第17話 学校を作ってください - 前編
「シュウヤさーん!今日も来てたよ!」
「ありがとう、ミサキ。」
さてさて、今日はどのようなメッセージが来ているんだろうか。毎回感想ばっかりだけど今回こそは要望とかがほしい。
「『がつこうをつくってください!』だって。これを書いたのは子供だろうか。」
「学校ですか...先生を1人は雇っては居ますけど、学校を作るとなるともっと先生が必要になりそうですよね。」
確かに人材確保が大変だし、負担も大きい。でも今まで学校というのは無かった。確かにいい案かも知れないな。この教育を通して識字率を上げればより国民も自由に思うことを書けたり、手紙で自由なやりとりが出来るようになるはずだ。
しかも教育によって得られるものはそれだけではない...!
「ちょっとノルドさんに話を聞いてくるよ。」
僕はノルドさんに今までの教師としての経験を聞いてみる事にした。僕はさっきの事を話し、提案してみた。
「うーん。その試みは素晴らしいと思いますが、実現はなかなか難しいですね。」
「それはなぜでしょうか?」
「今居るほとんどの先生は貴族しか相手をしないでしょう。私も現役時代はそうでしたからね。やっぱり『貴族の先生』っていうのが一番お金の入りが良いんですよね。」
まあそうだろうな。確かに貴族なら良い教え方さえすればその先生にお金を多く与えるだろう。でも僕がやりたいことは少し違うんだ。
「教師を雇うのではなく、あなたの手で育て上げてほしい。どのように教えるかとか、どうやって教えるかとか。それなら国が全面支援しましょう。どうですか?」
「なるほど、私に先生を育てろと言うのですね。あなたはとても面白い事を考えます。感心しました。良いでしょう!この私の手で先生を育てあげましょう。」
「ありがとうございます!では『先生』も求人に出しておきましょう。」
その後僕はチラシを作り求人募集の掲示板に貼ってもらうよう依頼した。そして僕は気付いたことがある。それは掲示板の求人の9割方が国営企業の求人なのだ。
「国営ばっかりだと国民が求人を出しづらいよな...それなら国営と民営で区別して掲示板を作るか。」
でもそこでも1つ問題が生じた。明らかに国営企業の方が給料が良いのだ。日雇いなら少しは給料が良いところもあるが、それ以外の通常の時間で働く仕事の給料は国営の方が良いのだ。
「補助金でも出すように考えておこうかな。国の予算的にはまだまだ全然大丈夫だし。」
◇
1ヶ月後、教師志望者が10人集まったのでノルドさんに頼んで早速教えてもらうようにした。先生が先生志望者に先生の事について教えるなんて初めて見るから僕も視察と言いながら見入ってしまった。
「僕らも新人研修の時にこういう教え方をしないとかなぁ。」
「シュウヤ様〜、あなたに用があると言うお客様ですよ。」
「分かった。今行くよ。」
そう言えば僕目当てのお客さんなんて久しぶりだ。なんの用だろうと思いながら僕は応接室に行った。
「こんにちは!シュウヤ様。私の名前は『ノルド・ブラウン』と言います。私はこの国でお世話になっているノルドの弟であり、兄と同じ先生の仕事をやっております。」
これがノルドさんの弟か。意外と雰囲気が違うな。こっちの方がどこかやんわりしていると言うか、そんな感じだ。
「それで今日は、何のご用ですか?」
「学校を作るというお話を風のうわさで聞きましたので、本日は『教員ギルド』と言うものを紹介したくて...」
「ああ、教員なら今ちょうど養成しておりますので間に合っていますよ。」
「ええ、でも誰が教えているんですか?」
「あなたのお兄様ですよ。」
「えええ!?」
彼は驚いたような顔をしていた。ノルドさんが教員の養成をするのは不思議なことではないだろうに。
「なんで驚いていらっしゃる?」
「だって...」
話を聞いたら、意外なことにノルドさんは今まで一切弟子を持ったことがないらしい。僕もそれについては意外な事だと思った。しかも現役の時は教員仲間に厳しいらしく、授業の大切さをいつも他の教員たちに説いていたので一部の教員からは嫌われていたらしい。
「全然そんな風に見えないけどなぁ。」
「じゃあ、今はだいぶ角が丸くなったのよ。貴族の子供だから親も良い学校へ行かせたいと思うでしょう。だから『絶対合格させるように』って親はみんな言うし、でも子供は授業は受けないって言うしでストレスが溜まってたんじゃないでしょうかね?」
だから今はストレスから開放されて角が丸くなったって事か。貴族もわがままだな。でもただの教員、先生である立場からではそんな事を言ったら自分の将来に関わる問題になってしまうからうかつに言えないと言うわけか。難しいな。
「今日はお話をお聞かせくださりありがとうございました。これで今後の政策の実行が捗りそうです。」
「そう言ってくれるなら良かった。でも困った時はいつでも相談に来て良いんだからね。」
「はい。」
こうして僕は彼の名詞と教員ギルドの所在地をメモしてもらい、話は終わった。結構得られるものがあったかも知れない。今後に活かして行こう。後はノルド、あと教員全体にもストレスがたまらないようにしないとな...
◇
僕はノルドさんの所へ行った。ちょうど今日の授業が終わったみたいだ。僕は貴族に教えていた時の話を聞こうと彼を誘った。
「ノルドさん!お疲れ様です!時間も良さそうですし、ご一緒にコーヒーでもいかがですか?」
「ええ、行きましょう。」
ノルドさんが今までどんな事をされたのかを聞いて、できるだけ教員にも悪いこと、嫌なことがないように気をつけなければならない。僕にはそうする義務があるのだ。まあ、一応王様だしな。
「王様か...」
異世界で日本を再現したら仲間と億単位の借金ができました。〜異世界の国造りは少しでも楽しみたいので色々と頑張ります〜 オモ四郎 @Omoshirou
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