第9話 君達のその純粋さは確かに美徳だけども
ギガラが守っていた部屋は、俺とセリアがいた最奥のフロアに続く最後の砦。
そんなものがあったならちょっとは楽になったと思うじゃん。それが違うのよ。
「――棘がぁ!! 下にこれでもかと棘が敷き詰められておるのじゃあ!?」
「だからぁ!! 変なスイッチは不用意に押すなっていつも言ってるじゃねぇか!!」
最奥の前には何がある? 正解は最奥の一歩手前でしかない深層の通路だよ。
よくよく考えれば最奥はボーナスステージ。今いる場所こそが最難関だ。
「ゆ、ユウキ……!! 床踏んだら、凹んだ……よ!?」
「後ろから有り得んほどの数の矢が!?」
そしてダンジョンといえば罠。罠といえばダンジョン。何処でも成り立つ等式。
ギガラは棘付き落とし穴にハマり、なんとか両手両足を使って耐えていた。
「引き上げ!! 引き上げてくれなのじゃあ、ユウキ!!」
「いや無理ぃ!! 無限? ってぐらい矢の射出が止まらないんだよねぇ!!」
「あ……。ずっと床、踏んで凹ませてた……」
「それぇ!! 伏せつつちょっとだけ移動しようか、セリアさん!!」
一体これだけの矢をどう用意したのか。後で回収するのが大変そうだ。
セリアを移動させると矢の射出が止まり、一息ついたところでギガラを救出。
「クソッ、まさかこんなことになるなんて……!!」
「そう、だね……」
「死ぬかと思ったのじゃ……」
セリアもギガラも恐らくこんな経験をしたのは初めてだろう。
記憶を失っている少女と、そもそもあの部屋以外の記憶が存在しない少女なら。
「何で俺は配信してねぇんだ……!! 明らかに取れ高だったろ……!!」
「あ、そっち……?」
「おい、我らの心配はぁ!?」
「あん? セリアはそら心配だが、あの程度で死ぬタマじゃないだろお前は」
本来ならこの罠エリアを抜けた先の門番をやっていたのを忘れるんじゃない。
現に俺の言葉にギガラはそういえばそうだったみたいな顔をしている。
「この先も罠沢山あるだろうし、今からでも配信付けるか~」
「おぉ、また外の世界とやらにいる者共とお喋り出来るんじゃな!!」
「笑顔、準備中……」
という訳で告知していないが早速配信開始。最近こんなのばっかりだな。
紆余曲折あったがそれなりに人気のチャンネルになったのでちらほら人が集まってきた。
「こんダンジョン。まだまだ謎ダンジョンを逆走中のユウキと仲間達です」
・いきなりでビビった
・こんダンジョン~
「一体いつになったら助けが来るのか、マジで情報でも何でも求めてます」
・本当に救助必要か? 危機感が足りない
・楽しそうなのがよくない
むぅ、もっと悲壮感を出す必要があるのか。本当に本当に助けてほしいのに。
「!! ユウキ……ギガラちゃんが……」
「どした」
セリアに服の裾を引っ張られ、セリアが指差す方向を見てみると。
これ見よがしなスイッチがあり、『押すな』という文言と睨めっこしているギガラがいた。
「……。生意気じゃあ!! 我に命令するな!!」
「そんなことある?」
そうして勢いよくギガラがスイッチを押すと、通路の天井が音を立てて落ち始める。
・流石に草
・やってんなぁw
・このままだとぺしゃんこに!!
「逃げるぞぉぉぉぉ!! というか全力で走れぇぇぇぇぇ!!」
「わっ……!?」
「なんでこうなるんじゃあ!?」
セリアの足では間に合わなそうと判断し、セリアは俺が担ぎ上げて運ぶ。
何驚いてんだよギガラは。お前がやったことだろ、記憶消えたのか?
「っぶね、ギリギリセーフ……っ!!」
そしてなんとか通路の先に到着。無限のステをもってして滑り込みセーフだ。
つまり、そうではないギガラは当然だが間に合わないということが分かる。
「あ、潰された……」
後ろを振り向けば、丁度完全に天井が通路を埋め尽くそうとするところだった。
・やったか!?
・これ放送して大丈夫なやつ?
・事故なんじゃ……
流石に配信中に死人が出るのは、とリスナーがざわつき始めるが。
「――だぁぁぁぁ!? うっとおしいんじゃ、我を潰そうなんざ百年早いわぁ!!」
「まぁ、そうだよな。もっと自分に自信持とう、お前は」
「うむ。意外と楽勝じゃった」
はい、潰される前に落ちてきた天井を粉々に粉砕した巨人がそこにはいましたよと。
・無敵か?
・だから危機感が無いんだってwwww
「そんな訳で、なんとかこの配信中に極悪罠地帯を抜けたいと思います」
「ユウキ、こっちにも何かある……よ?」
「勝手に動くんじゃありません!! ほーら、予想通りのアラートだ!!」
「逃げろー……♪」
面白いぐらいに罠に引っかかっていく少女達。これは作成者ニコニコだな。
どうやら、このチャンネル始まって以来の長時間配信になりそうです。
絶対脱出出来そうにない謎のダンジョンで助けを求めて絶賛配信中~ダンジョン内でありとあらゆるチート能力と道具を手に入れたのにマジで手持無沙汰~ 小路 燦 @ojisannkubo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。絶対脱出出来そうにない謎のダンジョンで助けを求めて絶賛配信中~ダンジョン内でありとあらゆるチート能力と道具を手に入れたのにマジで手持無沙汰~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます