第8話 この配信してくれって需要が凄かったんだよ

 配信用アーティファクトの管理は俺がやっており、反応もほぼ俺が見ている。

 アーカイブも逐一チェックし、リスナーの要望や求めていることをチェックする。


 ・セリアちゃんとギガラちゃんをもっと見たい!!

 ・二人についてもっと掘り下げて

 ・オフの二人の様子希望

 ・ユウキいる? いらない(迫真)

 ・美女二人に囲まれてるユウキ裏山殺す


「わはは、俺が元居た世界と反応変わんねーでやんの。俺へのヘイト高くてウケるな」


 どの世界でも可愛いは正義。どうせ見るなら目の保養になるものの方がいい。

 本当に二人がいて助かった。俺だけだとただ不幸を見せつけるだけになるからな。


「何してるの、ユウキ……?」

「いんや、何も。ほら、今日はもう寝る時間だろ? 二人とも寝る準備しろよ」


 本日過ごしているフロアの一角に、二人が寝る用のベッドをスキルで生成してある。

 一応年頃の女の子だろうからちゃんとカーテン付きだ。因みに俺は寝袋スタイル。


「嫌じゃ!! 我まだ眠くない!!」

「もうこの子は本当に!! 明日起きれなくなっても知らないからね!!」


 身体はデカいが精神的には幼女なんだよな。ギガラが来てから俺の母性は増すばかり。

 つまり文句は言っててもベッドに入ればすぐに入眠する。俺は当然不眠気味だ。


「おやすみ、ユウキ……」

「仕方ないから寝るのじゃ!! おやすみ!!」

「良い夢見ろよ」


 いつもより少し早い時間、ダンジョン内でも約束された安眠へ。

 彼女らをきっちり寝かし付けたのには理由がある。それは数時間後のお楽しみ。


「――おはようございます。がっつり寝不足のユウキです」


 ・ゲリラ配信!?

 ・めちゃめちゃ早朝で草

 ・顔が死んでるwww


早起きあるあるだと思うのだが、寝たら起きられないんじゃと不安になることがある。

 結果、ほぼ眠れなかった。あんまり頭働いていないが頑張ってやっていこう。


「ふぁ……。今日は、セリアとギガラに寝起きドッキリを仕掛けたいと思います……」


 ・きたぁぁぁぁぁぁ!!

 ・需要に応える配信者の鑑


 俺は配信者。登録者の為なら、喜んで二人のプライベートを晒そう。

 いや本当にあれだから。二人に一定のアドリブ力があるか試すだけだから。


「んじゃ、騒がしくない方からいこうかな。セリアのベッドに突撃します」


 先にギガラを起こすと喧しそうなのでセリアから起こすことにする。

 なるべき物音を立てないようにそろりそろりと。ってことでカーテンオープン。


「――すぅ……すぅ……むにゃ……」

「これ配信載せて大丈夫? 死人出たりしない?」


 ・死んだ

 ・天使の寝顔

 ・助かった


「凄い申し訳ないけど起こします。セリア、朝だぞー」

「ん……もう朝……?」


 俺がセリアの肩を叩いて声をかけると、セリアはゆっくりと目を開けてお目覚め。

 目擦りながら、俺が目の前にいることが分かるとふにゃっと笑った。


「今日も、目を開けたらユウキがちゃんといて、良かった……えへへ」

「ふぐぅ!? 罪悪感えぐいよぉ!! 俺は何処にもいかないから安心しろ!!」


 ・爆発しろ

 ・境遇考えたらね……

 ・少し泣く


「すまん、セリア。実は配信中なんだ」

「そう、なの? こんダンジョン……です」

「板についてきたなぁ」


 もっと驚きが欲しかったが、元々のテンション的にセリアはこんなものだろう。

 本命はこの後。ギガラは結構アホだからいいリアクションを貰えるはず。


「――なんじゃあ、もう配信しとるのか? 我も映るのじゃあ!!」

「馬鹿野郎、ちゃんと寝とけ!! え、起きるの早くない? ギガラさん」

「門番の頃の癖でな……少しの物音や喋り声でも起きてしまうんじゃよ」

「やるじゃん……」


 ・【朗報】ギガラちゃん優秀だった

・ドッキリ失敗かぁw


「……はい、という訳で寝起きドッキリは不可能という結論でした。アーカイブは残さないし、切り抜きも禁止するから今日見れた人は幸運ですね。ではまたの機会に」


 これ以上は収穫無しと早々に配信を切り上げる。やってくれたよ本当に。

 とにかく、うちの自慢の娘たちは色々な意味で優秀ということでどうかよろしく。

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