第16話 モアモア・イベント - 後編

 あれから少し経った。僕らはイベントの前に交番の完成式に出席することとなった。前に予想した通りすごく早く交番の建物が出来上がっていた。流石国で雇っている大工だけある。


「すげぇなあ...」


 まあ雇い主は僕なんだけどね。


「...というわけで、これからは警備員は全員各地区の交番に勤務となります。頑張ってくださいね!」


「「「はい!」」」


 ちなみに警備員の募集対象は力自慢や集計と計算が得意な人だった。だから男性でも女性でも人外でも問題はない。前述の事と国を守りたいという心があれば誰でも職につけるのだ。


 これに伴って人外である職員も初めて公的な機関で採用された。それは竜人である。人間の言葉を理解することが出来る。そもそも少ないモンスター全般、中でも亜人の中であっても極少数のため、ある意味貴重な働き手である。その彼の名前は「ジョン」という。


「私を採用してくださったことに感謝する。」


「いえいえ、君は唯一空を飛べるんだ。その能力を見込んで、この一番大事な中心街の交番勤務を任せたんだ。よろしく頼むぞ。」


「ハッ。」


 これでとりあえず警備は一安心だ。これで楽しく安心して宝探しのイベントができそうだ。私は国外にもポスターを貼ってもらったからもっと参加者も増えるだろう。景品につられて来る人も多いと思う。だから同時に国の宣伝ブースも設けようと思っている。いわゆる屋台の形式で宣伝できたら良いと思っている。


「リサ、いきなりで済まないが、国外への宣伝も含めて屋台のような物を作ろうと思う。だから屋台の区画を整備しておいてくれ、あと出店の募集も頼む。この企画は意外と大きいものになりそうだからな。」


「分かりました!」



 次は僕に任された仕事をしよう。会場内のどこに景品を隠すかどうかを決めてそこに前日隠すというものだ。


「色々な所に隠すようして、いい感じにまばらにしておこう。」


 僕は大人にも子供にもいい感じに見つけられるようにしておきたいのだ。だから今日は珍しく徹夜で考えた。僕は遊びも本気で楽しみたい人だから久々に考えてしまったのだ。いつぶりだろうな。こんな気持ち。


「バレット、見てるのバレてるぞ。」


「見つかっちゃった...流石王といった所だな。」


 王とかあんまり関係ないと思うけどな...まあそういう事にしておくか。



 本番当日を迎えた。参加者は観光客合わせて1000人を突破した。予測して結構たくさん景品を用意したかいがあった。会場も事前に広げておいたからなんとか対応できた。


「シュウヤ様。そろそろ参加者に挨拶をする時間ですよ。」


「分かってるって。今行くよ。」


 僕は参加者の前に姿を現した。そして僕はマイクをチェックした後、挨拶と開会の言葉をした。


「...という事で、頑張って探してくださいね!」


 挨拶が終わった。みんな僕に向かって拍手をしてくれた。僕はやりきった感がある。まだ始まってすらいないのに。みんなは僕らの指示で動き出した。そう、これから始まるのだ。初めての大型イベントが。



 会場からは嬉しい言葉がたくさん聞こえてくる。僕はそのとき受付テントに居た。景品を探した時にここに来てもらって確認したり迷子を待機させたり...まあいろんな事をする所だ。


「あ!見つけた!おお、旅行券か。このイベントの景品は本当に豪華だな。」


「見つけた!...缶詰だって!」


「今度またイベントがあったら寄ってみようかしら!」


「あと2泊位しようかな。」


 会場は非常に盛り上がった。もちろん、見つけられなかった人にも参加賞をあげるつもりでいるが、人が多くて景品の準備が間に合わないので今さっき、追加発注に行ってもらったのだ。主催者からしても嬉しい悲鳴だ。


 もちろんここにも意見箱を設置した。色んな人の感想や要望を聞きたいからな。


「シュウヤ様!すごい賑わいようですね!」


「そうだな...でも誰がこの名案を思いついたんだろうな。」


「私の部下、アリが考えた物でございます。お気に召しましたでしょうか?」


「ああ、アイゼンフェルトさんの部下の人が思いついたのね。」


「え、驚かないんですか?」


「居る事自体はさっきから分かってたよ。ほら、その景品が一番の証拠だね。しかも参加名簿にしっかりサインしてあったから驚かしに来るのは分かってたんだよ。」


「...見事な予測です。」


 彼は少々寂しそうにしている。まあ流石に僕だって慣れてるから仕方ないじゃん。もっと言うとあの意見箱に入っていた紙にはっきりと「管理局」って書いてあったし...まあそこまで言わないようにしてあげよう。


「じゃあ、景品袋に入れておきますね。」


「あ...お願いします。」



 イベントはとても順調に進み、もうすぐ終わろうとしている。もう終わってしまうのかという寂しさが少しあるが、またイベントを開けばいつでも来てくれるのだろうから。と僕は自分に言い聞かせている。


「もうすぐ終わっちゃうな。楽しかったのに。な!シュウヤもそう思うだろ!」


「まあな。でも会場も屋台も大盛り上がりだったし、何にしろみんなの新しいものを見つける新鮮な顔が良かったな。」


「そうだな。屋台では特に『焼きそば』って言うのが流行ってたぜ。」


 焼きそばはやっぱりどこの屋台でも定番の人気なのか。確かに焼きそばは美味しい。僕も後で終わったら食べに行こうかな。


「シュウヤ様!イベントが終わりましたので、また挨拶をお願いします!」


「うん。分かった。」


 今日は主催者である自分自身も楽しむことが出来た。来てくれたことのお礼と僕自身も楽しめたと言うことを伝えた。


「...本日はありがとうございました!」


 この一言で今日のイベントは終わった。「また行きたい」とか「ありがとう!」とか色々な嬉しい声が聞こえてきた。みんなが景品を持って行く様子はとても楽しそうだ。僕は頑張って準備して良かったと思っている。


 これもすべてみんなの協力のおかげだ。屋台の人たちに後でお礼を言いに行こう。そしてみんなにも感謝を伝えよう。


「みんな、今日はありがとう!みんなのおかげで楽しいイベントが出来たよ!」


「なにをおっしゃいますか!シュウヤ様だって張り切って準備していたでしょう?そのおかげでもありますよ。」


「ハハハ」


 片付けをしながら雑談をしていたらいつの間にか夜になっていた。僕はみんなを早めに仕事を終わりにさせて、僕自身も今日は早くに寝た。楽しさもそうだけど、疲れも比例して溜まっているみたいだ。今日は数秒で寝れた。



 夢を見ていた。僕が小学生の頃の夢だった。


「...今日は楽しかったな。来年もこの祭りに行こうよ!」


「来月も他の町で祭りがあるわよ。またモア・イベントしたい?」


「『モア』って何?」


「英語で『もっと』って意味よ。だからもっとイベント、祭りに行きましょうって事よ。」


「うん!行きたい!モア・イベントいや、『もっと』って意味なら『モアモア・イベント』したいな!」



「あー。まってー、俺の焼きそばぁー...」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る