第235話決戦(最終話)

大悪魔ザーダ。



永遠ともいわれる時を生き、悪魔族最強と謳われし魔王。


残虐で、戦いを好み、逆らう者には、容赦がない。



「さぁ、始めようぞ神共、今度こそ、貴様らを葬ってやろう」




神と悪魔の大戦よりずっと昔、ザーダは、神に喧嘩を売った。


理由は簡単、『気に入らないから』。




ザーダは、自身の部下を引き連れ、天界へと乗りこみ、


下級神や天使、それに連なる者達を消滅させた。




その事に怒りを露わにしたアトゥムは、直ぐに部下の3人を送り込んだ。


イシス、オリシス、モンチュである。




彼らは、ザーダを孤立させ、魔力を封じ込めた。


そして、モンチュとの一騎打ちに持ち込んだのだ。




その日から、一か月間、モンチュとザーダは戦い続け、

最後には、ザーダが力尽き、モンチュの勝利で幕を閉じた。



だが、神側の被害は甚大で、一部の種族と、

天使達の3割が消滅させられたのだ。




そこまで追い込んだザーダが復活し、京太の目の前に立っている。


だが、それだけではない。


生き残っていた悪魔が顕現すると同時に、

悪魔城で倒した筈の悪魔達も、復活したのだ。



「神よ、どうした?

 怖気づいたのか?」



挑発するように語り掛けるザーダは

反則級の技を使い、京太達を窮地に追い込んでいる。



そんな中でも、京太の仲間達は、冷静に行動を開始し

それぞれが、この屋上に、悪魔達を向かわせないように、

魔王の間などで悪魔との対戦に備えた。



その為、屋上には、京太、ただ1人。



復活したザーダが、命令を下す。



「我が下僕たちよ、よく聞け!

 神を屠り、この地を新たな魔界へと進化させるのだ!」


その言葉に従い、悪魔達の総攻撃が開始された。


襲い掛かる悪魔の群れ。


京太は、手にしたドラゴンソードで応戦する。


ザーダは、京太を見ていた。


大勢の悪魔の攻撃を躱しながら、確実に倒していく京太。


徐々に減っていく悪魔達。


――あ奴の正体を知らねば・・・・・


ザーダは、それを調べる為に、観察しているが

未だに、どの神なのかが、見当がつかない。


モンチュのような剣捌きを見せたと思ったら

太陽神ラーの魔法も使う。


──こ奴は、何者なのだ・・・・・


神が、わからなければ、弱点が分からない。


神と悪魔でも、相性がある。


その為、必死に探しているのだ。


だが、その間にも、次々と悪魔達が倒されている。


それだけではない。


復活させた悪魔達の援軍が、上がって来ない。


焦り始めたザーダは、攻撃に打って出る。


闇を纏った槍を京太に向けて投げた。


仲間の悪魔を巻き込みながら、京太に向かう槍。


だが、その攻撃を、京太は、あっさりと躱す。


その後も、同じ攻撃を繰り返したが、京太には、一度も当たらず

悪魔の数を減らすだけだった。


「正体を見せよ!」


槍での攻撃を諦め、魔法を放つザーダ。


『ダークバレット』


無数の弾丸が襲い掛かるが、

京太は、シールドを張って、攻撃を防いだ。



その時だった。



「あーあー京太よ、わらわじゃ、聞こえておるか?」


声の主は、アイシャ。


「アイシャ?

 どうしたの?」


「うむ。


 マチルダの『思念伝達』の魔法じゃ。


 これで、皆との会話が出来るぞ。


 それでじゃ、こちらはもうすぐ終わる。

 

 以上じゃ」


「え?」


『もうすぐ援軍に向かう』とか、思念伝達の方法を教えるとか

そう言う肝心な事を告げず、切れた。


呆気に取られてしまいそうになる京太だったが

シールドに与えられる衝撃のおかげで

そう言う事にはならなかった。


しつこい程に、繰り返されているブラックバレット。


だが、幾ら、繰り返しても、京太のシールドは破れない。


遠距離攻撃では、

ダメージを与える事が出来ないと判断したザーダは

接近戦を挑む。


しかしそれは、悪手。


過去に、モンチュにより敗北を味わっていた筈だが、

遠距離からの攻撃が全く効かず、焦ってしまったのだ。


振り下ろされる大剣を、京太は難なく受け止める。


「えっ!

 軽い!?」


大悪魔といわれたザーダの一撃が、思ったよりも軽く

京太は、驚いた。


その時、

京太の仲間達が、応援に駆け付けた。


次々と悪魔を倒す仲間達。


1部の仲間は、ザーダと戦っている。


おかげで、京太に考える余裕が出来た。


あまりにも軽すぎた一撃。


どうしても、引っ掛かる。


現在、ザーダと戦っているのは、特攻隊の2人。


クオンとエクスだ。


繰り出される攻撃に、防戦一方のザーダ。


その光景からも、違和感を感じる。


やはり、何かおかしい。


よくよく考えて思い出すエウリノームの言葉。


『まぁ、少し足りませんが・・・・・・』


その言葉の意味を理解した。


ザーダは、完全復活してない。


ならば、倒せる!


京太も、攻撃に参加して、色々探ってみると

ザーダの背中に、小さくなった漆黒の宝石を発見した。



――取り込めていない・・・・・・



本来、漆黒の宝石は、体内に宿るもの。


しかし、ザーダの場合は、取り込めず、剥き出しになっいていた。


――ならば・・・・・・


クオンとエクスに、正面からの攻撃を任せて、

京太は、側面から、徐々に背後へと回る。


そして・・・・・


――ここだ!・・・・・


攻撃を仕掛け、隙が出来た瞬間、

背中に浮き出ている漆黒の宝石に、

ドラゴンソードを、突き刺した。


「グワァァァァァ!!!」


叫び声を上げるザーダ。


漆黒の宝石にもヒビが入った。


――今だ!・・・・・・


2人に合図を送って退避させた後、

京太は、魔法を放った。


『ディスペルレーザー』


天空より降り注ぐ巨大な光。


ザーダを中心にして、悪魔城にも振り注ぐ。


光りの中で、塵と化していくザーダ。


同時に漆黒の宝石も、消えつつある。


「次こそは・・・・・・」


そう言い残し、ザーダは消滅した。


ザーダが消えた後、残っていた悪魔達も倒して

戦いは終った。






~半年後~



京太達は、シャトの街に戻り、いつもの日常を送っていた。


また、あの時、各地に散った竜魔人達は、上級の冒険者たちに討伐され

今は、この世界に残っていない。


ただ、あの戦いから、3ヵ月経った頃。


「神様になったけど、まだ、知らない事いっぱいあるから・・・・・

 それに、あの魔人達が残っていたら、嫌だから出かけてきます!」



そう言って、クオンとエクスは、一緒に旅に出た。


手に入れた 『アイテムボックス』に大量の食糧を詰めて。



サキュバスのリリスは、この屋敷に留まっている。


今は、この街に、娼婦街をつくる事に尽力し、

時々出掛けては、何処からか、女の子を連れて帰って来る。


勿論、合法的にだが。



ラムとサリーは、冒険に出る事もあるが、

殆どは、3人の妊婦と一緒に楽しく過ごしている。


街に戻った時は、ソニアの事や、リリスが悪魔だという事で、

ひと悶着あったけど

今は、その騒動も落ち着いた。


マチルダは、同じ王女でもあるコーデリアとレインと共に

剣の稽古に励みながらも、優雅に暮らしている。



他には、ケルベロス達。


この子達は、外界にいる事を強く望んだ。


その為、シャトの街の山側に、

ケルベロス牧場を作り

そこで暮らしてもらっている。


面倒を見るのは、アイシャの元ライカンスロープ達。


今では、『神』の眷属になったのだが、毎日、ケルベロス達と戯れている。



ウルド ツールとラムザニア、ラムールは、元の海へと戻ったが、

何故か、ちょくちょく転移の鏡を利用して、遊びに来ている。


当初の予定では、部下が買い付けに来ると言っていたが

やはり、地上の食べ物が美味しいらしい・・・・・。


また、マリアベルだが、本気で、シャトの街への移住を考え

今は、新しい領主の育成に、励んでいるらしい。


その事を、綴った手紙が、時々届くが、

それを読んでいるのは、ラゴとアイシャであり、京太ではない。


「あ奴、本気の様じゃな」


「であっても、当分先の事じゃ、

 また、こちらから、返事を書いておけばよかろう」


「うむ」


マリアベルも、相手が京太でない事は理解しており

文面から、ラゴとアイシャだという事もわかっていたが、

それでも、文通を楽しんでいるのだ。


それから、

ハクとフーカは、相変わらず、マイペースな生活を謳歌しているが

時折、マチルダに連れ出され、魔法学校建設に、力を貸しているようだ。




最後に、京太だが、今は、シャトの街の領主としての勉強に励んでいる。


先生は、エヴェータ アトラ王妃。


勿論、3人娘も一緒だ。


その他に、アイシャ、ラゴ、レイン、デュラの姿がある。


彼女達は、領主補佐として勉強しているのだ。




よく出掛ける京太としては、

この街を、ナイトハルトに譲る事も考えていたのだが、

ナイトハルトは、その提案を頑なに拒んだ。



「俺は、この街を守る警備隊長。


 この席は、誰にも譲れない」



その意見に、フィオナも賛同した。


『アクセル王国の第一王女が、それでいいのか?』と思ったが、

問題無いらしい。

 

その為、『京太が領主である』という事は、変わらなかった。



この先、また、何があるか分からない。


だけど、京太が、この世界を守って行く事に変わりはない。



それは、『神の力を受け継いだのが、僕だから』




~終り~








後書き編集


不定期投稿でしたが、今までお付き合い下さり、有難う御座いました。


応援、コメント、とても力になりました。


感謝致します。



これにて『神の力を受け継いだ僕は、この世界で暮らし始める』は、

完結です。



長くお付き合い頂き、誠に有難う御座いました。


また、お会い出来れば幸いです。




タロさ。

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神の力を受け継いだ僕は、この世界で暮らし始める。 タロさ @semimushi

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