002s.〈青春〉薄荷飴

新23.08.12

薄荷飴は苦手だった君の味

ゆるりと溶ける夏祭りの夜



◆思い描いた景色

 初めて舐めた薄荷飴は吐き出してしまった。

 とても辛く、鼻に抜ける感じに驚いたのだ。

 それ以来、薄荷飴は苦手だ


 間違ったことを指摘するクラス委員長は苦手だ。

 正論に対し、暴言を吐く自分が嫌になる。不貞腐れていると、陰口を叩いてるダサい奴がいた。

 殴ってやったら一人になった。


 祭囃子が聞こえる。

 母親と喧嘩して居場所がない俺は、神社に向かった。そしたら、目の前にしょぼくれている委員長がいた。

 綺麗な浴衣が台無しだぜ。

「よう、委員長ひとりか?俺がエスコートしてやるよ。旨い店知ってるぜ」

からかってやると

「お願いしますわ」と返された。

 しかたねえ奴だ。俺が毎年行く、前歯のないあんちゃんのたこ焼き屋に連れて行く。

「おう、ぼん。女連れとはやるな。デートか」

「うるせぇ、二つくれ。出来立てのやつの方だぞ」

 かっかっかっと笑いながら、三つ寄越した

「一つはサービスだ。上手くやれよ」

「余計なお世話だ」

 委員長はびびっていたが、あんちゃんの謎のウインクに呆気にとられていた

「あんちゃんの処は毎年行くんだ。美味いんだぜ。おっ、あんず飴がある。委員長は好きか?買ってやるよ」

 返事を聞かずに買いに行く。

 ついでに仮面ライダーのお面も買った。お面を被って戻ったら、子供みたいと笑われた。

「祭りは楽しんでなんぼだぜ」と戯けてみせる。

 人混みを逃れて、神社の境内に行く。丁度良く空いたベンチに座り、早速、たこ焼きを頬張った。

 中がとろりとした熱々のやつを、次々と口に放り込んだ。口の中が火傷してもお構いなしだ。

 委員長はひとつひとつ冷ましながら食べている。

 お上品なこって。

 自分の分のたこ焼きを全て食べ終わり、もう一箱を見ていると、食べていいわよ。私はお腹いっぱいという。

 たった六個でか?とも思ったが、女って奴はすぐ太ったと大騒ぎするからな。

「じゃあ、遠慮なく」とすぐ食べ始める。

「あんたは自由でいいわね」ため息を吐かれる。

んん、やっぱり一個食うかと差し出すと、違うわよと怒られた。

「私は間違ったことが嫌い。何か間違ったこと言ったのかな……」ひとり言のようにいう。

「そうか?俺ははっきりものを言ってくれた方が良いけどな。あんず飴舐めるか?」

 委員長はビニールに包まれたあんず飴を受け取る。

「思った通りに真っ直ぐに行けばいいんだよ。誰にも遠慮なんかいらねえよ」

 俺はあんず飴の包みを取りながらいう。なかなか上手く取れねぇもんだな。

「あんたはもう少し忘れ物をなんとかしなさいよ」

 うお、藪蛇だ。

 祭り囃子の夜が溶けてゆく。


◆雑感

 薄荷飴は清涼感がありとても辛い刺激が持ち味。

 正論で追い詰める苦手だった委員長のイメージが当て嵌まりました。

 偶然出会った夏祭りの等身大の姿が、わだかまりを消していくそんな恋心を描きました。


 上句の薄荷飴のくだりはオリジナリティを出せたと感じています。

 わだかまりも恋心も言葉を出さずに、簡単な言葉で上手く着地出来たのはとても満足しています。

 いつもこの歌の様に出来ると良いのですが…精進します。


 第二回短歌・俳句コンテスト用の本文をまとめていたら、短編が出来てしまった。

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