第3話 「ちびっこ先生」と「大事件」と
学校に着任してから三日が過ぎた。この島にも、クラスのみんなとも少しずつ打ち解けてきた気がする。ここで、少し趣向を凝らした授業をしてみることにした。
「今日はみんなに先生になってもらいます!」
クラスがざわめいた。
「えー、なんでー。私たちに授業すんの飽きちゃっのー?ささっちー」
「ささっちじゃなくて、先生ね。瞳さん」
「先生、なぜですか?俺たちに授業は、たぶん無理ですよ」
「うーんと、みんなには紹介してほしいの。この島のことを」
「しょうかい?」
勇気君がぐいーっと首をかしげる。
化粧島、実をいうと私はこの島について何も知らない。ネットで調べても小難しい歴史しかヒットせず、いまいち全貌がつかめていなかった。
だから、地元の彼らに先生となって島の素晴らしさを教えてもらいたかったのだ。
「今から一時間、みんなで班を作って話し合ってください。そのあと、前に出て発表してもらいます」
「スマホ使ってもいいの?」
「本でも、スマホでも、何でもOKです!」
各々、机をくっつけて話し始めた。いったいどんな紹介をしてもらえるのか、とても楽しみだ。
「ーという訳で、彼らにクラスを任せているんですよ。校長先生」
「いやぁ、それは面白い試みだ」
職員室。といっても教員用の机は三つだけの部屋で、校長先生と談笑していた。校長はごくっと、お茶を飲み干した。おみやげの茶葉は気に入っていただけたようだ。
外から鮮明に聞こえる蝉の鳴き声。アブラゼミだろうか。ここ数年、電子音と人の雑踏音しか聞いていなかったためか。喧しいはずのこの音が、どこか心地よい。それを突然、ドアを乱暴に叩く音がぶっ壊した。
「せんせー、大変っ。しおりんが消えちゃった!」
「ええっ!」
栞さん、物静かで貝殻が好きな女の子。一体、どこに消えたというのだろうか。
「あと、ゆうきも!」
「二人も!?」
慌てて職員室から飛び出した。蝉の声も、校長の声もどこか遠くへ消えてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます