヌは地面に叩きつけられた。しかし、彼女はすぐに立ち上がり、両手を合わせ、黒い何かがそこに集まり始めた。そして、ジャンヌはそれを上に投げる。それは爆散し、大量の黒い欠片がセラフとケルヴィに襲いかかる。

「禁聖書ギガス…。恐ろしい書物ですね。」

二人は黒い欠片を回避し続ける。先にセラフがジャンヌの側まで近づくことに成功した。ジャンヌは爪で連続攻撃を仕掛けるが、セラフは軽やかに回避していく。そしてついにセラフが反撃した。目にも止まらぬスピードの蹴りをジャンヌは喰らってしまった。

「ギィ!!」

すると、セラフは両手に光を集めた。二つの光はどちらも“剣”の形になった。

(かなり強い力だ。私とケルヴィさんだけでは厳しいかもしれない。だが、“あのお方”ならば…)


一方その頃、ガルガーリンとド・ミニオは数人の騎士天使たちを連れてジャンヌたちがいる方へ向かっていた。

「人間の魂を悪魔化させる書物…。確か、三百年前の戦争でサタンと共に“封印”されたはずじゃないのだね?」

「だとすれば、さっきの悪魔が封印を解いたのかもしれないのです!貴方たち!武器を構えるのです!」

『はい!』

騎士天使たちは腰につけていた剣を鞘から引き抜いた。その時、

「っ!?」

ガルガーリン達の目の前に、何者かが立っていた。ガルガーリン達は驚愕の表情を浮かべる。

「貴女は…!?何故ここに…!?」


セラフとケルヴィはジャンヌと乱戦を繰り広げられていた。疾風の如く飛び回るジャンヌをケルヴィが追い、セラフは光技を使った遠距離攻撃を仕掛けていた。

ジャンヌが旋回し、ケルヴィに回し蹴りを繰り出す。

「おっと!」

ケルヴィは防御した。彼は光技を使って光を爆発させた。ジャンヌは爆発に巻き込まれ、吹っ飛んだ。彼女は地に落ちる直前に両手を突き出し、セラフとケルヴィに向けてそこからV字型の光線を放つ。しかし、回避された。

「私が出ます。」

セラフがジャンヌの間合いを詰めるために走った。ジャンヌはそれを阻止するために再び光線を撃った。だが、もう“遅すぎた”。何故なら目の前にセラフがいたのだ。

「お許しください。ジャンヌ・ダルク。」

セラフは左手を大きく突き出した。そこから光が集まり始めた。そして、左手から巨大な光線を放った。

「グアああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」

ジャンヌに光線は命中した。光線によって地面が削れていく。そして数秒後、セラフは光線を止めた。砂埃が辺りに舞い、その影響か、ジャンヌの姿が見えない。

「セラフ!」

ケルヴィが歩み寄る。

「ご安心を。ジャンヌ・ダルクは生きています。」

砂埃は薄れていく。ジャンヌの姿が見えてきた。彼女の姿は、もう悪魔の姿ではなかった。

「ふぅ。どうにか戻ったみたいだな。」

セラフは倒れているジャンヌに歩み寄った。

「ご無事で良かった。さぁ、彼女を…」

セラフは突然足を止めた。ジャンヌの体から“赤い靄”が出ていた。そして、ジャンヌの姿が再び“悪魔の姿になった”。

「グアアああ!!」

ジャンヌはセラフに蹴りを繰り出した。セラフは回避し、もう一度光で出来た剣を生み出す。

「どうやら、まだまだのようですね。」

「くそっ!駄目だったか…!」

ジャンヌは両手を強く握りしめ、赤い光を集め始めた。

「ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ…」

おそらく、彼女は光線を放つだろうとセラフは思い、構えた。しかし、

「っ!?」

セラフとケルヴィは頭上に気配を察知し、見上げた。

「なっ!?」

「ほう。」

そこには、“水色の翼、銀と白を混ぜたような肌、そして身体中に紋章が描かれた女性”がいた。ジャンヌはその女性に気付き、女性に向かって光線を放った。だが、その光線は、女性に直撃する寸前で“消滅した”。次の瞬間、その女性は消えた。

「グゥ!!」

ジャンヌは辺りを見渡すが、女性の姿はどこにもなかった。その時、

「ギィ!!?」

ジャンヌは何者かに肩を触れられた。さっきの女性だ。女性の手から白い光が溢れてくる。

「アギ!!?ギグぁぁァァァ!!!」

白い光の影響か、ジャンヌは身動きが取れず、ただもがくことしか出来なかった。ジャンヌの頭上には、“水色の十字架”が浮いていた。

「ぎゃああああああああああああ!!!」

ジャンヌは完全に白い光に包まれた瞬間に、耳をつんざくような叫び声を上げた。やがて、白い光は少しずつ消えていった。ジャンヌは倒れていた。だが、元の人間の姿に戻っていた。セラフはその女性に歩み寄った。女性はセラフを見て笑みを浮かべた。

「セラフ。ケルヴィ。ガルガーリン。ド・ミニオ。お久しぶりですね。」

セラフはお辞儀をした。


「おかえりなさいませ。私の“師”であり、誇り高き“四大天使”の一人。

“ガブリエル”様。」


「はっ!」

ジャンヌはベットから飛び起きた。

「私…何を…」

その時、ジャンヌは思い出した。微かだが、頭の片隅に、自分が暴走していた出来事が蘇った。すると、ジャンヌはベットから降り、ドアを開けた。

「おっ?」

そこには、上位天使四人衆がいた。

「おぉ!起きたのだね!」

四人を見たジャンヌは涙を流した。そして、頭を下げた。

「申し訳ありません!!」

ジャンヌは謝罪した。

「え?」

「皆さんを危険に晒してしまって…!!それに!!私が早くグレモリーに気づいていれば!!こんなことには…!!私は!!メルカバー失格です!!私は…本当に…愚か者です…!!」

ジャンヌは大粒の涙を流した。自分がしたことは許されぬ行為ではなかった、自分は愚か者だとジャンヌは思い込んでいた。だが、

「落ち着いてください。ジャンヌ・ダルク。」

椅子に座っていたセラフが立ち上がった。

「貴方は何も悪くありませんよ。私たちはただ、貴女が無事でいられて何よりです。メルカバー失格?そんな訳ありません。ジャンヌ・ダルク。貴女から感じる勇気。それは、立派なメルカバーの証拠です。」

ケルヴィは笑みを浮かべた。

「俺とセラフも、お前に攻撃してしまった。すまなかった。本当に無事でよかったぜ。」

それを聞くと、ジャンヌの涙は更に溢れ出す。

「ありがとう…ございます…!」

すると、ジャンヌは何者かに肩を触れられた。彼女は振り返ると、そこには“ガブリエル”がいた。

「えっと…どちら様?」

「ジャンヌ・ダルクは初めてでしたね。この方は、私の師です。」

「師?」

「そうです。天使の頂点である“四大天使”の一人、ガブリエル。」

ジャンヌは驚愕した。聞いたことがある。生前、幼い頃に読んだことのある聖書に載っていた天使だった。

「貴女が、ガブリエル…?」

ガブリエルは頷いた。

「お会いできて光栄だわ。オルレアンの少女。メルカバーになったことは耳にしています。フランスの危機を救い、さらには悪魔と戦おうなんて、素晴らしい勇気ね。」

「あ、ありがとうございます。」

ガブリエルは笑みを浮かべる。すると、

「ん?」

「え?」

ジャンヌは後ろを振り返る。ケルヴィの後ろに何故かガルガーリンとド・ミニオが隠れていた。

「お前らいい加減慣れろよ!何回か会ったことあるだろ!」

ケルヴィはそうツッコんだ。ガルガーリンとド・ミニオは震えていた。

「ジャンヌ・ダルク…!君はよくそんな平然としていられるのだね!」

「いざ四大天使を前にするとプレッシャーが半端ないのです!」

ジャンヌは苦笑した。

「それよりジャンヌ・ダルク。“眼帯”はどうですか?」

「え?眼帯?」

「おや?気づいていなかったのですか?」

ジャンヌは左目を触ると、布のような感触を感じた。彼女は眼帯を外そうとすると、

「一つ忠告しておきます。その眼帯は“外してはなりません”。」

「どうしてですか?」

「その眼帯にはガブリエル様の力が込められていてな。お前が次、いつ悪魔化するかわからない。眼帯をつけることで、悪魔化を防げることができるんだ。」

「泣いてて全然気付かなかった。こんな私のために…。ありがとうございます!」

セラフは頷いた。

「ジャンヌ・ダルク。今日はゆっくり休んでくれ。明日からまた特訓を始めるぜ。」

「は、はい!よろしくお願いします!」

「あらぁ。それなら私はたまに顔を出すわね。」

ガブリエルの発言にガルガーリンとド・ミニオは『なぬ!?』と言った。ケルヴィはその二人にげんこつを食らわせた。

「うふふ。とても楽しそうね。セラフ。」


それから、数ヶ月が経った。ジャンヌは日に日に光技を物にしていき、成長していった。ヤハウェ像の間にて、ジャンヌは光技を操る特訓をしていた。近くからガルガーリンが見守っていた。

「はぁ!!」

ジャンヌの指先から光の球が弾丸の如く発射した。

「良い感じなのだね!その調子なのだね!」

「はい!」

その時、ヤハウェ像の間のドアが開き、セラフが入ってきた。

「ジャンヌ・ダルク。大事なお話があります。」


ジャンヌはセラフの部屋に呼ばれ、二人は椅子に座った。

「どうしたんですか?」

「はい。貴女に以前襲いかかってきた悪魔の名は覚えていますか。」

「グレモリーですよね。」

「えぇ。そうです。私は騎士天使数人に、グレモリーについての調査を頼みました。そして昨日、彼女の情報がわかりました。」

「え!?」

セラフは一枚の紙をジャンヌに渡した。その紙には、“逆さになった赤い十字架”

が描かれていた。その十字架の中には、“上を向いた一つ目”、その上には“六芒星”が描かれていた。

「これは?」

「そのマークは、三百年前の戦争で、“サタン”の軍勢が掲げていた旗に描かれていたシンボルマークです。」

「そういえば…」

ジャンヌは思い出した。彼女がメルカバーになる前、聖書の挿絵で見たことがあった。

「でも、これとグレモリーにどう言う関係が…?」

「彼女はおそらく、サタンの“残党”であると考えられます。」

「サタンの残党…ですか。」

「はい。そしてグレモリーは、奈落に一番近い場所、“悪魔の巣窟”とも言われている“アンダーワールド”出身です。」

「悪魔の…巣窟…!?」

「騎士天使たちはグレモリーがアンダーワールドに入る瞬間を見たと報告しました。しかし、あそこは四大天使も認めるほど“恐ろしい場所”です。騎士天使たちにはそこで調査を中断させるように言いました。そしてもう一つ、騎士天使の一人がグレモリーが仲間の悪魔と喋っている様子を聞いたのです。彼女の目的は、“ジャンヌ・ダルクを完全に悪魔化させ、現代のフランスに突き落とし、フランスを始めいずれ世界をもう一つのアンダーワールドに変えること”。」

それを聞いたジャンヌは言葉を失った。グレモリーの目的は、とても恐ろしかった。しかも、自分が生まれた国が狙われるなんてと。

「そんな…!」

「どうりで最近、フランスで悪魔の出現が多くなったわけです。貴女を悪魔に強制的に変身させるには、貴女の心を絶望に追い込む必要があるらしいです。グレモリーは貴女を絶望させる為、彼女の仲間たちがフランスに悪魔を呼び寄せていると私が考えています。」

ジャンヌは拳を強く握った。セラフは続ける。

「グレモリーは貴女をどうしても悪魔化させたいようです。ギガスまでも手に入れると言うことは、相当でしょう。」

その時だった。

「行かせてください…!私を…フランスに…!」

ジャンヌは顔を上げた。その顔は、怒りと同時に、覚悟を決めた顔だった。

「そう言うと思いました。しかし、今の貴女では…」

「祖国が地獄と化するのを黙って見ているわけにはいきません!!」

「…」

セラフは黙ってただジャンヌを見ていた。単眼の瞳には、ジャンヌの表情が写っていた。すると、部屋のドアが開き、“ガブリエル”が入ってきた。

「聞かせてもらったわ。うふふ。」

「ガブリエル様。それは?」

ガブリエルは右手に剣を持っていた。

「ジャンヌ・ダルク。私は貴女を応援しています。その剣の名前は至高の意味を持つ“シュプリーム”。私からのプレゼントよ。」

ガブリエルはシュプリームをジャンヌに渡した。シュプリームが彼女の手に触れた瞬間、剣先が“光り始めた”。

「これは…!?」

「貴女を守ってくれる最大の武器。セラフ。彼女はメルカバーよ。それに、彼女も覚悟は決めた。私は、ジャンヌ・ダルクを信じるわ。覚悟を決めた人には、奇跡が起こるのだから。」

ジャンヌはそれを聞いて、とても喜んだ。ガブリエルは自分を信じてくれているのだ。

「…敵いませんね。では、良いでしょう。ジャンヌ・ダルク。ですが、一ヶ月だけ、特訓を行います。それまで待てますか?」

「はい。ありがとうございます!」



あの日から一ヶ月が経った。ジャンヌ・ダルクは藍色のマントと鎧を身につけ、腰には鞘に入ったシュプリームを付けていた。

「覚悟は決めた…!」

ジャンヌは宮殿のドアを開けた。そこには、上位天使四人衆、ガブリエル、そして、エデンの住人たちが出迎えた。そして、その奥には巨大な扉があった。

「ジャンヌ!頑張れよ!」

「私たちが空から見守ってるからね!」

「負けるなよ!」

住人たちはジャンヌに応援の言葉をかけてくれた。すると、誰かがジャンヌに駆け寄ってきた。

『ジャンヌお姉ちゃん!』

ジャンヌと遊んでいた子供達の魂だった。

「みんな…!」

「お姉ちゃん!私たち応援してるからね!これ!私たちで作ったの!」

少女の魂はジャンヌに小指ほどの小さな人形を渡した。

「お守り!きっと!お姉ちゃんに良いことが起こるから!」

「ありがとうみんな。頼りにしてるわね。」

ジャンヌは少女たちに笑顔を見せた。


そして、ついに時が来た。

「ジャンヌ・ダルク。その鎧の手首に現代の“スマホ”という機械をモデルに通話機能もつけました。そして、腰のスイッチには下界と天界を行き来できるようになっています。何かあれば遠慮なくこっちにお越しください。それと、下界で“ド・ミニオ”さんは“週四回下界に降りるので、見かけたら連絡お願いします”。」

「あ、あはは。」

ジャンヌは苦笑した。ド・ミニオの汗は尋常ではなかった。

「そして、何かあれば助太刀に向かいますのでご安心を。」

「了解です!」

「ジャンヌ・ダルク!お前は成長した!もう一度祖国であるフランスを救ってやってくれ!」

ケルヴィはジャンヌに応援の言葉をかけた。

「ケルヴィさん…!はい!がんばります!」

「その意気なのだね!」

「応援してるのです!」

ガルガーリン、ド・ミニオも同じく、ジャンヌを元気付ける。

「ガルガーリンさん…!ド・ミニオさん…!」

ジャンヌはセラフを見た。セラフは笑みを浮かべ、頷いた。

「よし!行ってきます!」

ジャンヌがそう叫んだ時、巨大な扉が開いた。ジャンヌはそれに飛び込むと、扉はバタンと閉まり、消えていった。




これは、オルレアンの少女がもう一度フランスを守るために悪魔たちと戦う物語である。

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