第7話 脱出チャンネルは有望なサポーターを随時募集してます

「――んじゃ、まずは自己紹介からお願いします」

「名はギガラ!! よろしく頼むぞ!!」

「ギガラちゃん、よろしくね……」


 ・これは……コラボなのか?

 ・仲良くなってて草


 ワンパンで倒した巨人の名前はギガラ。倒された割には非常に元気いっぱい。

 大き過ぎて画角に映りづらかったので、俺のスキルで一時的に人間サイズ(それでも190cmほど)にした。本人曰く、前よりもずっと動きやすいとのこと。


「早速だけど、このダンジョンについて知ってることない?」

「……む。言われてみれば我、ここのこと何も知らぬな」

「なんてこったい」


 この感じを見るに、それについて初めて考えたような雰囲気だ。

 そう問うてくる奴もいなければ、そもそもここまで来た奴が少なそう。


「気付いたらここにいたのじゃ。主らが通ってきた扉を守らなければならない、頭の中にあったのはずっとそれだけじゃった。……我、何でここにおるんじゃろ?」

「またこのパターンね……」


 ここに集った三人の共通点、『気が付いたらダンジョン内に存在していた』。

 ここまで来ると作為的な何かを感じてしまう。理由は全く分からないが。


「ギガラちゃんも、ここに来る前の記憶無いの……?」

「……どうじゃろ。感覚的には、我はこのダンジョンで生まれたような気もする。扉を守る以外のことを考えたことも無かったからの。人と喋るのも本当に久しぶりじゃ」


 ・謎が深まるな

 ・盛り上がってきた

 ・貴重な映像過ぎない?


 つまり、ギガラはここを守る為だけに生まれた存在だと解釈できる。

 その割には暇だし早上がりしようとか言ってたけど。慣れというのは恐ろしい。


「どちらにせよ、我は最奥に続くこの扉を守り切れなかった。存在意義の消失じゃよ……」

「まぁ、俺達最奥側から来たんだけどね。だから守るもクソもないっていうか」


 ・そうだったwwww

 ・まさか守る側から来るとは思わないわなw

 ・無慈悲過ぎるユウキさん

 

「はえ!? よ、良かったのじゃ、我が寝てる間に抜けてたとかじゃなくて!!」

「俺達も似たようなもんだ。気が付いたらこのダンジョンの最奥にいてな」

「どうりでおかしいと思ったのじゃ!! セーフ、セーフじゃな!?」

「別にセーフでいいんでね?」


 その事実を聞いて、ギガラは大きく息を吐いてから安堵の表情を見せた。


「でも我、これからどうすればいいんじゃろ? 目的は無くなってしまったし……」

「私も、目的なんて無かったよ。でもね……」


 セリアが俺の方をちらっと見ると、ギガラも同じように俺の方に視線を向ける。

 何かを期待されている、と思いながら。コメ欄にも一応目を通してみた。


 ・連れてけ!!

 ・誘え!!

 ・抱けぇ!!


「怖いよお前ら……。言われるまでもなく、仲間は少しでも多い方がいい」


 この先にどれだけの脅威があるかも分からない。戦力は増やすに越したことはなく。

 ここまで期待された上で裏切るなど、配信者としてあるまじき行為だろう。


「ギガラ。俺達と一緒に外の世界を目指さないか?」

「外の……世界?」

「あぁ。つか、一緒に来い。お前みたいなキャラも必要だと思ってた」


 ・誘い方がワイルド

 ・打算的なとこ隠さないのすこ

 ・こういうとこはかっこいい

 ・流石はユウキ


「い、行くのじゃ!! ぶっちゃけ暇過ぎて転職しようと思ってたのじゃ!!」

「決まりだな。新たな仲間、ギガラを今後ともどうぞよろしく」

「わー……ぱちぱちぱち……」


 ・テンションのバランスがいい

 ・身長も丁度大中小だしなw

 ・頑張って脱出してくれ!!


 そんなこんなで脱出チャンネルに、賑やかで楽しい仲間が一人増えた。


「ってことでいつものあれやっとくか」

「りょーかい……」

「え、何をすればいいのじゃ?」


 セリアはもう慣れたもの。ギガラは初なので何を言うべきか耳打ちしてから。


「誰かぁぁぁぁぁぁ!! 後生だから助けにきててくださぁぁぁぁぁい!!」

「誰かー……助けにきてくださーい……♪」

「誰か我を助けるのじゃぁぁぁぁぁ!! ……これで良いのかの?」


 うん、いい感じだ。ギガラはもう少し悲壮感というものを出せたら言うことなし。

 謎のダンジョンで仲間が増えました。でも外からの救助も、いつでもお待ちしてます。


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