「ひみつきち」と「たからもの」と

「はぁっ、はあっ、あれ?ここどこ…」

突然のハプニングによって、学校を飛びしだした。そこまではよかったが、全く土地勘がない私にとってこの島は迷宮のようなものだ。

気づけば、海風の香り漂う砂浜に来ていた。さすがにここにはきてないよね。岩場でウミネコたちが楽しそうにお喋りしていた。こんな状況じゃなければ眺めていたい微笑ましい景色だ。

あれ、あそこで砂山作っている子、ひょっとして…

声を出すより先に駆け出していた。砂浜にズタズタと足跡を作っていく。

「おーい、ゆうきくーんっ!」

「あれ、せんせー。どうしてここに?」

「どうしてって、なんで急に学校からいなくなったりしたんですか!?」

「えっ、しおりちゃんが……」

小さな人差し指の方向には、小さな背中がまるまっていた。

「栞さんっ!」

気づけばその小さな背中を抱き締めていた。

「良かった…本当に良かった……」

涙が溢れた。自分でも大袈裟だと思った。

「栞さん、その手にもっているもの…」

「貝殻…だよね」

こくり、栞さんは静かにうなずいた。

「これ、たからものなの」

私は驚いた。だって、初めてこの子の声聞いたから。いまにも、消えそうなか細い声で、それでいて透き通るような美しい声だった。昔読んでもらった童話の人魚姫も、こんな声だったのかもしれない。

「あーあ、せんせいにひみつきち、ばれちゃったか」

ゆうきくんが砂浜を裸足で歩く。

「秘密基地…?」

「うん、しおりちゃんとおれのひみつきち。ほうせきはここからもってきてるんだ。みんなには内緒だよ」

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リトル・モンスターズ! 桜咲 枕 @saga2023

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